サイバーから物理介入まで一気通貫 SECON 2026で見た"理想のセキュリティ" | ScanNetSecurity
2026.04.21(火)

サイバーから物理介入まで一気通貫 SECON 2026で見た"理想のセキュリティ"

 韓国のサイバーセキュリティ技術が物理セキュリティ技術と密接にかかわる進化を遂げているのは、同国の近代史を紐解くと見えてくる。韓国ITの源流は、金大中大統領(1998~2003年在任)による政策「サイバーコリア21」にある。当時の韓国は1997年のアジア通貨危機によってIMFの管理下に置かれるという非常に厳しい国家情勢にあった。ある意味「成長戦略」というよりは「生存戦略」とも呼べるものだった。

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会場となったKINTEX
会場となったKINTEX 全 19 枚 拡大写真

 2026年3月、物理とサイバーを融合したセキュリティカンファレンス「SECON & eGISEC 2026」が開催された。ScanNetsecurity はここ数年ほど定点観測的に継続取材を行っている。

 同カンファレンスの特徴は監視カメラやセキュリティゲート等の物理セキュリティとサイバーセキュリティの融合。監視カメラを活用したさまざまなソリューションなどが一同に会する。国内でもこうした「大規模監視」は行われているのかもしれないが、日本でその技術や実態を取材する機会は皆無といっていい。SECONでは、GPUを使って民族識別などを行うことで話題となった中国の監視カメラ大手がごくふつうにブースを出展していたりする。このカンファレンスはそういう意味でも目が離せない。

●ロボット実装だけがフィジカルAIではない

 SECON & eGISEC 2026(以下SECON)は、韓国で開催されるセキュリティカンファレンス・見本市である。特徴は警備システム、セキュリティゲート、カメラ、X線検査装置といった物理セキュリティと、ウイルス対策やインシデント対応ソリューションなどサイバーセキュリティに関する研究発表や技術・製品展示が合同で行われること。

 2026年は19の国と地域から412社が出展し、来場者は32の国・地域から2万6千人以上を記録した。カンファレンスは32トラック、159ものセミナー・カンファレンスが行われ、招待された発注規模の大きいバイヤーは100を超えた。

 SECONの共通テーマは「物理とサイバーの融合」だが、今年のメインコンセプトは「セキュリティとAIの融合」を前面に打ち出した。AIを活用した監視システムや行動認識は、過去のScanNetsecurityのSECONレポート記事でも触れている。そもそもセキュリティ対策にAIを導入するブームは10年前、あるいはもっと前まで遡ることができる。いまさら強調するまでもないが、会場をつぶさに回ると、あえてAIを強調した意味が見えてくる。

 結論を先に説明すると、SECON 2026における「AI融合」は、これまで各論技術への適合だったものが、アプリケーション、さらには意思決定にまで入り込んできている。セキュリティの分野でも、画像認識やログ解析など、検知や認知どまりだったAI(機械学習)が、意思決定や行動にまで適用された実例が展示されたカンファレンスといっていいだろう。

 今風の言葉でいえば「フィジカルAIの各種実装展示」となる。しかし、SECONのSECONたる部分は、スマートな二足歩行ロボットの華麗な演舞、ではなく2世代くらい前の四足歩行ロボ、鋼鉄製のバリケード、電子柵、CCTV、防犯機器などに惜しみなく最新の生成AIがインストールまたはクラウド連携されているところだ。見た目はまったく洗練されていないかもしれないが、背後にあるネットワークやクラウドサーバは最先端という世界観を見ることができる。

●国境監視から駐車場の空き検索までAI統合

 SECONでは、一件なんの変哲もない機器が、日本では馴染みのない用途や機能を持っている。そんな場面によく出くわす。実際にどんな展示やショーケースが見られたのだろうか。目についた展示をいくつか紹介する。

