工藤伸治のセキュリティ事件簿 シーズン2「V-CRY」 第23回「真犯人」 | ScanNetSecurity
2026.04.06(月)

工藤伸治のセキュリティ事件簿 シーズン2「V-CRY」 第23回「真犯人」

※本稿はフィクションです。実在の団体・人物・事件とは関係がありません※

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オレは、痛む尻をさすりながら事務所に戻った。

冷蔵庫からコーヒー豆を出す。オレは酒も女も贅沢はしないが、コーヒー豆だけはいいものを選ぶ。パナマのエスメラルダ農園のゲイシャは、世界最高と言われる豆のひとつだ。それを浅煎りしたものを、粗挽きにしてカフェプレスで抽出した。

独特の酸味のあるクリアな味が、香りととともに口の中に広がる。カフェインのおかげで、どくんどくんと脳が活性化してきたような気がする。

犯人は、偽アンチウイルスソフトを使って、大量の電子マネーを手に入れ、RMTで換金しようとした、とオレは考えた。それは間違っていなかったと思う。実際、中山は自分の顧客に大量のゲーム内通貨を販売していた。

だが、中山は犯人じゃないだろう。犯人なら、あんなに簡単に自分の罪を認めない。罪を認めたのは、警察に突き出されないことを知ってたからだ。万が一突き出されても真犯人が別にいることを言えば助かるとわかっているからだ。

じゃあ、犯人でもない中山はどうやって大量のゲーム内通貨を激安で手に入れたんだ? もちろん、真犯人から受け取ったのだろう。ウソをついていた様子を見ると、詐欺で入手したという事情も知った上で、安く手に入れたに違いない。あるいは、犯人からゲーム内通貨の販売だけを依頼された共犯者かもしれない。

考えてみれば、犯人が自分で売る必要はない。他の業者に売ってもらうという方法もあったんだ。オレはバカだ。そのことに気がつかなかった。

犯人もRMT業界にくわしいヤツだろう。でも、そんなヤツはいくらでもいる。オレだってくわしい。沢近だって、そうだ。中山が死んだら、手がかりはなくなる。犯人を見つけられないかもしれない、とオレは思った。

だが、中山が殺されるようなことはないだろう。殺人になれば警察は動かざるを得ない。いや、待て、それも違う。死体が出なけりゃ警察は動かない。年間10万人以上が行方不明になってるんだ。そこに中山ひとり増えても誰も気にしないだろう。

数時間オレは沈思黙考し、ひとつの結論に達した。真犯人はあいつしかいない。

《ScanNetSecurity》

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