「サイバーセキュリティ“プレゼンターズ・プレゼンター”」日本プルーフポイント増田幸美が読み解くサイバー国際情勢 | ScanNetSecurity
2024.06.18(火)

「サイバーセキュリティ“プレゼンターズ・プレゼンター”」日本プルーフポイント増田幸美が読み解くサイバー国際情勢

増田は前日、あるいはその日の朝に起こった出来事に合わせて、プレゼンの内容をガラリと変える。それどころか、一つ前の師匠が話した演目に応じて、直前にスライドに大幅変更を加えることも当たり前。まるで熟練の落語家(はなしか)のようだ。

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日本プルーフポイント株式会社 チーフエバンジェリスト 増田 幸美 氏
日本プルーフポイント株式会社 チーフエバンジェリスト 増田 幸美 氏 全 1 枚 拡大写真

 「3 月 11 日金曜日は、プレゼンテーションをする人のためにプレゼンテーションをします。だから誰かにプレゼンテーションをする人に私の講演を聞きに来てほしい」

 インタビューの終わりで日本プルーフポイント株式会社 チーフエヴァンジェリスト 増田 幸美(そうた ゆきみ)はこう結んで話を終えた。

 「ライターズ ライター(Writer's Writer)」という言葉があって、一般の読者だけでなく、作家や小説家などのプロから尊敬され、プロに影響を与える書き手のことを指す(ミュージシャンズ ミュージシャン、ペインターズ ペインターなど、他のジャンルにも同様の概念がある)。

 「ブレードランナー」「トータルリコール」「マイノリティレポート」は言わずと知れた名作 SF 映画だが、この 3 作品の原作者フィリップ・K・ディックもライターズライターと呼ばれた。

 それぞれの作品の中では、遺伝子工学で奴隷労働者を作る技術、記憶を移植する技術、発生前の犯罪を検知し予測する技術が提案され、そのアイディアと背後にある価値観や問題提起は、SFジャンルや同時代にとどまらず、幅広い領域の作家に多大な影響を今も与え続けている。

 増田のプレゼンテーションとそのプレゼン資料には定評がある。どこかで増田が講演すると、それを見た受講者が講演を依頼し、それを見た受講者が更に依頼するという、講演依頼のチェーンリアクションが発生する。そうして、霞ヶ関官庁や全国の法執行機関など、これまでおびただしい数の講演を行ってきた。

 増田のプレゼンの最大の特徴のひとつが、常に「受講者の先にいる人物」にターゲットを合わせていることだ。

 現場の職員に向けた講演なら、その上司に向けた講演を行う。日頃彼女彼が上司との間に感じているに違いない、溝やギャップそして壁、それら意気を打ち砕くものたちを破壊する情報と、そのノウハウを伝授することに最も力を注ぐ。

 情報だけでなく方法を伝える。それが増田 幸美のスタイルだ。

 増田のプレゼン資料に魅了された、ある敏腕セールスマンが、増田の資料を使って営業をしたい、そのためだけにプルーフポイントに転職してきた。こんな伝説が Proofpoint の社内にはある。

 たしかにセールスパーソンの能力が同じなら、あとは戦場でどんな武器を使えるのか与えてくれるのか、つまり装備とロジスティクスが手柄(営業成績とボーナス)を左右することになる。

 営業の武器=製品サービスの機能・性能・ブランドと思われがちだが、そしてそれは必ずしも間違ってはいないが、それと同じくらい、ときにそれ以上に重要となるのは、その製品の必要性を説得力と納得力のあるナラティブに落とし込んだ、優れたプレゼン資料である。

 3 月 9 日から 11 日まで JPタワーで開催される Security Days Spring 2022 の最終日、3 月 11 日金曜日の 13 時 10 分からはじまる増田の講演「『敵』を知る - 国際情勢からみるサイバー最新動向と大きく遅れる日本の対策 -」に隠されたテーマは「サイバーセキュリティに関するプレゼンをしなければならない人に向けたプレゼン」である。

 自分の上司、社長や取締役など会社の経営層、開発部門や営業部門・管理部門等々社内の別の部署、あるいはサプライチェーンで繋がる子会社や親会社などグループ企業、そして取引先、販売代理店やエンドユーザーなど顧客・・・。

 セキュリティ担当者は日々、これらステークホルダー達とのコミュニケーションに溝やギャップ、そして壁を感じ、その状況下でも、効果のある対策と運用を行うべく、誇りを持って戦っている。その溝やギャップそして壁を破壊する情報と方法という種を、増田が来場者に向けて蒔く。

 講演の紹介記事なのに、増田がいったい何を話すのか、ここまで一文字も書かれていないぢゃないかというあなたの疑問は完全に正しい。しかしご容赦いただきたい理由がある。

 インタビューの席上で増田は、講演で取り上げる話題としてウクライナ情勢を挙げた。かつてウクライナがロシアに向けたサイバー攻撃で用いて、戦果を挙げたことのある攻撃ツールがあったが、今回ロシアはそのツールの解析を行い、約 20 %の「改良」をロシア側で施し、メイド・イン・ウクライナ製だったツールを用いてウクライナにサイバー攻撃をしかけているという。サイバー攻撃であると同時に、将来に向け民族的プライドを打ち砕かんとする底意地の悪い心理戦だ。

 しかし増田は、ウクライナのスライドを一通り説明した後で、もし、公演当日の朝に何かが起こったらこれを使うつもりであると前置きして別のスライドを画面共有で投映した。

 そこにあったのは、ある国の領海に向けて発射されたミサイルの数を縦軸に、年月日を横軸にして、それらと深い関連があると増田が見立てた数十の外交や国際事象との結びつきが矢印で示された棒グラフだった。棒グラフを表すのがミサイルの弾頭になっているという、クリエイティブ的にも完成度の高い、しかし物騒な資料だった。

 増田は前日、あるいはその日の朝に起こった出来事に合わせて、プレゼンの内容をガラリと変える。それどころか、一つ前の師匠が話した演目に応じて、直前にスライドに大幅変更を加えることも当たり前。まるで熟練の落語家(はなしか)のようだ。

 だから講演の具体的な内容は全くわからない。オンラインによるライブ配信もないので、当日会場に行かないと知る術(すべ)がない。

3.11(金) 13:10-13:50 | RoomA
「敵」を知る - 国際情勢からみるサイバー最新動向と大きく遅れる日本の対策 -
日本プルーフポイント株式会社 チーフエバンジェリスト 増田 幸美

《高橋 潤哉( Junya Takahashi )》

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