工藤伸治のセキュリティ事件簿 シーズン 7 「アリバイの通信密室」 第4回 「"やりかねない"男」 | ScanNetSecurity
2025.12.08(月)

工藤伸治のセキュリティ事件簿 シーズン 7 「アリバイの通信密室」 第4回 「"やりかねない"男」

この手の犯罪は手かがりが少ない。動機がわかると、有力な手がかりになる。しかし、動機は動機で物的証拠ではないから注意が必要だ。

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「ええと、概略は先ほどお話した通りで、詳細はお手元の資料にあります。なにか質問ございますでしょうか?」

座り直した山岡がオレに尋ねた。だいたいは頭にたたき込んだが、いくつかはっきりしないことがある。

「うーんと容疑者三人について確認したいんだけどいいかな?」

「はい。どうぞお尋ねください」

「容疑者その一、総務の田端のアリバイはアクセスのあった日に病欠して出社していない。これは確実?」

オレはもらった資料の中の犯行可能人物のページを開いて見せた。

「病欠の届けも出ていますし、犯行当日私も含め同じ部屋の人間は田端を見ていません。ついこの間のことですから間違いないと思います」

「田端の動機は?」

「田端に限らず、この三人は周囲から"やりかねない"と思われている人物です。田端と川辺は周りの社員と交流がなく、孤立しています。まあ、はっきりした動機を確認したわけではないんです」

容疑者としてリスト化したにしては、あいまいな理由だ。まあ、アリバイがないだけでも調べる意味はあるが。

「"やりかねない"ねえ。他の社員だって魔が差すってこともあるだろう」

《一田 和樹》

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