Scan Legacy 第二部 2006-2013 第4回「新社名と新社長」 | ScanNetSecurity
2026.01.03(土)

Scan Legacy 第二部 2006-2013 第4回「新社名と新社長」

ライブドアがITベンチャー史上最大規模の挫折を経験した会社だとすると、サイボウズはその正反対でした。ScanがM&Aされた夏にサイボウズ社は東京証券取引所一部に上場市場を変更しており、挫折のないベンチャーが持っている快活さや風通しのよさにあふれていました。

特集 コラム
本連載は、昨年10月に創刊15周年を迎えたScanNetSecurityの創刊から現在までをふりかえり、当誌がこれまで築いた価値、遺産を再検証する連載企画です。1998年の創刊からライブドア事件までを描く第一部と、ライブドアから売却された後から現在までを描く第二部のふたつのパートに分かれ、第一部は創刊編集長 原 隆志 氏への取材に基づいて作家の一田和樹氏が、第二部は現在までの経緯を知る、現 ScanNetSecurity 発行人 高橋が執筆します。

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(本稿は可能な限り正確な記述に努めますが、記載事項にはときに、誤った記憶等により、正しくない場合があることをあらかじめおことわり申し上げます)

2006年1月にライブドア事件が発生、4月24日にサイボウズ社へのM&Aが正式発表され、5月には飯田橋のサイボウズ本社のオフィスへ引っ越しました。

サイボウズ社の社長は青野さんが務めており、飯田橋のオフィスで夜遅くまで仕事をしていると、よく声をかけていただいたことを覚えています。

青野さんは目の澄んだ童顔の人で、腕力ではなく人気で政権を維持しているガキ大将のような少年っぽい人でした。サイボウズ社の新卒向け説明会会場で、学生の人はあっちの受付に行って下さい、と追い払われて、オレ社長なんだけど…と言いながらも、あっさり引き下がった、という実話をお持ちです。

青野さん「Scanというのはどういうビジネスですか」

「Webもあるんですが、有料メールマガジンがビジネスのコアです」

青野さん「有料メールマガジンというのはいくらするんですか」

「個人だと月800円です。是非、1ライセンスお買い上げ下さい」

わたしがふざけてそう言うと青野さんが「800円かあ…」と心底困ったような顔をして黙りこんでしまったのを覚えています。その表情は、ふだん30円のホームランバーを食べていた田舎の小学生が、街のデパートで420円のハーゲンダッツを見て度肝を抜かれているようであり、いまも忘れられません。

「考えておくよ」とか「システム部門に相談してみるよ」等のおためごかしを言うこともできたはずですが、そうしなかったのは、社員のモチベーションを上げることが経営者の重要な仕事と認識している、新しいタイプの社長だったからでしょう。

ライブドアがITベンチャー史上最大規模の挫折を経験した会社だとすると、サイボウズはその正反対でした。ScanがM&Aされた夏にサイボウズ社は東京証券取引所一部に上場市場を変更しており、挫折のないベンチャーが持っている快活さや風通しのよさにあふれていました。

しかし、挫折経験の無さは若さでもあり、2006年にサイボウズが大量にM&Aした子会社群のほとんどは、それから3年後に売却・縮小されることになります。

M&A後は、買収を進めた津幡さんが最初の数か月社長を務めましたが、すぐに外資系コンサル出身の土屋継さんが社長として赴任しました。同時に社名がネットアンドセキュリティ総研から、サイボウズメディアアンドテクノロジーに変更され、サイボウズMT社は、NEXTermというシンクライアント事業をあらたにM&Aすることになります。

スキームとしてはこうなります。

(1) 2億5000万円(たしか)の銀行預金を持つネットアンドセキュリティ総研社を3億円(くらい)で買収

(2) 預金の大半を使ってNEXTermを事業買収し、「サイボウズ社がシンクライアント事業参入」という、投資家好きのするリリースを発信

(4) NEXTerm売却実務担当だった担当者(土屋さん)がそのまま社長に

わずか数か月の在任だった津幡さんにかわって社長に就任した土屋さんは、北野武監督の「その男凶暴につき」という映画で、サプリメントの小売業者を演じた遠藤憲一さんに似た張り詰めた風貌の人で、当時の愛車はオープンカーのアルファロメオ、現役のクラブDJでもあるという人物でした。

土屋さんは、真っ赤なセーターを着てRIMOWAのジュラルミンスーツケースを持って初出社しましたが、スーツケースの中には「月刊真木よう子」一冊と、ラッキーストライク1カートン(!)、ZIPPOライター、MacBookのみが入っており、土屋さんとかわした最初の会話は下記のようなものでした。

「高橋さんは吉祥寺に住んでるんすか」

「ええ、まあ、はい」

「高校ん時にオレのダチが、吉祥寺の丸井の裏で抗争で刺されたんですよ」

「………………………あのへんは病院なら産婦人科が近いですよね」

こうして、シンクライアント事業とオンラインメディア事業がひとつの事業体としてシナジー構築を図りながら、新しい会社として出発しました。

(ScanNetSecurity 発行人 高橋潤哉)

《高橋 潤哉( Junya Takahashi )》

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