パネルディスカッション登壇事前メモ:我が国で高まるサイバー脅威インフルエンスオペレーション | ScanNetSecurity
2022.11.28(月)

パネルディスカッション登壇事前メモ:我が国で高まるサイバー脅威インフルエンスオペレーション

内容の密度の高さと先見性に、思わず編集員はそのとき食していた「カップヌードル 濃厚クリーミークラムチャウダー」を食べる箸が止まったということです。

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 来る9月20日(火)にオンラインで開催される、第2回明治大学サイバーセキュリティ研究所フォーラムにパネリストとして登壇する一田和樹氏に、当日の議論テーマなどについてコメントを求めたところ、ほんの二言三言のコメントを想定していた編集部のもとへ、テキストファイルが送付されました。

 ファイルを開くとそこには、註釈を含めれば3,000文字弱に及ぶ文字原稿があり、文字量はともかくとして、その内容の密度の高さと先見性に、思わず編集員はそのとき食していた「カップヌードル 濃厚クリーミークラムチャウダー」を食べる箸が止まったということです。

 「抜粋して使ってくれていい」という一田氏の希望でしたが、全文を配信すべき義務を感じ、下記に掲載します。とりわけ(今後一般用語化するかどうかは別として)「 GOAM( Group of Old American Map )」「GNWM(Group of New World Maps)」というふたつの言葉が印象的です。

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 (9月20日のパネルディスカッションでは)「情報圏」という視点でインフルエンスオペレーションについてお話する予定である。ただし、まだ事前の調整など行っていないので、内容が変更になる可能性もあるので、あらかじめご承知おきいただきたい。ただ、いずれにしても近い内容にはなると思う(希望的観測)。

 今回は主としてサイバー空間の構造についてご紹介する。サイバー空間を戦闘領域として考えた場合、そこで行われる活動はサイバー攻撃と影響工作の2つに分けられる。このふたつは連動しており、完全に切り離して考えることは難しい(注1)。

 この領域で活動するアクターは「行政機関や軍などの政府」「政府のプロキシ」「民間企業」「大学などの研究機関やシンクタンク」「国際規範&標準化組織」「犯罪組織」「著名人」「過激派コミュニティ」「政党や思想団体」「NPO」「ハクティビスト」「ボランティア」「国連などの国際機関」(注2)。SNSプラットフォームや、ネット世論操作代行企業、表社会の脆弱性ブローカーは民間企業(裏社会の脆弱性ブローカーやイニシャルアクセスブローカーは犯罪組織と定義)に含まれる。

 現在、この空間は民主主義を標榜する主流派(とみなされている/自称している)と、それ以外のグループに分かれている。前者にはグローバルノースの主流派が含まれ、後者にはグローバルノースの非主流派とグローバルサウスのほとんどが含まれる。このふたつに適切な名称は存在しないが、仮に GOAM( Group of Old American Map )と、GNWM(Group of New World Maps)と名付ける。

※編集部註「グローバルノース:主に欧米諸国など北半球に偏って存在する富裕な国家群」

 GOAM( Group of Old American Map )はアメリカでいえば、民主党を始めとするこれまでの民主主義的価値感を重視しているアクターが含まれる。著名人、国際大手メディアなどはこちらだ。

 GNWM(Group of New World Maps)は、政府でいえば中国とロシア、それ以外にはアメリカの過激派である「 QAnon 」「プラウド・ボーイズ」、権威主義国のグローバルサウス諸国(つまり地球上の国家のほとんど全て)が含まれる。

 崩壊の危機感を抱く GOAM は、ことあるごとに結束を確認しており、共同歩調を取ることが多い。一方、GNWM は一枚岩ではなく結束を確認することもないが、GOAM への不信感を共有している。国家としてはアノクラシーあるいは権威主義国が多く、国家でないグローバルノースの過激派は、陰謀論や白人至上主義者が多いため、GOAM の理念とは相容れない。

※編集部註「アノクラシー:民主主義と独裁主義等の中間形態」

 GOAM は人口や経済力で劣勢に立たされている。アメリカを例にとれば、民間企業や研究機関、著名人などが優位を保っているくらいである。しかし、アメリカが優位に立っているものの多くは、アメリカ以外の国からの利用も可能という「非対称性の罠」がある。たとえばアメリカの SNS プラットフォーム各社は中国企業と覇権を争っているが、中露がアメリカの SNS プラットフォームを利用して影響工作を行うことが可能だし、実際に QAnon やプラウド・ボーイズは活発に利用している。同様にアメリカの PR 会社、脆弱性ブローカー、著名人の一部も GNWM から利用可能となっている。この「非対称性の罠」によって、 GOAM の優位性の多くは無効になっている。

 GOAM と GNWM 視点で見ると、さまざまな分断が生まれている。ウクライナ侵攻を例に取ると、GOAM は国際大手メディアや国際的な著名人が中心となってウクライナを支持し、ロシアを批判した。一方、GNWM の多くは明確な意思表示を避け、一部の国々はロシアを支持しウクライナを批判した(注3)。

 こうしたことを背景に20世紀側のグループである GOAM と、21世紀側のグループである GNWM の非対称性、4つの災厄、今後の課題についてお話しする予定である。

●注一覧
注1
・ランド研究所の2つのレポートが示すロシアにおける情報対立の概念(一田和樹、https://note.com/ichi_twnovel/n/n29cd24644753
・Defending Ukraine: Early Lessons from the Cyber War(マイクロソフト、https://blogs.microsoft.com/on-the-issues/2022/06/22/defending-ukraine-early-lessons-from-the-cyber-war/

注2
・National Cyber Power Index 2020(ハーバード大学ベルファーセンター、https://www.belfercenter.org/publication/national-cyber-power-index-2020
・The Breakout Scale: Measuring the impact of influence operations(ベンニモ、https://www.brookings.edu/research/the-breakout-scale-measuring-the-impact-of-influence-operations/
・なぜ、ロシアが情報戦で負けたと誤解したのか(一田和樹、https://note.com/ichi_twnovel/n/n7f4d704ff739

注3
・ウクライナ侵攻と情報戦(一田和樹、扶桑社)
・世界の分断への処方箋はあるか ウクライナ危機で世界はどう変わるのか(神保謙、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
・The Russia-Ukraine Information War Has More Fronts Than You Think(Jill GoldenzielContributor、https://www.forbes.com/sites/jillgoldenziel/2022/03/31/the-russia-ukraine-information-war-has-more-fronts-than-you-think/
・Defending Ukraine: Early Lessons from the Cyber War(マイクロソフト、https://blogs.microsoft.com/on-the-issues/2022/06/22/defending-ukraine-early-lessons-from-the-cyber-war/)

《一田 和樹》

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