スイスのリゾート、ダボスで開催される年次大会で有名なこの国際的組織によれば、サイバー攻撃は最も実現する可能性の高いリスクの第4位に入っている。所得格差および財政の不均衡に関する経済上の恐れ、そして上昇する温室効果ガスの排出に対する懸念に続くものだ。
専門家とのインタビュー、調査、ワークショップを行った結果、WEFのRisk Response Networkはかなりの量のドキュメントを作成し、民族国家およびトップ企業に重くのしかかっている事柄の評価を行っている。
技術的な領域では、専門家達は発電所、上水道、その他のクリティカル・システムに、ある種の壊滅的な誤動作を誘発するサイバー攻撃を最も恐れているが、実際に起きる可能性は比較的低いと考えている。
Zurichの損害保険部門最高リスク管理責任者であり同プロジェクトのメンバーであるSteve Wilsonは、WEFにとって最大の懸念はインターネット・セキュリティの複雑さだと語った。彼は次のように述べている。「我々はまだ、そのリスクを本当に理解することさえできずにいる。」
同レポートは、今後10年のリスクを調査しようとするもので、技術があまりにも速く進んでおり、誰にとっても遅れずについていくのが難しいと指摘している:
わずか10年前、インターネットバブルが起こり、インターネットは利益を変化させる可能性があるという主張は、ひどく誇張されたもののように思われた。我々は現在、それが誇張というよりは、むしろ時期尚早だっただけであることを知っている。同様のことが、インターネットがリスクを変化させる可能性があるという現在の警告にも当てはまるかどうか、考える価値がある。
WEFの調査書類は以下のように結論する:「世界経済および勢力均衡における安定性を確保するには、健全なデジタル空間が必要とされる。」 これはテクノロジー分野の人々にとって珍しいことではないが、この問題は多くの政治課題にのぼり始めており、同レポートは民間投資をシステムの脆弱性の探究に向かわせる、新たなメカニズムを「緊急に」求めている。
同レポートはサイバー攻撃およびサイバー犯罪に関する情報は入手するのが難しいとも言う:
政府や民間セクターに対するサイバー脅威の研究は、インターネット・セキュリティ・ソリューションの販売に従事する人々から資金を得ているが、そこには疑念の原因となるバイアスの可能性がある。学術論文や政策文書は主として事例のケーススタディに基づいている。
サイバー犯罪の被害者は沈黙を守ること興味を持っているが、オンライン・セキュリティ製品のベンダーは、サイバー犯罪の脅威を発表することに興味を有している。したがって、リスクの実際のレベルと投資の必要性について、企業や組織が状況をハッキリとつかむことは非常に難しい。グローバルなサイバー・セキュリティを改善し、効率的市場を確保するには、政策の中心に、こうした情報の非対称性の修正を置く必要がある。
2007年以来初めて、技術的な懸念がもっとも可能性の高いリスクのトップ5に入ったものの、専門家たちが最も憂慮しているのは、いまだに現在進行している世界の金融危機だ。
専門家によれば、最も起きる可能性の高いリスクは深刻な所得格差だ。
我々のほとんどは、農奴がいた時代ほどの賃金の不平等は無いと感じている(これは実際、議論されている)が、それにもかかわらず、統計の1パーセントが支配的立場にある。同レポートは言う:
未曾有の規模で、将来への見通しに対して希望が持てないという感覚が世界中に広がっている。2011年のギャラップ世論調査のデータは、世界的に、人々が生活水準が落ちていると感じており、こうした傾向を覆す政府の能力に対し、信頼を失いつつあることを明らかにしている。
人々の不満は、所得格差の過酷さにより悪化する。世界人口の半分は最も貧困であり、世界の富の1パーセントしか占めていないが、これに対して世界の1パーセントが世界の資産のうち約半分を所有しているのだ。
多くの人々が自分より多く稼いでいると知ることは、やる気の元とはなるが、もし人々が、特に若者が、どれだけ懸命に働いても決して成功することはできないと考えれば、怒り狂うことだろう。同レポートは以下のように警告する:
アメリカ合衆国から中東まで、2011年に起こった社会的不安は、それが凶暴で不安定な力になる前に、いかに政府が不満の原因に対処する必要があるかを示している。
人類を待ち構える、厳しいであろう将来に関する完全なレポートはここ(64ページのPDFファイル/6.8MB)で読むことができる。
※本記事は有料版および、Webサイトにも全文を掲載しました
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(翻訳:中野恵美子)
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