工藤伸治のセキュリティ事件簿 第5回
※本稿はフィクションです。実在の団体・事件とは関係がありません※
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「了解。報酬は?」
オレは葛城に聞いた。
「そちらの標準単価を教えていただけますか?」
「一日30万円」
「本気ですか? 一ヶ月20日稼働で600万円ですよ」
「うん、そう。でも、今回はどんなに長くても一週間だろ? そしたら、最大で二百十万円じゃん。犯罪がらみにしては、なんか安いなあ」
「200万円でいかがでしょう?」
「どうなの?」
オレはエージェントの沢田の顔を見た。なにも言わずに、ずっとにこにこしているだけだ。それで20%もピンハネしやがる。
「こちらは問題ありません」
この会議で沢田が口にした、たったひとつのセリフがこれだ。
「じゃあ、200万円でいいや。契約書はこれ。そっちでチェックして金額だけ上書きしてハンコ押しといて。あと、今日もらった資料とシステム関連資料一式借りてくから。ネットワークにつながっているハードとソフトの全製品の製品番号とバージョン、パッチの更新状況の一覧表をくれ」
「わかりました」
「あと、システム部内を見学させてくれ。犯人の可能性のある連中の顔を見ておく。オレのことは、適当に客とかなんとか言っておいて」
「わかりました。時々地方支社から研修に来る者がいますので、あなたは北海道支社から研修に来たことにしましょう」
オレは資料を一式もらい、システム部の連中に北海道支社から来たということで紹介してもらった。研修は外部で受けるので、ここにはたまに来るだけだと説明してもらった。これで自由に動きやすい。
【註解】
労働集約型の商売、特にコンサルタントなどのいかにもうさんくさい商売では、金額は言ったもの勝ちである。安いコンサルタントの日当は、数万円レベル(5万円とか4万円とか、高くてもせいぜい10万円)だが、シニアとかチーフとかそれなりの肩書きをつけたコンサルタントの日当は20万円を下ることはめったにない。たいていは数十万円に達する。
【執筆:才式】
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