#NoMoreFake 第6回「長期的武器」 | ScanNetSecurity
2021.05.13(木)

#NoMoreFake 第6回「長期的武器」

>> あらすじと主な登場人物 >> #NoMoreFake 第5回「情報格差が生まれるところ」

特集 フィクション
大和田紗希 作 / 一田和樹 監修 サイバーミステリ小説「#NoMoreFake」
大和田紗希 作 / 一田和樹 監修 サイバーミステリ小説「#NoMoreFake」 全 1 枚 拡大写真
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>> #NoMoreFake 第5回「情報格差が生まれるところ」


次の日、兄から連絡があり、大手アフィリエイト会社「アフィット」の社長に会えるようになった畠山さんと私は、仕事終わりに新宿にあるそのオフィスに向かった。

「初めまして。アフィットの村田と申します」

「初めまして。畠山と申します。この度はお忙しいなか、お時間を作っていただきありがとうございます」

村田社長と名刺交換をする畠山さんの隣で緊張しながら立っている私。

畠山さんの言葉に甘えて付いてきたはいいものの本当に来て良かったのかすこし不安になる。

社長さんに促され、ソファーに座る私たちに女性社員がお茶を持ってきてくれる。

「影山君とは、影山君が大学生の時からの付き合いでしてね。彼、頭がキレるから本当はわが社に入ってほしかったんですが、まだやりたいことがあるって断られてしまって。今でも月に一度は飲みに行って情報交換してるんですよ」

お茶目に笑いながらお茶を飲む村田社長は年齢よりも少し落ち着いて見えた。

「それで、フェイクニュースの件で何か相談したいことがあると聞いたんですが」

「はい。フェイクニュース撲滅運動を始めたいと 1 年前から準備しておりまして。御社にもご協力していただけないかとご相談に参りました」

畠山さんは印刷した企画書を村田社長に渡す。

「御社でも対策はされているかと思うのですが、金銭目的のフェイクニュースで自動型の広告を利用して稼いでいる人がまだ後を絶たない状態でして。影山さんのFAKExのサイトと協力して、フェイクニュース業者を特定して、広告収入を断たせることはできないかと考えています」

資料には細かくリサーチされたフェイクニュースの拡散の動向指数等が書かれていた。

「フェイクニュースの場合、突発的に閲覧数やクリック数があがるものが多く、トレンドにあるものに目を引くような嘘を加えて閲覧数を稼いでいます。事実を交えながら巧妙にフェイクを加えるので、専門家ですら知らず知らずのうちに嘘の情報を信じてしまいます」

「そうですね。ここ数年で、その類の相談は格段に増えてます。弊社も対策はしてるんですがなかなか全部というわけにも」

溜息を吐く村田社長にうなずく畠山さん。

「そうですよね。それで、各々が協力し合えば少しずつですが改善できると思うんです。短期的に見ればもぐらたたきのような状態でも、長期的に見れば信頼はすごく強力な武器になる。今からでも遅くないと思うんですよ」

「具体的に、何をしていくんです?」

早速切り出してくれた村田社長に畠山さんがおふくろさん食堂の記事を見せる。

「まず、今回この事件に注目しておりまして。今、この食堂のフェイクニュースが出回り始めて、ここ数日で 5 件新たに作成されています。多分まだこれからも出てくる可能性があるのでそこで突き止められればと。過去の記事になるとすでに広告が停止になっていたり、ドメインの権利がほかに移っている場合もあるので、今現在起こっているものの方が良いかなと。報道局等も巻き込んで話題にすれば、影山さんのFAKExの認知度も増えて事実を少しでも広められるようになると思うんです。今後は広告収入が急激に増えたサイトや記事をピックアップして、虚偽報道かどうかを確認、正しい記事と認定された記事だけをFAKExで紹介することで、事実を書いた記事の作成者に収入が入り、閲覧者も事実を見られる場所ができて、悪質なサイトに広告を出さなくてよくなるという仕組みにつなげていきたいと考えています」

畠山さんの言葉を聞く村田社長の顔も真剣そのものだ。

一つ一つの言葉にうなずいたあと口を開く村田社長。

「なるほど。確かに、協力していかないと難しくなってる。ただやっぱり金銭目的の三流企業も後を絶たない状態で、果たしてどれくらいうまくいくかですね。金銭目的だけじゃなくて、情報操作のために雇われているフェイクニュース業者もいるようですし」

「そうですね。まずは閲覧者の考え方を変えることも一歩かなと。見たもの、流れてきたものに捕らわれている、事実すらわからない人もほとんどで、いろんな情報の中で嫌気がさして考えたくないという気持ちにさせられている人も多数います。それも阻止するのも課題ですね」

「でも、影山君もそのサイトで収入を得るんでしょう?批判とか大丈夫ですかね?」

「基本的には、正しい働きに対して正しい賃金が発生することは当たり前だと思っています。日本人特有なのかもしれないのですが、どうしてもお金を稼ぐことに対してネガティブな意見が多いのも事実です。でも、僕はそこも変えていかないといけないと思っていて。いつの間にか、悪質なサイト作成者にお金が流れる仕組みを放置して、必死に良くしようとする人にお金が入ることを冷たい目で見るのは、どんどん負のスパイラルに陥ってる気がするんです」

「それを変えていくのは結構かかりそうですね」

うなずく畠山さん。やっぱりすぐに変えていくのは難しいのか。でも、またここで停滞していたら変わるものも何も変わらなくなってしまう。

>> #NoMoreFake 第7回「そこに仕組みがあるから」

大和田紗希 作 / 一田和樹 監修 サイバーミステリ小説「#NoMoreFake」

《大和田 紗希》

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