日本がフェイクニュース大国に? - 書評「フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器」 | ScanNetSecurity
2020.10.21(水)

日本がフェイクニュース大国に? - 書評「フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器」

同書は、日本ではまだ充分な理解がされていないフェイクニュースを、国家の新しい軍事力行使形態「ハイブリッド戦」をキーワードにして、後半に調査分析し深く読み解いています。

調査・レポート・白書 ブックレビュー
「フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器」書影
「フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器」書影 全 1 枚 拡大写真
 本誌に「工藤伸治のセキュリティ事件簿」シリーズを連載し、サイバー犯罪を題材としたミステリ作家として知られる一田 和樹 氏の新しい著作「フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器」が 11 月に角川新書から上梓されました。

 同書は、日本ではまだ充分な理解がされていないフェイクニュースを、国家の新しい軍事力行使形態「ハイブリッド戦」をキーワードにして広範に調査分析し、深く読み解いています。

 今回、フェイクニュースに関する調査や執筆、情報発信活動で知られる耳塚 佳代 氏に「フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器」のブックレビューを寄稿いただきました。
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 「フェイクニュース」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか? 災害時に広がるデマ、「病気が治る食品」と謳う偽サイト、アクセス稼ぎ目的の扇情的な記事--。

 フェイクニュースという言葉は、さまざまな意味で使われるようになった。広く捉えれば、冒頭に挙げたものも確かに一例と言えるかもしれないが、それはごく限られた見方である。フェイクニュースを理解し、有効な対策を考えるには、まず新しい戦争の形である「ハイブリッド戦」を理解する必要がある、というのが本書の大きなテーマだ。

●ハイブリッド戦とは?

 2014年のクリミア侵攻を覚えているだろうか。
ウクライナで親ロシア政権が崩壊し、ロシアはウクライナ南部のクリミア半島に軍事介入した。全容は本書で詳しく述べられているが、この侵攻はハイブリッド戦が展開された典型例だった。

 ロシアは、単に兵士と武器を投入したのではない。並行してさまざまな攻撃を仕掛けた。例えば、ウクライナ国内の通信網を遮断し、サイバー攻撃で混乱を引き起こす。侵攻の数日前には、親 EU 派国会議員の携帯電話にメッセージや電話が殺到し、使用できなくなった。

 侵攻と前後して、ウクライナ国内には多数のフェイクニュースが流された。ソーシャルメディアを駆使した世論操作で人々を分断し、社会不安を煽る。「自主的」な形で分離独立を問う住民投票へと持ち込み、最終的にクリミアはロシアに編入した。しかしそれよりずっと以前から、ネット世論操作、メディアや政治家へのサイバー攻撃、経済的な依存度を高めるといった重層的な戦略で、「見えない支配」を強化していたのだという。

 武力行使だけでなく、政治、経済、情報、宗教から文化に至るまで、あらゆる手段を組み合わせて相手国を攻撃し、不安定化させる。これが現代の「ハイブリッド(混合)」戦だ。世論操作は、ハイブリッド戦の重要な「兵器」の一つであり、世論操作の効果的な手段としてフェイクニュースが利用されているのだ。世界では、フェイクニュースを国家安全保障上の脅威と捉えた議論や対策が行われているが、著者も触れているように、日本ではこうした視点で語られることが少ないように思う。

●一般ユーザーも「兵器化」

 本書を読み進めると、フェイクニュースがいかに「強力」かつ「効率的」な兵器なのかが理解できる。

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《耳塚 佳代》

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