セキュリティ・DX・働き方改革 ~ LogStare 小村正彦が考える Microsoft365 の新しいログ活用から見える未来 | ScanNetSecurity
2024.04.18(木)

セキュリティ・DX・働き方改革 ~ LogStare 小村正彦が考える Microsoft365 の新しいログ活用から見える未来

ここ数年、経済産業省や各種経済団体は「DX」と絶叫を続けている。そこへ新しい価値を提案する「LogStare M 365」のような製品を繰り出してくるのは、実に株式会社LogStare らしいし、セキュアヴェイルグループらしいと言えるだろう。

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株式会社LogStare 小村 正彦 氏
株式会社LogStare 小村 正彦 氏 全 1 枚 拡大写真

 株式会社LogStare の営業責任者を務める小村正彦(こむら まさひこ)の社会人としてのキャリアは 1997 年にはじまった。

 当時、中堅証券会社の新入社員だった小村は、横浜支店のオフィスに毎朝 6 時には出社して、タイムカードを押すとすぐに給湯室に直行、流しで米を研ぐことを毎朝の日課としていた。

 就業規則で着用を定められた無地の白いワイシャツを腕まくりし、まだ結び慣れないネクタイをワイシャツのボタンの間にたくし込むと、同支店に勤務する約 10 人の営業マンの昼食となる大量の米を研ぎ、昼休憩にちょうどおいしく食べられるよう配慮して、昼休み開始約 20 分前に炊き上がるようタイマーをセットした。

 誰よりも早く出社し先輩社員のために米を研ぎ、その後は全員の机の雑巾がけまで行ったというから大した男である。当然のことながら筋のいい問い合わせや案件は、先輩や事務職員の人たちから自然に小村に任されることが増えていく。「使える新人」そう小村はみなされていった。

 小村が配属されたのは、証券営業のなかでもとりわけ厳しい個人投資家向けセールスだった。担当した主な地域のひとつが横浜の弘明寺(ぐみょうじ)商店街。横浜市営地下鉄 弘明寺駅から、京急 弘明寺駅まで全長 312 メートルの商店街のアーケードが伸びる。アーケードは途中で直角に大岡川と交差する。橋の上にもアーケードの天蓋があり、川沿いは桜の名所だった。

 証券の個人投資家向けの営業とは通常、資産形成に関心の高い豊かな層に向けて行うものだ。歴史ある庶民的な下町商店街でのセールス活動が楽だったとはどうにも思えない。何よりバブル景気がはじけてすでに何年も経過していた頃でもあった。

 猛烈な営業攻勢をしていたある日、小村は八百屋の店主からフルスイングでスイカをぶつけられたという。楽しそうに小村がインタビューでそう語った。なんだかわかるような気がする。八百屋の店主の気持ちが。もちろんスイカとは非接触型ICカードのことではない。ウリ科のつる性一年草の緑色の果実のことである。

 厳しい環境に適応し、着々と数字を伸ばした小村だったが、入社から 1 年を待たずに起こった歴史的な事件をきっかけのひとつとして証券会社を退職した。

 当時は 1985 年の通信自由化によって誕生した各種「新電電」事業者が活況を呈していた時期だった。証券業界で剛毛の生えた鉄の心臓を移植され「営業マシーン」と化していた小村に怖いものはなかった。腰掛けのアルバイトのつもりで選んだフルコミッションのテレアポ業務で、わずか 22 ~ 23 歳であっという間にしかもあっさりと手取り月収 50 万円を記録するようになった。社長から半ば強制的に正社員として雇用され、インターネット接続需要に対応した NTT の当時の人気商品「ISDN」など、さまざまな回線サービスを小村は売り続けた。

 回線が売れるたび小村は新しい時代を作っている手応えを感じた。客観的にみれば日本のインターネット黎明期をトラクターで疾走し大地を耕すような仕事である。

 当時インターネットが今後伸びていくという予想もされていたし期待も高かったが、正確にそれを見極め見定めて、先行者利益を取り、積極的に自らの利権を獲得し、そこにしがみつき伸ばしていこうなどと考えている三木谷浩史のような人物は、どちらかといえば少数派だったように思う。

 むしろ多くのプレイヤーは、バブル崩壊後もいっこうにパッとしない既存の社会体制に漠然と不満を持ち、一日中ソリティアをしているような中高年管理職に吐き気を催して、「自分たちの力で一から自由にやってみよう」と考えたピュアな手合いが少なくなかった。Webデザインだの PowerBook だの、シリコンバレー的な軽やかさやカルチャーとは一見真逆に見える小村だが、間違いなく彼もインターネットという新しい領域とそれに関連する産業の未来に夢を託した若者の一人だった。

