利用者から見た電子自治体、電子政府(7) 〜受付システム その1
●受付システムとは 情報提供システムに比べるとずっと複雑
特集
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今まで、電子自治体、電子政府から利用者への情報提供を主に述べてきた。利用者が、電子自治体、電子政府に対して、何らかの申請を出して、それを自治体、政府が受け付けることについて、これから、2回にわけて述べてゆく。
受付システムは、情報提供システムに比べると格段に難しくなり、論点は多岐にわたる。例えば、図書館の検索システムに、予約システムがついたとしよう。そうすると、まず本人認証の問題が生じる。図書館カードの番号をいれるだけで本人認証するのはまずいだろう。図書館カードの番号は、カード上に書いてあるので、拾った人が簡単に図書を予約することができる。これではまずいので、IDは図書館カードの番号としても、なんらか本人確認ののちパスワード発行の手続きがいる。
また、インターネット上で予約をした場合には、通常の本の貸し出し業務と競合が起こる。例えば、予約カウンターまで、本を持ってきてまさに借りようとしている人がいるとしよう。その本が、貸し出すまさに直前にインターネット上の予約がされて借りられなくなったとしたら、図書館に足を運んだ人にとっては、非常に腹立たしい状況ではないだろうか?
単なる情報提供システムと異なり、受け付けてなんらかの効果を発生するシステムは、様々な課題が発生して、複雑になり、システム構築コストも情報提供システムとくらべると高価になる。そして、セキュリティ上も各種の問題が発生する。利用者が入力するデータに不正があった場合に、内部のデータがとられるような場合があるからだ。特に個人情報が関連する情報に関して、セキュリティ上の不備があり流出するようでは問題である。そういったセキュリティ上の問題をすべてきちんと対応するのはかなり高度なソフトウェア開発技術が必要になる。
いままで、この連載で、電子自治体、電子政府の議論の中で、受付システムをあまり扱ってこなかったのは、そういったわけで費用対効果の点からよくないからだ。そして、システム構築のコストが高いだけなら、まだましである。
受付システムの電子化は、利用者にとってかなり不便をしいる場合が現時点ではあるといわざるを得ない。電子申請システムでは、通常の紙ベースの書類申請で使う印鑑に相当する電子署名アプリケーションを使うが、パソコンや他のアプリケーションとの相性があり、動かないことがしばしばである。
特に困るのが複数の電子署名アプリケーションを利用する場合だ。電子署名のアプリケーションどうしの相性がわるく、同じパソコンの中に電子署名アプリケーションを一つしかインストールすることができず、電子申請するパソコンを電子署名のアプリケーションの数だけ必要とすることすらある。その申請が紙ベースでの申請をできるなら、現時点でここまで苦労して利用しようとは思わない場合がまだ多いのではないだろうか? 業務用の電子申請でやらざるを得ない場合なら、パソコンを何台もそろえて対応することがあるだろう。しかし、個人がインターネット上で利用する場合には、ほんの少しでも不便があったら使わないだろう。
●受付システムにはどんな種類があるのか
電子自治体、電子政府が提供する受付システムにはどんなものがあるのだろう。一般的には電子申請、電子納税、電子投票などが代表的なものとされている。しかし、受付システムという観点からゆけば、図書や施設の予約も含まれるだろうし、さらに意見を求めるアンケートも受付システムの守備範囲といえる。
通常、予約やアンケートは、電子自治体、電子政府の議論の中ではそれほど重視されない、特にアンケートなどは重視されていないと言える。しかし、産業振興や観光振興の立場からいえば、アンケートの集計結果は重要だろう。例えば、外国人観光客が喜んだ観光地のアンケートを観光案内している人からとって、集計するのは、関係各方面に役立つ情報だろう。もちろん、そういった情報をつくるのが、どこまで公共機関の守備範囲かは、議論が分かれるところだろう。しかし、単なる統計情報から一歩踏み込んだ調査は、白書の情報公開の延長線上として、重要な情報インフラになるのではないだろうか? ただ、今回は、まず、電子申請、電子納税、電子投票に関してのべて、調査やアンケートそして予約に関しては、次回にまわす。
【執筆:武井明】
(この記事には続きがあります。続きはScan本誌をご覧ください)
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