中国最大のコンシューマー向けソフト開発会社・金山軟件が日本上陸 世界的なセキュリティベンダーがひしめく日本市場での勝算は 第1回 | ScanNetSecurity
2024.05.03(金)

中国最大のコンシューマー向けソフト開発会社・金山軟件が日本上陸 世界的なセキュリティベンダーがひしめく日本市場での勝算は 第1回

中国最大のコンシューマー向けソフトウェアメーカー・金山軟件(英語名:King Soft、本社:北京、雷軍社長)が日本法人・キングソフト(本社:東京都渋谷区、広沢一郎社長)を設立したのは2005年春だった。9月からは同社の主力製品の1つである総合セキュリティソフトの国内

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中国最大のコンシューマー向けソフトウェアメーカー・金山軟件(英語名:King Soft、本社:北京、雷軍社長)が日本法人・キングソフト(本社:東京都渋谷区、広沢一郎社長)を設立したのは2005年春だった。9月からは同社の主力製品の1つである総合セキュリティソフトの国内提供を開始。ダウンロード販売による「先着100万本まで1年間無償利用可能」といった大胆な販売戦略を展開し、11月11日からはキングソフトの広沢社長が代表取締役であるソフトウェアメーカー・マグノリアとのタイアップで期間限定の店頭販売も開始した。キングソフトの日本市場での戦略、今後の事業展開の方向性について広沢社長に聞いた。

● 全世界で5000万台以上のパソコンで使われている金山軟件のソフト

中国の金山軟件(以下、中国キングソフト)は、1988年に設立されたコンシューマー向けソフトウェアメーカーである。主力製品は、マイクロソフトのWordやExcel PowerPointと高い互換性を誇るワープロや表計算、プレゼンテーションなどのオフィスソフト「WPS Office」、中国の古代史をモチーフにしたオンラインゲームソフトの「剣侠情縁」や「幻想春秋」など、そして、総合セキュリティソフトの「金山毒覇」である。「毒とはコンピュータウイルスのことで、ウイルスを制覇するという意味で『毒覇』です。この日本語版である『キングソフトインターネットセキュリティ2006』をこのほど日本市場に投入しました」(広沢社長)。

この言葉が示す通り、「WPS Office」や「剣侠情縁」などのオンラインゲームは日本市場向けには展開されていない。ただし、どちらも中国市場では「国産ソフト」として認知度が高く、多くの利用者がいる。とりわけ「WPS Office」は、マイクロソフトのOfficeの各ソフトウェアと比べて「操作性」「印刷結果」「拡張子」が同じである。この「3つの同じ」を実現したことで、中国の政府機関や学校関連に広く採用され、「今では中国市場のみならず海外でもOEMで提供されています」(広沢社長)とのこと。あわせて、中国キングソフトはソフトウェアの開発能力を客観的に示す品質管理基準である「CMMのレベル2」の認定を受けているほか、ISO9000認証も取得している。約1200名の従業員のうち、ソフトウェア開発に携わる研究開発系のエンジニが約600名と半分を占める。高い技術力と製品の完成度の高さから「全世界では個人、政府、企業に関わらず、5000万台以上のパソコンに中国キングソフトの製品がインストールされ利用されていることになります」(広沢社長)。

● 日本以上に厳しい中国のセキュリティソフトの市場でトップクラスのシェア

さて、その中国キングソフトが開発した「金山毒覇」は中国でのトップクラスのシェアを獲得しているセキュリティソフトである。中国では初めて「試用後に購入する」という販売方法を導入したことが利用者に評価され、提供開始からわずか2カ月間で500万ダウンロードを突破した実績を誇る。中国市場の分析で定評のある民間調査会社・サーチナの独自調査のデータをもとに算出された2004年2月時点のシェアでは「金山毒覇」が32.43%とトップシェアを獲得し、一説によると中国だけで1000万人以上の利用者がいるともされている。次いで「瑞星」が30.95%、シマンテックの「Norton Antivirus」が16.21%と続いている。この数値を見る限りでは、中国市場は、日本市場のようにシマンテックやトレンドマイクロといった主要海外ベンダーだけで市場の70%近くが占められている状態ではないようだ。金山毒覇のように「国産ソフト」が高いシェアを保っている。ちなみに瑞星は日本市場ではイーフロンティアから「ウイルスキラー」として発売されている。「中国市場は、国産ソフト同士のシェア争いも激しいし、同時にシマンテックやトレンドマイクロなどの海外の主要セキュリティベンダーも市場に参入してきています。競争の厳しい市場で、そこでようやくトップクラスのシェアを獲得できました。その上で新たに日本市場への進出を考えたのです」(広沢社長)。

【執筆:下玉利 尚明】

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(この記事には続きがあります。続きはScan本誌をご覧ください)
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