世界的アンチウイルスベンダー・カスペルスキー・ラブス社の素顔に迫る(第1回) | ScanNetSecurity
2024.05.06(月)

世界的アンチウイルスベンダー・カスペルスキー・ラブス社の素顔に迫る(第1回)

日本におけるアンチウイルスソフトウェアベンダーといえば、シマンテック、トレンドマイクロ、マカフィーの3社が知名度でも市場シェアでも群を抜いている。そんな日本のアンチウイルス市場に果敢に参入を試みるロシア企業があるという。早速、日本オフィスを訪れ、現地法

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日本におけるアンチウイルスソフトウェアベンダーといえば、シマンテック、トレンドマイクロ、マカフィーの3社が知名度でも市場シェアでも群を抜いている。そんな日本のアンチウイルス市場に果敢に参入を試みるロシア企業があるという。早速、日本オフィスを訪れ、現地法人代表のアドリアン・ヘンドリック氏を取材した。本連載では、このロシアのアンチウイルスベンダー、カスペルスキー・ラブス社について、会社、製品の特徴を2回に分けて述べる。

●創業者ユージン・カスペルスキー氏の素顔

この会社の創業者は、ユージン・カスペルスキー氏。現在はモスクワ本部のウイルス調査チームのリーダー、技術責任者を務めている。会社組織としてカスペルスキー・ラブス社が活動を開始したのは1997年だが、彼が初めてアンチウイルスソフトウェアを作ったのは、まだロシアがソビエト連邦の一部だった1989年のことだ。

ソビエト連邦時代に数学やコンピュータサイエンスの高等教育を受けたユージン氏は、1989年当時、ファイルの圧縮アルゴリズムや暗号化アルゴリズムを研究していた。世界初のコンピュータウイルスと言われるBrainが作成されてからまだ3年後のことである。ユージン氏は、将来的にコンピュータウイルスがコンピュータシステムの大きな脅威になりうるだろうという、先見の明を持っていた。

世界初のアンチウイルスソフトウェアとされる"-V"を作成したユージン氏は、それ以降コンピュータウイルスの研究に没頭することになる。そして、1991年、初めてのアンチウイルス製品である"AVP"を発売した。

●創業期はOEMに特化

それからの数年間は、ソビエト崩壊後に成立したロシア共和国向けに、情報セキュリティ関連の仕事をこなしつつ、AVPの拡販を行っていった。

実は、AVPはAntiViral Tool Kitの略称である。Tool Kitの名称からもわかるとおり、このソフトウェアは「アンチウイルスソフトウェアを作成するためのソフト」である。ユージン氏は、アンチウイルスソフトウェアの「エンジン」部分に特化して開発を進め、そのエンジンの使い方や組み込み方には、ソフトウェア・ハードウェアベンダ向けに応用の余地を残したのである。

つまり、アンチウイルスベンダー向けに、アンチウイルスエンジンのOEM提供を行う戦略でアンチウイルスビジネスを開始した、というわけだ。自前の販売網を持たずに自らの技術を売り込むには、優れたビジネス的戦略だったといえる。1994年には初のパートナーシップ契約をフィンランドのエフ・セキュア社と締結し、アンチウイルスエンジンのOEM提供を開始、その後欧州を中心に多くのセキュリティベンダーとOEM契約を締結することに成功した。

●カスペルスキー・ラブス社を設立

順調に実績を伸ばしてきたユージン氏のAVP販売は、個人事業として行うにはあまりにも規模が大きくなってきてしまった。そこで、1997年、同社を設立し、会社組織としての製品供給体制、サポート体制を整えていった。

この頃になると、コンピュータウイルスの専門家としてのユージン氏の名前は欧州では広く知られるようになっていた。ウイルスに関する独自情報の収集や分析など、活躍の分野が幅広く広がっていったのもこの時期である。ユージン氏の実力はインターポール(国際刑事警察機構:ICPO)が協力を仰ぐほどのものになっており、実際に何人かの国際的なウイルス作者は、ユージン氏からの情報をもとに当局に逮捕されている。

【執筆:株式会社アイドゥ 小松信治 http://www.eyedo.jp】

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(この記事には続きがあります。続きはScan本誌をご覧ください)
http://www.ns-research.jp/cgi-bin/ct/p.cgi?m-sc_netsec

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