緊急寄稿 Scan またまた売却でふり返る歴史、3度目の正直? 仏の顔も3度まで?
●先週金曜日にライターに届いたお知らせとは
特集
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メールマガジン Scan と その公式ポータルサイトであるScanNetSecurity が、サイボウズ・メディアアンドテクノロジー株式会社からバリオセキュア・ネットワークス株式会社に売却され、中立な新会社「株式会社ネットセキュリティ総合研究所」を設立してメディア運営を継続していくという案内が、先週編集部から筆者のもとに届いた。
バリオセキュア・ネットワークス
子会社設立および事業譲受に関する基本合意書締結のお知らせ
http://www.variosecure.net/ir/pdf/20090313_kihongoui_ns01.pdf
バリオセキュア・ネットワークスは、いわゆるセキュリティ関連製品の開発、販売やホスティングサービスを行っている会社だそうである。黒字経営を続けてきており、大変立派である。
筆者は Scan 創刊の翌年くらいから原稿を書いているが、Scan 売却はこれで3度目である。温故知新。今回は筆者の記憶をもとに、売却の歴史を振り返ってみよう。あくまで筆者の記憶がもとなので、記憶違いがあった場合はご容赦いただきたい。
●売却1度目、創業者を中心とする株主からオン・ザ・エッヂ社(後のライブドア)に売却
2003年5月
エッジ株式会社が株式会社バガボンドの株式を取得し子会社化
http://www.ldh-corp.co.jp/ir/2003/20030529
この時は事業譲渡ではなく、当該事業を営んでいたバガボンド社を丸ごと売却という形をとっている。売却に当たっては10社以上がオファーを出し、最終的に競争入札を行って決定したらしい。
ちなみに、バガボンド社は Scan 以外にマーケティング調査およびレポート販売、受託Web開発も行っていた。ただし、受託Web開発は必ずしもうまくいっていなかったようで、ここでの赤字が全社の収益の足をひっぱって赤字転落したようである。その事業を推進していた当時の女性社長は、引責辞任したらしい。
この時は人員、体制も丸ごと移行したため、それほど変化はなかったようである。売却後、ネットアンドセキュリティ総研という社名に変更している。実はこの頃、Scan および他の事業も好調だったらしく、ネットアンドセキュリティ総研を記憶している方も多いのではないかと思う。
●2度目、ライブドア社からサイボウズ社に売却
2006年5月
ライブドア連結子会社、ネットアンドセキュリティ総研の株式取得
(連結子会社化)に関するお知らせ
http://cybozu.co.jp/company/news/2006/20060424.html
ライブドア事件の影響を回避するために、ライブドアグループからの脱出のために当時のネットアンドセキュリティ総研経営陣が画策して実現したそうである。会社丸ごとの売却である。この時も複数社がオファーを出し、最終的に、サイボウズ社が落札した。
業界では有名な話であるが、堀江元ライブドア社長が逮捕された翌日、当時のネットアンドセキュリティ総研社長の元に1度目の売却の競争入札に参加した企業の担当者から電話が入った。「だから、うちに売っていればよかったんですよ」とイヤミでも言われるのかと思ったら、「ライブドアグループを抜けてうちのグループに来ませんか?」という話だったそうである。逮捕の翌日に電話してくる根性がすごい。
さらに、翌日、翌々日と同様に電話やメールが相次ぎ、グループを抜けるなら今しかないとライブドアに掛け合ってめでたくライブドアグループ脱出となったそうだ。ちなみに、グループ子会社として最初のグループ脱出であった。
なお、この時、創業者の退任など人員、組織面で大きな変化があった。現在、Scan にはネットアンドセキュリティ総研時代の人間はひとりしか残っていない。ライブドアグループ入りの時と比べると、かなりの変化である。
●3度目、そして今回
サイボウズグループ入りしたものの、M&Aによる拡大路線の変更があったり、大半のスタッフが退社してしまったため、結構しんどい状況に陥ったようである。
Scan は急成長はないものの、コンスタントに利益を上げる事業として、安定していたそうである。ライブドアグループ時代には、同じくライブドアグループのターボリナックス社と比較されて「売上と社員はターボリナックスの10分の1以下、しかし利益は同じかそれ以上」と言われていたらしい。今回の譲渡にあたっても、複数の会社が買収に手を挙げたようである。
●3度目の正直?
しかし、1997年の媒体創立から10年あまりで、なんで3回も売られるハメになったのか? という素朴な疑問がわいてくる。
10年以上、編集者の入れ替わりにもかかわらず、コンスタントに利益を上げているので買いたい人も安心して買えるのだろう、というのはよくわかる。問題は、なんで3回も売るの? というとこだろう。利益が出ていることや買い手がすぐにつくこと(3回とも複数の会社が手を挙げて、競争入札となった)から考えると事業そのものには問題はなさそうである。
ということは、事業母体がだめってことだ。IT業界っていい加減な会社多いからであろうか? 安定した事業母体に買収してもらうまで、Scan の売却の旅は続くのであろう。
【執筆:Prisoner Langley】
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