 たとえば、NURICONという会社は、AIによる画像解析・認識の技術を持つ企業だ。得意とするのはAIを使ったカメラのズームイン、画像補正の技術。赤外線カメラ、またはカメラ映像の光の屈折からガス漏れ、流体の検知などの技術もある。古い映像や不鮮明な画像をAIで補正しながら行動解析の精度を上げている。

 ブースでは北朝鮮との国境付近で起きた爆発(!)の監視カメラの画像を、拡大・鮮明化させるデモを行っていた。爆発は、記録映像で古いカメラによる撮影だったが、爆炎、周辺で活動する兵士の手足の動きの解像度が上がっている。無論爆発は北からの軍事行動によるものだという。

国境付近で起きた爆発をAIにより補正して細部の状況を調べる

 煙や炎の検知は、身近な例でも活用が進んでいる。Wisecon社は、駐車場の監視カメラを解析ソリューションとともに提供・展示していた。地下駐車場での火災は大参事につながる。早期検知は被害拡大の抑え込みに直結する。同社のAI監視カメラシステムの特徴は、煙や火災検知など防犯機能に特化しているわけではなく、純粋なビジネス用途にも対応していることだ。駐車場の空きスポットの検知、車両のナンバー読み取りと入退出管理、課金なども同じカメラシステムに統合されている。

 D&S Technology社は、大型の自動ゲートやロードブロックなどを手掛ける会社。ブース正面には、鋼鉄製の自動開閉ゲートを設置し、開閉のデモを行っていた。このゲートは軍施設、発電所や工場などの出入り口に設置される頑丈かつ大型のものだが、同社の自動開閉システムは、高速道路にも応用されている。事故や工事、道路封鎖による車線規制、う回路確保のため、高速道路などに3キロごとに設置されるゲートなども製造する。

D&STの大型自動ゲート

 なお、このD&S Technologyは、2年前には戦車にも対応するロードブロックシステムを展示していた会社だ。今回も同じシステムもデモされていた。この国ではソウルへ向けて北朝鮮から戦車が疾走してくるという事態がなんら夢物語ではない。

●電柱とは違う「スマートポール」というインフラ

 ボール(ball)ではなくポール(pole)である。韓国には「スマートポール(S-Pole)」という都市インフラがある。マイク、スピーカー、CCTV、非常ボタンが備わったスマートポールが、街中に設置されており、事故や事件は非常ボタンを押して警察に通報できる。マイクが悲鳴や衝撃音を検知したら自動でアラートが飛ぶ。スピーカーは広域の警報やアナウンスの他、現場の通報者とのコミュニケーションにも使える。

移動中に見かけたスマートポール、街中にインフラとして多数展開している

 スマートポールに関する技術やソリューションの展示も多い。INODEP社は、CCTVとそのソリューションに強く、政府調達の50%の案件に関わっているという。同社は15年前から全国に320万台のCCTVを設置しており、韓国内に25の監視ステーションがある。監視カメラはステーションごとにネットワーク化され、スマートポールや各地CCTVの情報が集約されている。インストールされるアプリケーションとしては、各自治体で導入が進む「迷子捜索システム」が代表例。そのほか交通管制などにも使われる。

スマートポールから収集する映像や音声の集中管理画面、管制室からはスピーカーで誘導指示も可能

 編集部の韓国取材のちょうど帰国日に、我々のスマートフォンに「緊急通報」が着信した。内容はソウル市内の道路封鎖に関する情報だ。あとで調べると「BTS」の復帰講演が翌日行われる影響で発生した道路封鎖だった。

帰国の空港で受信した道路封鎖案内

 空港などでよく見かけるX線の荷物検査システムでは、DEEPNOID社の展示が目を引いた。X線により鞄の中の不審物、危険物をチェックする機械だが、形状の認識は人が行う。金属が重なっていると形状の認識は職人技、ベテランの勘によったりするが、ここもAIが活用される領域だ。DEEPNOIDのAIはこのような職人技による認識を再現するが、蓄積されたデータを教材として活用し新人のトレーニングにも利用されているという。


《中尾 真二( Shinji Nakao )》

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