 ISDN でネット接続をしたら、次は当然ホームページを立ち上げる需要が生じるし、ホームページを立ち上げればやがてレンタルサーバの需要が発生した。黎明期から発展期へ、日本のネット産業の歩みと自身のキャリアが完全同期していた小村はレンタルサーバ大手に転職、そこでもサービスを売りまくった。

 2000 年代半ば、小村はレンタルサーバ会社の信頼する上司の知り合いとして、株式会社セキュアヴェイルの代表 米今政臣を紹介された。当時セキュアヴェイルは上場準備を進めており、最終段階を迎えつつあった。ジャングルに潜んでヘビを食べながら、笑顔でゲリラ戦に従事できる小村のような男こそ米今が探していた人物だった。まさに「He is the guy.」小村はセキュアヴェイルへと転職する。

 セキュアヴェイルに入社してすぐに小村は、SOC事業はこれまでの通信回線やレンタルサーバのような「料金表」をもとに販売するビジネスと全く違う世界だと気がついた。サービスの中身をわかっていないとまるで売れないのである。

 TCP/IP、OSI七階層モデル……、基礎の基礎からネットワークを小村は独学で習得していく。「1 日 24 時間勉強した(小村)」嘘くさい発言ではあるが、要は「自分の 100 を投じた」という意味と取ればそこに嘘はないのだろう。

 2005 年当時は、障害発生時の対応のためにネットワークログを取ることは一般化していたものの、セキュリティのログを取るという意識はまだ企業では理解されていなかった時代である。そこにログ収集と解析のソフトウェアやサービスを販売するのだから、鉄砲玉としてあるいは兵隊としては、真正面からの向かい風だった。しかし重量 5 キログラムのフルーツをフルスイングで投げつけてくる親父さんがいないだけまだマシだと思えたし、何より小村は自分が未来に繋がる新しい商品を売っているという実感があった。

 セキュアヴェイルが上場を果たし販売体制構築の仕事が一段落するのを見届けると時を置かず小村は退職した。新しいビジネスが立ち上がり、ある程度の完成を見届けるといつも急速に興味を失った。

 その後小村は、ネットワークセキュリティベンダに転じ、ネットワーク製品やセキュリティ製品領域で転戦を続けた。鉄の心臓 + ネットワーク知識で武装した小村は、どこに行っても必ず成果を挙げた。なかでもセキュアヴェイル仕込みのログ管理領域は、ずっと小村の得意ジャンルであり続けた。

 ある日、とある顧客へ LogStare製品を販売代理店として提案することになり、小村は約 10 年ぶりに米今と再会した。後日設けられた会食の席で米今から株式会社LogStare として分社化する話を聞かされた。そこで営業責任者としてもう一度仕事をして欲しいと請われた小村の心は動く。新しい領域がそこに存在しているように思えたからだ。

 その小村がビジネス責任者として、現在最も力を入れている製品の一つが、Microsoft365 のログ収集と分析に特化した 2022 年 3 月からサービス提供開始した「LogStare M 365(ログステア エム サンロクゴ)」である。

 「LogStare M 365」とは、エージェントのインストールが不要で、クラウド上でログを収集する。ログ管理サーバも不要で、Microsoft365 に特化して「セキュリティ」「業務効率」「働き改革」の三つの視点で分析を行い、さまざまなテンプレートに沿ってレポートを生成する。

 たとえば Microsoft Teams で Excelファイルなどのやりとりを行っている場合、ユーザーの多くはそもそもデータがどこに保存されているかわかっていないことが多い。多くは OneDrive にあるのだが、ファイルを共有した人物が退職してアカウントが消えたりすると大事なファイルが見えなくなったり、あるいは、そもそもどの範囲まで共有されているかがわからないなど、セキュリティ上のリスクも発生しうる。

 「LogStare M 365」二つめの視点は、DX(デジタルトランスフォーメーション)だ。DX の下支えをする情報を得る。たとえば Microsoft365 のログを分析して、よく使われているアプリや、逆にほとんど使われていないアプリを可視化することなどができる。アプリの要不要を社員向けにアンケートをとったとしても重要な人ほど忙しくて答えてくれなかったりする。具体的にどう使われているかをログから明らかにすれば、正確な利用実態を把握することができる。使っていないアプリや機能があれば解約したり、逆に新たに追加する必要がある機能を検討することもできる。

 「LogStare M 365」三つめの視点は「働き方改革」である。テレワーク時代になるまでは、管理職や部門長がオフィスを歩き回り、遅くまで残っている社員に声をかけるなどの風景が見られたものだが、今はそれもできない。「LogStare M 365」は、たとえば終業後にログインして作業を行ったり、土日の作業を行ったりなど、ワーク・ライフ・バランスの視点からの分析を行ったり、あるいはミーティングの設定を開始直前にではなく、必ず前の日や前の週に行っているような、仕事の丁寧さなどの観点からの「社員の見えない頑張り」を可視化することもできる。

