中小企業は、日本の企業数の97%を占め、経済成長要因の50%程度を担っていると言われています。しかしその労働生産性の低さが問題になっており、中小企業のITの導入、高度化の貧弱さが競争力に大きなマイナス要因になっていると指摘されています。一方で企業には、今日社会的責任(CSR)が強く求められており、そのためにガバナンスの構築が国際競争力強化の上でも不可欠な要素になってきています。
日本の経済成長、競争力強化に向けて重要なポイントとなるITの導入推進・高度化とガバナンスの確立について、前回コラムでも解説しましたアイデンティティ基盤の構築やクラウドコンピューティングが、競争力強化やガバナンス確立のキーとなる技術要素のひとつであることを説明します。
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1.経済成長における中小企業の役割と現状
(1)日本の経済成長に中小企業が重要な役割
2009年版中小企業白書によると中小企業の成長は、日本の経済成長(付加価値額の増加)に対して大きく寄与しており、中小企業が1960年から現在までの長期にわたって、付加価値額の5割強を創出してきたとしています(参考1)。又、我が国法人企業の付加価値額の伸び率における中小企業の寄与は2000年代で40.3％となっており、中小企業は経済成長においても大きな役割を果たしていることが分かります。
参考1：2009年版中小企業白書
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h21/h21/html/k2140000.html
(2)中小企業の現状
中小企業の収益環境は厳しさを増しています。従前より、中小企業は大企業に比して労働生産性が低いと言われています。この労働生産性の低さは、IT導入が進まないことが起因として指摘されており、IT経営の導入推進とITの高度化、最適化が求められています。経済産業省では、中小企業を中心に戦略的IT投資を行うことで、IT経営を促進し、我が国産業の生産性の向上を図ろうとしています。
2.中小企業の労働生産性の向上
(1)中小企業のIT化推進が急務
ITの導入で増収効果が期待できますが、人材と初期費用などコスト負担が導入の障壁になっています。そんな背景から SaaS(Software as a Service)は、中小企業のIT化を進めるうえでのカギと考え、 平成19年4月、経済財政諮問会議の「成長力加速プログラム」で、中小企業のIT化支援や経営指導拡充のために、使いやすい新たな共通基盤の環境整備として、ASP(Application Service Provider)やSaaSを挙げて関連する施策が動き始めたところです。
(2)IT化推進戦略〜クラウドコンピューティング、SaaS基盤が重要
産業構造審議会(参考2)では、日本の競争力強化をねらって、ITを活用した強靭で効率的なバリューチェーンの実現による、企業、業種横断型の企業間連携の強化を図るとしています。さらに、あらゆる企業や国民が、簡単、迅速、安価に創造的で多様なサービスを安心して享受できる、世界最先端の高度なIT基盤(クラウドコンピューティング基盤)を構築するとしています。また、 地域・中小企業がネットワークやSaaS等を活用することにより、安全安心な街作りや自立したビジネス展開が可能となり、地域と地域を支える中小企業、それらのIT化を担う地域の中小ITベンダが活性化するとしています。目標として、クラウドコンピューティング基盤、SaaS 基盤を整備し、今後3年間で中小企業100 万社が利用可能な環境を整備すると具体的に挙げています。
参考2：産業構造審議会報告書
http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g90602c01j.pdf
【執筆：林 誠一郎】
セキュリティ対策コラム
http://www.nttdata-sec.co.jp/article/
