Internet Week 2015 セキュリティセッション紹介 第6回「S11 仮想通貨の現状と可能性~技術・法律・制度~」についてJAIPAの宮内正久氏が語る
「潜在的な可能性が十分にあり、検討・研究を重ねるべきであるのに、国内ではネガティブな議論が先行されているように見えます。そこでこのセッションでは、きちんと技術・法律・制度を理解し分析したのちに、この可能性について議論してしていきたいと企画しました。」
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「Internet Week」は、毎年11月に、計40近くものセッションが会期中に行われる、年1度の非商用イベントだ。インターネットやその基盤技術に関するエンジニアを主な対象に、最新動向やチュートリアルがある。
- Internet Week 2015
https://internetweek.jp/
今回のテーマは「手を取り合って、垣根を越えて。」
昨今は、DDoSやサイバー攻撃、脆弱性の発覚といったセキュリティ問題が数多く起こり、それらが複雑、巧妙化・広範囲化している。こうした状況に立ち向かっていくために、インターネット上のレイヤーを超え、そして業界やコミュニティをまたがり、あるいは世代もまたがって、認識や目的を共通化して事に当たらないとなかなか解決しないことが増加している。
今回のInternet Weekでは、一つ一つのプログラムの中に、そういうメッセージを込めたいと、このテーマを設定したとのことだ。
連載で、このInternet Week 2015のセッションのうち、情報セキュリティに関するセッションの見どころ・意義・背景などを、セッションコーディネーターに語ってもらう。
6回目となる今回は、11月18日夕方に行われるプログラム「仮想通貨の現状と可能性~技術・法律・制度~」について、日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)の宮内正久氏に語っていただいた。
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――今回「仮想通貨の現状と可能性」ということですが、いわゆる電子マネーや、ショッピングにおけるオンライン決済は年々増えても、「仮想通貨」と言われてもまだピンと来ない人が多いように感じていますが。
そうですね。ビットコインに代表される仮想通貨は、日本においては普及する前から取引所の一つであるMt.Goxの破綻がクローズアップされたことに起因してか、まだまだ国内では利用実例は少ないのが現状です。しかし海外では日々利用実績も増え、さらにはビットコインの派生となる仮想通貨も出てきているんですよ。
またビットコインは、その開発思想の一つである中央管理型の管理でない、すなわち国家などが中央集権的に管理している通貨ではないという観点で、ギリシャ危機等、国家が危機的な状況になるたびに話題にはなっています。
潜在的な可能性が十分にあり、検討・研究を重ねるべきであるのに、国内ではネガティブな議論が先行されているように見えます。そこでこのセッションでは、きちんと技術・法律・制度を理解し分析したのちに、この可能性について議論してしていきたいと企画しました。
――「可能性」とのお話がありましたが、どのような可能性があるのでしょうか?
2020年に東京オリンピックがありますが、スマホなどのデバイスを使い、ビットコインのようなグローバルに使える仮想通貨で決済できるような環境ができれば、海外からの旅行者にとっては、空港に降り立っても両替やお金の事を心配することがなくなりますから、大変ありがたく感じられるのではないでしょうか。
また、先だって日本も加入するTPP(環太平洋経済連携協定)は大筋合意されましたが、TPPにより国際間取引も増えることでしょう。共通の通貨価値で取引でき、為替の影響を受けにくく、また手数料もほとんどかからないので、こうした仮想通貨に優位性はあります。
――なるほど、可能性はあるのに、研究や検討がされていないのは、損失であるとお考えなのですね?
そうです。
今回のセッションでは、ビットコインとその基盤技術であるブロックチェーンについて技術的に解説した後に、法律や制度についても考察していく建て付けとしています。今回のセッションは、国内トップの専門家にご登壇いただくことができました。技術だけにもよらないし、法律・制度だけにもよらない、また肯定でも否定でもない中立・学術の立場でお話をいただく予定です。
セールストークを排除した純粋な研究対象としての話から、見えてくるものも多いのではないでしょうか。こうした中立的なところから議論を深めていくことは、Internet Weekの場にも合っているように感じます。
特に、ビットコインの基盤技術であるブロックチェーンを利用・改良した仮想通貨以外の新たなサービス、例としては電子的な請求や契約展開などが挙げられますが、こうしたものも動き出してきています。このブロックチェーンを使った未来の可能性もディスカッションしたいですね。
――このお話をどのような方に聞いてもらい、共有したいですか?
インターネットの次に社会に劇的な変化をもたらす可能性のある技術であり、取り組みであるので、すべての方がある程度の知識を持つことが望ましいとは考えてはいるところです。
その中でも特に
・新規サービス企画担当者
・新規技術導入担当者、MoT (Management of Technology)担当者、技術マネジメント担当者
・法務担当者
・経営者、CIO (Chief Information Officer)
・財務会計担当者、CFO (Chief Financial Officer)
の皆さまには聞いてもらいたいですね。
――最後に、メッセージをお願いします。
我々が使っているこの「インターネット」も、国家という中央管理が限りなく少ない環境で成長してきたものです。当初は、安全性やその技術のゆるさに懐疑的な声もありましたが、今では世界中で使われています。
ビットコインのような仮想通貨の発生は、このインターネット時の発生時の状況と非常によく似ている、と言われています。
インターネットがよくぞここまで発展したという経験や感覚をもったインターネット関係者は、次に金融の中で起こるであろう、中央集権的管理とのせめぎ合いについてよく理解できるのではないでしょうか。そこで、既存システムからの主要な決済の離脱に向かうか、もしくは共存に至る道をたどるであろう仮想通貨を理解して相互の影響を考えることは、とても必要なことに思えます。
ぜひその第一歩として、まずは現状の仮想通貨に関わる基本と現状を理解し、問題点について解決し、未来に向かって進みましょう。多くの方の参加をお待ちしています。
●プログラム詳細
「S11 仮想通貨の現状と可能性~技術・法律・制度~」
- 開催日時:2015年11月18日(水)16:15~18:45
- 会場:富士ソフト アキバプラザ
- 料金:事前料金 5,500円/当日料金 8,000円
- https://internetweek.jp/program/s11/
16:15~17:00
1) 仮想通貨 bitcoinとblockchainの技術解説
山□ 重一郎(近畿大学産業理工学部情報学科教授)
17:00~17:30
2) 仮想通貨に関わる法律
高橋 郁夫(駒澤綜合法律事務所所長・弁護士)
17:30~18:00
3) 仮想通貨に関わる制度・現状
岡田 仁志(国立情報学研究所情報社会相関研究系 准教授)
18:00~18:45
4) 仮想通貨の未来、可能性についてパネルディスカッションと質疑応答
モデレーター
宮内 正久(一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA))
パネリスト
山□ 重一郎(近畿大学産業理工学部情報学科教授)
高橋 郁夫(駒澤綜合法律事務所所長・弁護士)
岡田 仁志(国立情報学研究所情報社会相関研究系 准教授)
※時間割、内容、講演者等につきましては、予告なく変更になる場合があります。
《ScanNetSecurity》
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