Non State Actor 図鑑(6)ニセ情報拡散に貢献「ファクトチェック機関」 | ScanNetSecurity
2026.05.06(水)

Non State Actor 図鑑(6)ニセ情報拡散に貢献「ファクトチェック機関」

 グーグルや Meta は誤・偽情報にも気を遣っているという姿勢を示したいが、誤・偽情報は大事な収益源でもあるので、ほんとうに効果のあることは何としてもやりたくない。その答えがファクトチェックに関する「研究」への資金助成である。ファクトチェック団体の運営資金の一部はグーグルや Meta が誤・偽情報の流通を通じて得た金なのだ。

特集 コラム
Non State Actor 図鑑(6)ニセ情報拡散に貢献「ファクトチェック機関」
Non State Actor 図鑑(6)ニセ情報拡散に貢献「ファクトチェック機関」 全 3 枚 拡大写真

 世界はこれまで国家(State)が中心的なアクターとなることで動いてきた。今でも多くのことは国家を単位に語られることが多い。しかし近年それ以外のアクター = 非国家アクター(Non State Actor)の重要性が増してきた。もっとも注目されている非国家アクターはいわゆる GAFAM などのビッグテックで、それ以外にも数多くの非国家アクターがいる。本連載では、こうしたまだ知られていない非国家アクターを取り上げて/よく知られている非国家アクターの知られていない面を取りあげてご紹介してゆきたい。

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 ファクトチェックという言葉は誤・偽情報の盛り上がりとともに認知されるようになってきた。しかし、必ずしもその定義や目的は共有されていない。多くのファクトチェック団体は民間の NPO であることが多く、特定分野の専門家や研究者がそろっているわけでもない。また、国民によって選ばれているわけでもない。

 なぜ、素人が上から目線で「これは事実ではない」などと断定しているのだろうか?

●個人に向かえば「チェック」ではなく個人攻撃

 「上から目線」と書いたのはあくまで個人的な感覚だが、そのように感じる人も少なくないだろう。少なくともファクトチェックの結果は「異を唱える」というよりは、「断定している」ように見える。結果をはっきりわかるようにラベルをつけて見せているのも一因だ。

 来歴がよくわからないので齟齬が生まれることもある。能登半島地震の後、被災地でボランティア活動をしている方が現地での危機感をつぶやいたものを、日本ファクトチェックセンター(以下、JFC )がファクトチェックした。JFC は世界有数の資金を持つファクトチェック団体であり、日本でもっとも注目されている団体でもある。

 ファクトチェックされたのはあくまで個人的な発言であり、大きな社会的影響を与えるほど話題になっているかどうかは明らかではないのだが、ファクトチェックされたことでその方の被災地でのボランティア活動が妨げられたり、誹謗中傷に遭う可能性があった。

 公人でもない個人に対するファクトチェックは、文字通りの個人攻撃なのでやられる方にとっては脅威であり恐怖だ。「ファクトチェックという暴力」に書かれているように、そもそもファクトチェックの対象にするようなことだったのだろうか?

能登半島地震で「5月14日から珠洲市で弁当なくなる」?【ファクトチェック】
https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/disasters/inaccurate-noto-earthquake-meals/

ファクトチェックという暴力|はむた@捏造報道と闘う会
https://note.com/koyagi_village/n/n04d6a3cff15d

 一般人の発言がとりあげられて、さらされ、「不正確」「誤り」などと断定されるのは、付帯して発生する可能性のある発言者への誹謗中傷および物理的な攻撃を考えると言論抑制と言われても仕方がない。この問題の推移を追うとファクトチェックというものがいかに混迷を深めているかよくわかる。

JFCファクトチェック記事炎上の経緯|はむた@捏造報道と闘う会
https://note.com/koyagi_village/n/n27cd7f5cf022#61e496c3-941a-42e1-9575-d6c0d61d3b81

 ここで紹介されている当事者と関係者の意見や主張を拝読すると、理念と原則は定められているもののファクトチェックの手法にはさまざまなものがあるし、論理的・科学的・定量的な尺度や枠組みが厳密に設定され、管理されているわけではないことがわかる。そして、ファクトチェックの対象の選定については論理的・科学的・定量的な基準は提示されていない。つまり恣意的だ。

●そもそもファクトチェックとはなんなのか?

 そこで、ファクトチェックとはなにか? という疑問が出てくる。ここで出てくるのが「真実の裁定者」問題だ。「事実」「真実」を決めるのは誰かという問題である。民主主義国家において国民にかかわることを決定できるのは、法もしくは国民からの付託を受けた組織か個人しかないので、ファクトチェック団体は「真実の裁定者」ではなく、あくまでもひとつの意見を提示しているだけという位置づけと考えるのが妥当だ。ひらたく言うと、誤・偽情報と同じレベルの「ひとつの意見」にすぎない。どちらかを選ぶのは受け取る国民の判断だ。だったらえらそうに言うなよ、と思うのは当然だ。

 権威主義国では政府機関による誤・偽情報の監視がある。ロシアのフェイクニュース法や中国のインターネット安全法など、フェイクニュースを規制する法律の多くが権威主義国で成立しており、フェイクニュース対策に名を借りた検閲や言論統制になっている。

 こちらも名目上は誤った情報への対処ということになっているが、民主主義国から見ると言論の抑圧になる。ただし現在世界は権威主義国の方が多いので、多数をもって標準とするなら政府機関によって言論を抑圧する方がグローバル・スタンダードということになる。だから日本政府が進めている政府主導のファクトチェックはきわめてグローバル・スタンダードに則ったものとなっていると言える。

 ことほど左様にファクトチェックの内容や意味は国よって異なってくるし、前項で書いたようにファクトチェック団体によっても異なる。おそらく統一されることはないだろう。

 ひとつだけ言えることがある。

 現在行われているファクトチェックのほとんどは効果よりもマイナスの副作用の方が大きい。やればやるほど事態は悪化する。

 そもそもファクトチェックの誤・偽情報対策としての効果はほとんど検証されていない。その一方でマイナスの副作用は最近研究が進んでいる。

10の誤・偽情報対策の有効性、3 がファクトチェック(出展 Countering Disinformation Effectively: An Evidence-Based Policy Guide)

《一田 和樹》

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