Linux Kernel の compat_sys_recvmmsg() 関数の実装に起因する権限昇格の脆弱性(Scan Tech Report) | ScanNetSecurity
2024.05.02(木)

Linux Kernel の compat_sys_recvmmsg() 関数の実装に起因する権限昇格の脆弱性(Scan Tech Report)

Linux Kernel には、recvmmsg システムコールを取り扱う際の timeout パラメータ処理に起因して、権限昇格が可能な脆弱性が存在します。

脆弱性と脅威 エクスプロイト
1.概要
Linux Kernel には、recvmmsg システムコールを取り扱う際の timeout パラメータ処理に起因して、権限昇格が可能な脆弱性が存在します。
システムにアクセス可能なローカルの悪意あるユーザに利用された場合、root 権限を取得され、システムを完全に制御される可能性があります。
Linux Kernel で x32 ABI 機能 (CONFIG_X86_X32) を有効にする環境では、脆弱性を悪用される可能性があるため、影響を受けるバージョンの Linux Kernel を利用するユーザは可能な限り以下の対策を実施することを推奨します。


2.深刻度(CVSS)
6.9
http://nvd.nist.gov/cvss.cfm?version=2&name=CVE-2014-0038&vector=%28AV%3AL/AC%3AM/Au%3AN/C%3AC/I%3AC/A%3AC%29


3.影響を受けるソフトウェア
Linux Kernel 3.4.x - 3.4.78/3.10.28/3.11.10/3.12.9/3.13.1

※1 影響を受けるバージョンの Linux Kernel が実装される openSUSE や Ubuntu などの Linux ディストリビューションもこの脆弱性の影響を受けます。


4.解説
x32 ABI (Application Binary Interface)※2 は、64 ビット環境で 32 ビットのポインタが使える機能を提供するバイナリインタフェースであり、Linux Kernel 3.4 より当該機能がサポートされています。
openSUSE や Ubuntu などの Linux ディストリビューションでは、既定で CONFIG_X86_X32 が有効 (CONFIG_X86_X32=y) になっています。

この CONFIG_X86_X32 が有効な Linux Kernel には、compat_sys_recvmmsg()関数 (net/compat.c) において、ユーザ空間から渡される timeout パラメータを適切にチェックせず、パラメータ値をそのままカーネル空間へのポインタとして処理してしまう不備があります。
このため、recvmmsg システムコールを介して、特定の関数ポインタのアドレスを指定した timeout パラメータを渡すことで、カーネルメモリ領域に任意のデータを書き込むことが可能な問題が存在します。

この脆弱性を利用することでシステムにアクセス可能なローカルの攻撃者は、root に権限昇格を行い、当該権限で任意のコマンドが実行可能となります。

※2 x32-abi
https://sites.google.com/site/x32abi/


5.対策
以下の Web サイトを参考に Linux Kernel 3.4.79/3.10.29/3.12.10/3.13.2 以降を入手しアップデートする、あるいは修正パッチを入手し適用することで、この脆弱性を解消することが可能です。

Linux Kernel:
http://www.kernel.org/

Linux Kernel linux.git 2def2ef2ae5f3990aabdbe8a755911902707d268
http://git.kernel.org/cgit/linux/kernel/git/torvalds/linux.git/commit/?id=2def2ef2ae5f3990aabdbe8a755911902707d268

また、Linux ディストリビューションにおいては、それぞれのベンダが提供するセキュリティアドバイザリを参考に、適切なパッケージを入手しアップデートすることで、この脆弱性を解消することが可能です。

・openSUSE 12.3/13.1
openSUSE-SU-2014:0204-1
http://lists.opensuse.org/opensuse-security-announce/2014-02/msg00002.html
openSUSE-SU-2014:0205-1
http://lists.opensuse.org/opensuse-security-announce/2014-02/msg00003.html

・Ubuntu 12.04 LTS/13.10
CVE-2014-0038
http://people.canonical.com/~ubuntu-security/cve/2014/CVE-2014-0038.html


6.ソースコード
(Web非公開)

(執筆:株式会社ラック サイバー・グリッド研究所

※Web非公開該当コンテンツ閲覧をご希望の方はScan Tech Reportにご登録(有料)下さい。

Scan Tech Report
http://scan.netsecurity.ne.jp/archives/51916302.html

《株式会社ラック デジタルペンテスト部》

関連記事

特集

PageTop

アクセスランキング

  1. ランサムウェア被害の原因はスターティア社の UTM テストアカウント削除忘れ

    ランサムウェア被害の原因はスターティア社の UTM テストアカウント削除忘れ

  2. クラウド労務管理「WelcomeHR」の個人データ閲覧可能な状態に、契約終了後も個人情報保存

    クラウド労務管理「WelcomeHR」の個人データ閲覧可能な状態に、契約終了後も個人情報保存

  3. 今日もどこかで情報漏えい 第23回「2024年3月の情報漏えい」なめるなという決意 ここまでやるという矜恃

    今日もどこかで情報漏えい 第23回「2024年3月の情報漏えい」なめるなという決意 ここまでやるという矜恃

  4. 2023年「業務外利用・不正持出」前年 2 倍以上増加 ~ デジタルアーツ調査

    2023年「業務外利用・不正持出」前年 2 倍以上増加 ~ デジタルアーツ調査

  5. クラウド型データ管理システム「ハイクワークス」のユーザー情報に第三者がアクセス可能な状態に

    クラウド型データ管理システム「ハイクワークス」のユーザー情報に第三者がアクセス可能な状態に

  6. 雨庵 金沢で利用している Expedia 社の宿泊予約情報管理システムに不正アクセス、フィッシングサイトへ誘導するメッセージ送信

    雨庵 金沢で利用している Expedia 社の宿泊予約情報管理システムに不正アクセス、フィッシングサイトへ誘導するメッセージ送信

  7. 信和へのランサムウェア攻撃で窃取された情報、ロックビット摘発を受けてリークサイトが閉鎖

    信和へのランサムウェア攻撃で窃取された情報、ロックビット摘発を受けてリークサイトが閉鎖

  8. 「味市春香なごみオンラインショップ」に不正アクセス、16,407件のカード情報が漏えい

    「味市春香なごみオンラインショップ」に不正アクセス、16,407件のカード情報が漏えい

  9. SECON 2024 レポート:最先端のサイバーフィジカルシステムを体感

    SECON 2024 レポート:最先端のサイバーフィジカルシステムを体感

  10. トレーニング 6 年ぶり復活 11/9 ~ 11/15「CODE BLUE 2024」開催

    トレーニング 6 年ぶり復活 11/9 ~ 11/15「CODE BLUE 2024」開催

ランキングをもっと見る