社外調査チームからの中間調査報告書を受領、問題行為の認識後も12物件分を出荷(東洋ゴム) | ScanNetSecurity
2024.04.28(日)

社外調査チームからの中間調査報告書を受領、問題行為の認識後も12物件分を出荷(東洋ゴム)

東洋ゴム工業は、性能評価基準に不適合な免震ゴムを製造していた問題で、小林英明弁護士を代表とする社外調査チームから事実関係や原因についての中間調査報告書を受領したと発表した。

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東洋ゴム タイヤ技術センターに設置されている免震ゴム(資料画像)
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東洋ゴム工業は、性能評価基準に不適合な免震ゴムを製造していた問題で、小林英明弁護士を代表とする社外調査チームから事実関係や原因についての中間調査報告書を受領したと発表した。

社外調査チームは、関係者や免震ゴムに関する学識経験者など、延べ69人に事情聴取を行ったほか、関係資料や会議資料の分析・検証、計7人の業務用パソコンに保存されていた電子メール合計2万3000通を分析・精査した。兵庫事業所(明石工場)での現場検証も実施した。

中間報告によると、同社は、2002年6月17日から2011年10月25日までの間、免震ゴムで合計5回の国土交通大臣認定を取得したが、不正をしたとされる東洋ゴム化工品のA氏が、これら各認定の取得に際し、技術的根拠のない数値を記載して申請、大臣認定を取得するなどの問題行為があった。

具体的には、一部の規格の性能に関して振動数の差異を解消するための補正を名目として、技術的根拠なく算出した数値の記載や、振動試験を実際に実施せずに技術的根拠のない推定値を記載するなどして申請していた。

大臣認定の基準では、乖離値がプラス・マイナス20%とされているが、調査チームが最初に不適正な免震ゴムを使っていたことが発覚した55の物件を再検証したところ乖離の平均値は、高いもので50%を超えている。

A氏は、不正を働いた動機・背景について、直属の上司の監督が適正でなかったことや、製造部から納期に間に合わせることについてのプレッシャーを受けたことなどを指摘している。また、後任のB氏、C氏も、A氏からの引き継ぎを受けたのに加え、直属の上司の監督が適正でなかったことなどが、問題行為に及んだ一つの動機・背景であると述べている。今後の調査では、これらの供述の信用性を検証する予定。

問題行為が発覚したのは、2013年1月にA氏の異動でC氏が免震ゴムの性能検査を引き継ぎ、2013年夏ごろC氏が上司のE氏に免震ゴムの一部で実績値と性能検査の結果データが整合しないと報告した。その後、2014年2月にC氏らが東洋ゴム化工品の社長に、技術的根拠が不明な補正が行われていことや、大臣認定の基準を満たしていない免震ゴムが製造・販売されている可能性を報告。

その後、2014年5月にC氏は、親会社の東洋ゴム取締役・ダイバーテック事業本部長などに、性能検査で恣意的に大臣認定の基準に適合させていたと説明、2014年7月ごろから東洋ゴムによる社内調査が開始された。2014年8月に当時、専務執行役員だった東洋ゴムの山本社長も参加する会議で、不正な免震ゴムを納入した建物の影響は限定的で、東日本大震災でも具体的な問題は出ていないと報告された。

その後、法律事務所などへの相談を経て、出荷の停止と国土交通省への報告するのを決めたのは2015年2月に入ってから。

東洋ゴム化工品社長が問題行為の疑いを認識した2014年2月から、東洋ゴムが出荷停止を決めた2015年2月6日までの間、免震性能が大臣認定の性能評価基準に適合しない免震ゴムを合計12物件に対して出荷した。

原因については、免震ゴムを取り扱う技術者として規範遵守意識は著しく鈍磨し、求められる程度の規範遵守意識からかけ離れており、それを醸成する企業風土が東洋ゴムグループにあったとしている。

管理・監督機能の欠如や会社としてのリスク管理の不備、社内監査体制の不備なども指摘。また、経営陣には問題を認識した際、国土交通省への報告や公表、製品の出荷停止など、必要な措置を、適時・適切に実施する意識や判断に甘さがあったと指摘している。

調査チームでは今後、問題のあった免震ゴム以外についても調査の対象として継続する。

東洋ゴム、免震ゴム問題で社外調査チームが中間報告…問題認識からも2年間出荷を継続

《編集部@レスポンス》

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