 近年 Microsoft365 が企業規模を問わず広く導入され、コミュニケーションツールとして、そしてグループウェアとして積極的に使われることで、Microsoft365 の一種の「ファイルサーバ化」が進んでいる。オンプレのファイルサーバではログを取るのがあたりまえだが、しかし Microsoft365 に関してはまだその認識に至っていない。

 「LogStare M 365」は初期費用 3 万円、1ユーザーあたり月 200 円から。端末へのエージェントインストールは不要で、Microsoft365 の API と「LogStare M 365」を繋ぐだけで設定が完了する。情シスはもちろんのこと、人事総務に有用なテンプレートを提供し、専用ブログ「Knowledge Stare」で情報提供も行う。

Knowledge Stare
https://www.secuavail.com/kb/microsoft-365/

 ユーザー企業以外の利用も可能だ。たとえば Microsoft365 の販売代理店が契約し、SOC や NOC のマネージドサービスのように、Microsoft365 の運用状況管理をユーザー企業から受託するモデルも成立しうる。顧客の Microsoft365 の利用状況に応じた的確なアドバイスや助言をすることができるだろう。

 「Microsoft365 ならちゃんと動いている。なぜわざわざログを見る必要が?」小村によればそんな反応も少なくないという。しかしそれは、2000 年代半ば、セキュアヴェイルで SOCサービスや「LogStare M 365」の前身となるソフトウェアを売った小村にとっては「既視感のある逆風」だ。新しいビジネス、ひいては新しい社会を作ろうとする者は皆そういう抵抗に遭う。そんなものは慣れっこだ。

 小村が新卒として証券会社に入社してわずか半年余り後の 1997 年 11 月、業界大手の山一証券が破綻した。空が落ちてくるような気持ちを小村は味わった。真面目そうな山一の社長が「社員は悪くない」と言いながら嗚咽し号泣する様は、国民を震撼させるに充分な出来事だった。入社 1 年に満たない証券業の外務員として、将来への夢を膨らませていた小村にとってはそれ以上のショックだった。「まったく新しい未来を創る仕事をしたい」そう強く願うようになったのはこのときからだ。

 小村は、自身が証券会社に入社したその年に証券大手が破綻した事実を、自己紹介のいわば「鉄板」としてずっと用いてきた。誰もが共感し、そして笑ってくれたが、この話をするたび小村の胸はいつも少しだけ痛みを感じたし、最初の職場で未来に向かってまっすぐに飛翔できなかった心の傷が甦る気がした。そんな胸の痛みや心の傷など存在しないふりをして走り続けてきたが、おそらくこの痛みは一生消えないことも最近わかってきた。

 ここ数年、経済産業省や各種経済団体は「DX」と絶叫を続けている。そこへ新しい価値を提案する「LogStare M 365」のような製品を繰り出してくるのは、実に株式会社LogStare らしいし、セキュアヴェイルグループらしいと言えるだろう。

 しかも 1 ユーザー月 200 円という価格である。何度か書いているがこれは西日本価格(編集部註:脆弱性診断や SOCサービスなどの料金が港区・中央区・千代田区・新宿区・渋谷区と西日本では、2 倍程度の差がある場合があること)の最たるものだ。

 ためしに PwC や KPMG のようなハイブランドファームに「セキュリティ」「業務効率」「働き改革」の三つの視点で Microsoft365 の社員利用状況をレポートにまとめてくれ、などと依頼したら、どう転んでも○千万円はかかるし数ヶ月は待たなければならない。より実利を取りたいベンチャーや中小企業なら「LogStare M 365」の活用可能性は小さくないだろう。何しろ初期設定 3 万円で 1 ユーザー月 200 円、いつでも解約可なのだから。

 テレワーク時代、そしてジョブ型雇用の時代は、働く労働者一人一人が、会社組織というネットワークの中のノードの一つとなって業務を遂行していく。一人一人が知見を蓄えたサーバであり、経験に裏打ちされた業務を遂行するアプリケーションともいえる。セキュリティだけでなく、Microsoft365 の可視化と効率化、特定の人への負荷の集中を防ぐなどの労働衛生的配慮と管理が、今後企業の管理部門に必須になってくる可能性は高い。勤怠や営業成績だけ眺めていても見えてくることはもはや少ない。「LogStare M 365」はログ収集にこれまでなかった新しい目的を付与しようという試みである。

 DX 時代に競争力を強めていく企業の情シスや総務、人事には「LogStare M 365」が提案するような可視化や効率化、社員への配慮が必要だと思うし、それが当たり前になる時代が来るかもしれない。そしてそれは、黎明期から発展期を経て現代まで、インターネットという巨大な鉱山をガリンペイロ(金鉱採掘者)のごとく踏査し続け、一貫して数字だけで評価され勝負に勝ってきた小村が秘かに願うことでもある。

《高橋 潤哉( Junya Takahashi )》

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