CSIRT支援室 第38回 DEF CON CTF Finalsとは? 世界最高峰と呼ばれるハッキング競技の決勝戦 | ScanNetSecurity
2026.09.28(月)

CSIRT支援室 第38回 DEF CON CTF Finalsとは? 世界最高峰と呼ばれるハッキング競技の決勝戦

 DEF CON CTF Finalsとは、世界最大級のセキュリティカンファレンス「DEF CON」で 1996 年から開催されている、世界最高峰と呼ばれるハッキング競技会(CTF)の決勝戦です。2026 年 8月、この決勝戦で、当社のエンジニアが参加する国際合同チーム Blue Water が世界1位となりました。本記事では、DEF CON CTFとはどのような大会なのか、なぜ世界最高峰と呼ばれるのか、そして日本のエンジニアたちがどう挑んできたのかを解説します。

脆弱性と脅威 脅威動向
CSIRT支援室 第38回 DEF CON CTF Finalsとは? 世界最高峰と呼ばれるハッキング競技の決勝戦
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 CTF(Capture The Flag)は、システムに隠された「フラグ」と呼ばれる文字列を、脆弱性の発見や解析の技術を駆使して取得し、得点を競うセキュリティ競技です。世界中で大小さまざまな大会が開かれていますが、その中で最も長い歴史を持つ大会のひとつが、DEF CON の CTF です。

 第1回は 1996年。以来 30年にわたり、セキュリティコミュニティの有志団体が数年ごとに運営を引き継ぎながら続いてきました(DEF CON 公式サイトより)。運営が変わるたびに競技の設計も進化し、その年ごとの出題は、セキュリティ技術の最先端を映す鏡とも言われます。

● 予選と決勝の仕組み

 決勝の舞台に立てるのは、世界でわずか 10 ~ 30 チームです(年により変動)。

 2026年の DEF CON 34では、5月に開かれた 48時間のオンライン予選に世界中から 686 チームが参加し、上位 12 チームだけが 8月のラスベガスでの決勝に進みました(海外報道より)。予選の通過率は約 1.7%。さらに、DEF CON 予選以外の主要な国際 CTF で優勝したチームにも出場権が与えられる年があり、決勝の椅子は世界中の大会の頂点たちで埋まります。

 決勝は現地で 3日間にわたって行われ、チームは会場に集まって戦います。

● 決勝の競技形式「攻防戦」とは

 決勝の中心となるのは「攻防戦(Attack & Defense)」と呼ばれる形式です。

 各チームには、脆弱性を含む同じサーバー環境が与えられます。チームは、他チームのサーバーの脆弱性を見つけて攻撃し、フラグを取得して運営に提出することで得点します。同時に、自分たちのサーバーの脆弱性を修正して防御しなければ、他チームから一方的に得点を奪われ続けます。

 つまり、脆弱性を「見つける速さ」「攻撃する技術」「守る技術」のすべてが同時に問われる形式です。ひとつでも見られていない問題があれば、その分だけ攻撃され続ける。出題は多数にのぼるため、限られた人数のチームには構造的に不利な、総力戦の舞台です。

● なぜ「世界最高峰」と呼ばれるのか

 理由は大きく 3つあります。

 第一に、歴史と権威です。30年にわたって世界のトップハッカーが目標にし続けてきた大会であり、その優勝は競技セキュリティにおける最高の栄誉のひとつとされています。

 第二に、予選の規模と難易度です。前述のとおり、700チーム近くから 12チームしか残れません。しかも参加するのは、各国の大会を勝ち抜いてきた精鋭たちです。

 第三に、決勝常連チームのレベルです。決勝の上位は、世界ランキング上位の強豪たちがさらに連合を組んだ「オールスターチーム」で占められます。そしてここに、この大会のもうひとつの面白さがあります。

● 技術力の、その先。勝敗を分ける「人を集める力」

 DEF CON 決勝の面白さは、ある逆説にあります。世界最高峰の技術の大会でありながら、頂点に立つために最後に問われるのは、通常の CTF とは異なり、技術力ではありません。

 技術力の高さは、決勝ではもはや前提条件です。全チームが世界の予選を勝ち抜いた精鋭だからです。

 そのうえで勝敗を分けるのが、チームの規模と采配です。攻防戦は総力戦であり、見られていない問題はただ攻撃され続けます。100人以上で参加するチームも存在する世界で優勝を争うには、国の垣根を越えて腕利きを集める「ネットワーキングの力」と、集めた精鋭を機能させる「マネジメントの力」が不可欠になります。世界ランキング(CTFtime)上位の強豪チーム同士が、決勝のために統合と連合を繰り返してきた歴史が、それを物語っています。有志がこの統合の系譜を図にまとめた資料が公開されているほど、合従連衡は当たり前の光景です(参考:GitHub「ctf_clusters」)。

 腕一本の世界というイメージに、もうひとつの顔が加わります。DEF CON 決勝は、世界最高レベルの技術者たちによる組織戦でもあるのです。

 当社のエンジニアが参加する Blue Water も、複数の強豪チームが合流して生まれた国際合同チームです。

● 当社エンジニアたちの挑戦の歴史

 当社のエンジニアたちも、この舞台に 20年にわたって挑み続けてきました。日本からの挑戦の歴史の、ひとつの系譜です。

 のちに当社に加わるひとりのエンジニアが予選に挑み始めた 2006年当時、決勝は遠い存在でした。2011年に日本チーム sutegoma2 が決勝に初出場。2013年には決勝 6位という、当時の日本チーム最高位を記録します。2014年には、日本の複数の強豪チームが連合した混成チーム binja が決勝に出場。その後もこの系譜は統合と連合を重ねながら挑戦を続け、2026年、日本のエンジニアが中心的に関わる国際合同チーム Blue Water が、ついに世界1位に到達しました。

 この20年の物語は、挑戦した当事者たちのインタビュー記事で詳しく紹介しています。
 インタビュー記事:魚の骨が、抜けた日。DEF CON CTF 世界一までの20年

● AI は CTF をどう変えるのか

 2026年の決勝は、CTF の歴史の転換点になったと見られています。生成 AI が人間の補助なしで問題を解く「プレイヤー」として機能するようになり、チームの人数不足という長年の構造的な壁が崩れ始めたのです。

「後から振り返ったとき、この辺りで本当に AI が主になったよね、と言われる出来事になっている。」小池悠生(当社 CTO)

 一方で、攻撃の意思決定や、AI が苦手とするタスクの采配など、人間にしか担えない役割も明確になりました。AI と人間の役割分担の実際は、インタビュー記事で当事者が詳しく語っています。

● まとめ

  DEF CON CTF Finals は、30年の歴史を持ち、世界中の精鋭が連合を組んで頂点を争う、世界最高峰と呼ばれるハッキング競技の決勝戦です。そこで問われる「脆弱性を見つけ、攻め、守る」総合力は、当社が日々のセキュリティサービスで提供している技術力の源泉のひとつでもあります。

 当社は、この舞台で培われた知見を、セキュリティに特化した AI 基盤「AI ホワイトハッカー byGMO」の育成へと注いでいます。

《GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社》

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