Scan PREMIUM Monthly Executive Summary は、大企業やグローバル企業、金融、社会インフラ、中央官公庁、ITプラットフォーマなどの組織で、情報システム部門や CSIRT、SOC、経営企画部門などで現場の運用管理にたずさわる方々や、事業部長、執行役員、取締役、経営管理、セキュリティコンサルタントやリサーチャーに向けて毎月上旬に配信しています。
前月に起こったセキュリティ重要事象のふり返りを行う際の参考資料として活用いただくことを目的としており、分析を行うのは株式会社サイント代表取締役 兼 脅威分析統括責任者 岩井 博樹 氏です。Monthly Executive Summary の全文は昨日朝 6 時 1 分に配信した Scan PREMIUM 会員向けメールマガジンに掲載しています。
>>Scan PREMIUM Monthly Executive Summary 執筆者に聞く内容と執筆方針
>>岩井氏 インタビュー記事「軍隊のない国家ニッポンに立ち上げるサイバー脅威インテリジェンスサービス」
【1】前月総括
2026 年 8 月は、サイバー攻撃が情報窃取やシステム侵入にとどまらず、通信やエネルギーなどの機能そのものを停止させる脅威として、改めて顕在化した月でした。
ポーランドでは、2025 年末に発生したエネルギー分野へのサイバー攻撃について追加調査結果が公表されています。同調査では、熱電併給施設の蒸気タービンや水処理設備が実際に停止していたことが明らかになりました。攻撃では、比較的安全な通信経路と考えられてきた「プライベート APN 」の設定不備が侵入経路として利用されており、インターネットから直接アクセスできる機器だけを監視すればよいという従来の境界防御の限界も示されています。
ネットワーク機器をめぐっては、Cisco の SSL VPN 製品で、認証なしの攻撃者が機器を再起動させることができる脆弱性の悪用が確認されました。また、中国 Zbtlink 製ルーターでは、複数機種のファームウェアに外部から root 権限でコマンドを実行できる「 ENDLESSDOORS 」と呼ばれる機能が組み込まれていたことが報告されています。企業活動がクラウド化する一方、VPN やルーターといった境界機器は依然として業務継続を左右する重要な攻撃面となっています。
● サイバー犯罪対策も「防御」から「作戦」へ 米国が踏み込んだ官民連携
政策面でも大きな動きがありました。米国政府は、審査を受けた民間企業を政府の指揮・監督下で国外のサイバー犯罪組織に対する情報収集や妨害作戦へ参加させる新たな制度を打ち出しました。民間企業はこれまで脅威情報や技術を政府へ提供する役割が中心でしたが、今後は政府が統制するサイバー作戦の実行主体として関与する領域が広がる可能性があります。
この取り組みは、日本で制度整備が進む能動的サイバー防御( ACD )を考える上でも興味深い動きです。日本では、重大なサイバー攻撃を未然に阻止するため、警察や自衛隊が攻撃者のサーバー等へアクセスして無害化する制度が整備されましたが、実際のアクセス・無害化措置を担う主体は政府機関が中心です。

