RFIDをめぐる各国の法整備とわが国の課題 ■第4回■
■ 日本国の電子タグの利用に関するガイドライン(続き)
特集
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●タグ装着の表示
政府ガイドライン第3(電子タグが装着されていることの表示等)は、「消費者に物品が手交された後も当該物品に電子タグを装着しておく場合には、事業者は、消費者に対して、当該物品に電子タグが装着されている事実、装着箇所、その性質及び当該電子タグに記録されている情報(以下「電子タグ情報」という。)についてあらかじめ説明し、若しくは掲示し、又は電子タグ情報の内容を消費者が認識できるよう、当該物品又はその包装上に表示を行う必要がある。当該説明又は掲示は、店舗において行うなど消費者が認識できるように努める必要がある。」と定めている。
消費者は、そもそもRFIDタグが装着された商品にアクセスするかどうかを自己決定し、その自己決定に基づいてアクセスを拒否する権利を有する。そのため、RFIDタグの存在が表示されなければならないことになる。隠れた利用(stealth deployment)は、原則として許されない。例えば、消費動向調査など課金や保安に必要な範囲を超える目的で、消費者に知らせないままでRFIDタグを付した商品を陳列するような行為は、違法行為となる可能性が高い。この場合、特定の統計調査理論に基づき存在を知らせないほうが統計としての精度が高まるという理由によっては表示をしないことの合理的な理由とはならないだろう。いかなる消費者も、法律に基づいてなされるような場合などを除き、統計調査、消費動向調査、購入した商品の追跡調査等の要請に対して常に同意しなければならない、あるいは、自動的にその同意をしたことになるというような理屈は、法理論として成立し得えるものではないし、また、消費者保護の見地からもすこぶる不適切である。
この表示は、電子的になされるようなものやWeb上での表示だけのようなものでは十分ではないと考えられる。消費者は、物体としての商品をその場で手にとって購買するかどうかを判断するので、RFIDタグの存在についてもその場で肉眼で見て認識できるようにしておく必要があるからである。そのため、ガイドライン第3でも「当該物品又はその包装上に表示を行う必要がある」と表示の方法が明記されている。
なお、このガイドライン第3は、プライバシー保護や個人情報保護とも深い関連を有するもので、とりわけ、ガイドライン第4(電子タグの読み取りに関する消費者の最終的な選択権の留保)との直接の関係がある。つまり、オプトインにせよオプトアウトにせよ、問題となるRFIDタグの存在を知らなければ、消費者は何も意思決定することができないからである。ガイドライン第4の選択権の行使をする際にも、まずRFIDタグの存在が知らされていなければならないのは理の当然であるので、ガイドライン第3に適合していないRFIDタグは、ガイドライン第4にも自動的に適合していないと判断することになろう。
<参考サイト及び関連報告書>
総務省:「電子タグに関するプライバシー保護ガイドライン」の公表
http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/040608_4.html
総務省:「ユビキタスネットワーク時代における電子タグの高度利活用に関する調査研究会」最終報告
http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/040330_6.html
経済産業省:経済産業省・総務省の協同による「電子タグ(ICタグ)に関するプライバシー保護ガイドライン」の公表について
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/press/0005294/0/040608denshitagu.pdf
経済産業省:商品トレーサビリティの向上に関する研究会中間報告書
http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0003896/
【執筆:明治大学法学部教授・弁護士 夏井高人】
この記事には続きがあります。
全文はScan Security Management本誌をご覧ください。
http://www.ns-research.jp/cgi-bin/ct/p.cgi?ssm01_ssmd
《ScanNetSecurity》