通勤・通学者と住民向けによって異なる「災害時退避場所」と「避難所」 | ScanNetSecurity
2024.04.28(日)

通勤・通学者と住民向けによって異なる「災害時退避場所」と「避難所」

 14日、16日と2度の大きな地震が襲い、今も余震が続く熊本県。その被害状況が連日報道される中、改めて地震や災害に対する“備え”の必要性を痛感せざるを得ない。

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東日本大震災の際に発生した徒歩帰宅者による混雑(撮影:防犯システム取材班)
東日本大震災の際に発生した徒歩帰宅者による混雑(撮影:防犯システム取材班) 全 4 枚 拡大写真
 14日、16日と2度の大きな地震が襲い、今も余震が続く熊本県。その被害状況が連日報道される中、改めて地震や災害に対する“備え”の必要性を痛感せざるを得ない。

 そんな中、多くの人がまず考えるのが自宅周辺の避難場所、避難所に関する情報収集だと思うが、意外と意識しないのが勤務先や通学先周辺の避難場所や避難所だ。

 今回の熊本地震を受けて、筆者も勤務先がある東京都千代田区周辺の避難場所や避難所に関する情報を調べてみた。


●避難場所が異なる通勤・通学者と住民

 そもそも自宅周辺の地域(神奈川県)では、至るところに避難場所や避難所を示す看板があり、普段生活している中で、それとなくどこに逃げるべきかを把握することができていたが、勤務先周辺では、そうした看板を見る機会があまりなく、災害時にどこに逃げるべきか気になっていた。

 まず調べたのが、千代田区の防災に関するWebサイト。そこで知ったのが、千代田区では、住民と通勤・通学者で避難すべき場所が別々だということ。

 住民向けには「避難所」に逃げることをすすめており、区内の学校や公共施設を指定、通勤・通学者に関しては「災害時退避場所」として、皇居周辺の北の丸公園や日比谷公園などが指定されていた。

 勤務先のある場所からすれば、「災害時退避場所」に向かうより「避難所」の方が圧倒的に近かった。人情としては、近くの場所に避難する方が安心だが、行政がこういう書き方をするなら、それなりの意図があるに違いない。

 そこで千代田区政策経営部災害対策・危機管理課に問い合わせをしたところ、下記のような回答が得られた。

「基本的に避難所に関しては、家の倒壊などで自宅に住むことができなくなった区民の方々の居住スペースとなる場所になり、災害時退避場所に関しては、主に帰宅困難者となる人に向けた場所だといえます。そのため災害時退避場所では、それなりの収容キャパシティーを備えていて、交通機関の運行状況を伝えたり、帰宅困難者向けの受け入れ施設の案内を行うので、通勤、通学で千代田区を使われる方はそちらに退避してもらうことをすすめています」

 つまり、筆者のように千代田区で働いている人間なら、大規模災害が発生し、勤務先があるビルの倒壊などの恐れが出た時には、「災害時退避場所」に向かうべきとなる。

 実際、千代田区に居住する人が47,115人(2014年12月国政調査調べ)に対して、東京都の調査によれば、千代田区で想定される帰宅困難者は約50万人にも登ると言われている。それほどの人数が、住民向けである「避難所」に殺到すれば混乱は必至。であれば、あらかじめ帰宅困難者の受入を想定している「災害時退避場所」に避難する方が、混乱は少ない。

 また、千代田区では、2003年(平成15年)2月10日より広域避難場所・一時集合場所が廃止となっている。これは東京都の調査により、千代田区は延焼火災の危険性が比較的少ないと認められたからだ。これに伴い、同区では地震発生後にすぐに避難するのではなく、自宅やビルに止まり、危険性を感じたときのみ「避難所」ないし「災害時退避場所」に避難することを推奨している。

 ちなみにその他の自治体では、震災時に想定される大規模火災に備えて、火災の影響を受けにくい場所を「広域避難場所」や「一時集合場所」に指定し、地震後、安全を確保した段階でそうした場所の避難をうながしていることが多いので、勤務先や通勤先の自治体が定める避難の流れを把握しておくと、いざという時に混乱が少ないだろう。

●最新状況を踏まえた避難想定を!

 今回は、筆者の勤務先のある千代田区で調べたが、自治体により対応は異なる。ただ、東京都であれば平成25年(2013年)4月から「東京都帰宅困難者対策条例」が施工されており、「むやみに移動を開始しない」を帰宅困難者に向けた基本原則として明記している。

 具体的には、都内の各事業者が建物の震災対策・安全確保を行った上で、3日分の水や食料などの備蓄し、従業員を止まらせることを求めており、被災後の帰宅に関しては、「災害状況と安全面を判断してから」が望ましいといえるだろう。

 そうしたことを踏まえた上で、自分自身が働いている時に被災したことを想定し、どういう避難行動をとるべきなのかを、今一度、最新の状況を踏まえて検討することをオススメする。

住民と通勤者で異なる避難場所……もしも会社で被災したら?

《防犯システム取材班/小菅篤@RBB TODAY》

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