アイデンティティ保護を手がける米セキュリティ企業 Semperis のシニア・インシデント・レスポンス・コンサルタント、ティム・ビーズリー( Tim Beasley )氏は、ロシアの Midnight Blizzard が関与するサイバー攻撃を調査していた最中に、自宅の玄関先に、マトリョーシカなどロシアの土産物が入った荷物が届いたという。
当時、ビーズリー氏は Microsoft の検知・対応チーム( DART:Detection and Response Team )で主任調査官を務めていた。差出人はメモを残していなかったが、同氏はクレムリンの対外情報庁( SVR )との関連が指摘されている Midnight Blizzard から届いた荷物だと理解した。
「ロシアのちょっとした土産物だった。『我々はお前の居場所を知っている』というメッセージだ。こういうものが届くと、本当にギョッとする」と、同氏は本誌 The Register に語った。
デジタル空間への侵入が現実世界に影響を及ぼすこと自体は目新しくない。しかし近年、サイバー犯罪者は、身代金の支払いを被害者に強いるために、現実世界での危害や、精神的・身体的なトラウマを与える手段に訴えるようになっている。サイバー犯罪を、現実世界での暴力への入り口として使う集団さえある。
今年の夏、欧州刑事警察機構( Europol )とそのパートナー機関の捜査当局は、The Com( community の略)に対する継続的な取り締まりの一環として、「おぞましい」URL 4,340 件を削除対象として報告した。The Com は、緩やかなつながりを持つオンライン集団のネットワークで、若いメンバーがハッキング、スワッティング(虚偽通報による機動隊等の武装出動の誘発)、デジタル恐喝、現実世界での銃撃など、さまざまな違法行為や暴力に関与している。
「『暴力のサービス化( Violence as a Service )』の事例を我々は目にしてきた」と、ビーズリー氏は述べた。
同氏はまた、経営幹部( C-suite )が、サイバー犯罪者から自分の子供たちが通う学校の写真を直接送りつけられるという、ランサムウェア攻撃も調査してきた。身代金を支払うよう、心理的な圧力をかける狙いだ。
「SNS の調査(偵察)で得た情報をもとに、家族を巻き込んだ脅迫を行うケースを見てきた。我々の業界では、そうした事態を想定しておくことが当たり前になりつつあり、残念なことだ」と、ビーズリー氏は述べた。
被害企業の従業員に対するこの種の心理的な威嚇や危害は、過去数年で増加し、もはや珍しくないほどになっている。Semperis の年次ランサムウェアリスク報告書によれば、ランサムウェア攻撃の 37 %で、従業員に対する心理的または身体的な脅迫が行われていた。
今年上半期に実施されたこのグローバル調査は、ランサムウェア被害を経験した 1,200 の組織を対象としている。調査では、攻撃者が支払いを強いるために、心理的な威嚇( 23 % )や身体的な脅迫( 17 % )を行っていることが分かった。標的は経営幹部や従業員だけではなく、被害者の家族にも及ぶ。

![自宅玄関にマトリョーシカ ~ ランサムウェア攻撃の 37 %で関係者個人に心理的・身体的脅迫 [グローバル調査]](/imgs/p/86qo0QBZcT7vgFgQGrVUu50KKAcGBQcjAgEA/55619.jpg?vmode=default)