住民基本台帳ネットワークと個人情報の保護■第1回■
●住基ネット訴訟判決
特集
特集
5月30日、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)は個人のプライバシーを侵害している等として、国・石川県・地方自治情報センターを相手に、住基ネットからの離脱(自己の個人情報の削除)等を求めていた訴えに対する判決が金沢地裁であった。一方、同月31日、名古屋地裁では、同種の訴えに対して請求棄却の判決があった。
被告側は、住基ネット構築の目的が住民の便益と行政事務の効率化にあり、原告らの個人的な利益よりも優先すると主張していたが、金沢地判は、氏名・生年月日・性別・住所などの個人情報もプライバシーの権利の一環としての自己情報コントロール権の対象となると認定したうえで、行政コストの回避は原告のプライバシー権に優先するとは認められないとして、原告の請求を認容し、当該個人情報の住基ネットからの削除を認めた。
一方、名古屋地判は、住基ネットの目的は行政手続における本人確認用であり、プライバシーの権利を容易に侵害できるようなシステムではないとするとともに、個人の氏名・生年月日・性別・住所は、以前から誰でも閲覧できる情報であり、秘匿される必要性が高いとは言えないとして、原告の請求を棄却した。
●住民基本台帳法と個人情報
住基ネットで利用可能な住民基本台帳登録事項のうち氏名・生年月日・性別・住所は、現行住民基本台帳法上、何人でも市町村長に請求して閲覧することが許されており、誰でも取得することができる個人情報となっている(11条1項)。
個人情報の保護に関しては、本年4月から個人情報保護法が、民間の事業者を対象に全面施行されたが、元々は市町村長の手中にある住民基本台帳と戸籍(委任された国の事務)に記載された個人情報の保護を求める運動として、20年以上も前から展開されてきたものである。
本来、住民基本台帳上の個人情報の保護を求めて起こされたものであったが、立法過程で、その内容が大幅に変えられ、最終的には、民間の事業者の取扱う個人情報だけが規制されるものとなってしまった一方、住民基本台帳法は改正されることなく、そのままとなっている。
結果的に、民間事業者の取扱う個人情報は厳しく規制される反面、本来、求められた住民基本台帳記載の個人情報については、開放されたままとなっており、誰でも自由に取得することができるものとなっているのである。住民基本台帳の写しの閲覧に関しては、住基ネットとは別に、最近、ようやく問題視されるようになった。
【東京基督教大学教授 櫻井圀郎】
──
この記事には続きがあります。
全文はScan Security Management本誌をご覧ください。
http://www.ns-research.jp/cgi-bin/ct/p.cgi?ssm01_ssmd
《ScanNetSecurity》