Webと連携するセキュリティサービスの可能性 (2)〜ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ | ScanNetSecurity
2024.04.29(月)

Webと連携するセキュリティサービスの可能性 (2)〜ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ

トレンドマイクロの総合セキュリティソフト「ウイルスバスター」は、1991年の販売開始から今年で15周年を迎え、9月下旬には「ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ」が発売されたばかりだ。
今回のバージョンアップでは、まず機能面で、同社スパイウェ

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トレンドマイクロの総合セキュリティソフト「ウイルスバスター」は、1991年の販売開始から今年で15周年を迎え、9月下旬には「ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ」が発売されたばかりだ。
今回のバージョンアップでは、まず機能面で、同社スパイウェア対策専用ソフト「スパイバスター2006」との統合が図られた。また1ライセンスで最大3台のパソコンにインストールできる新しいライセンス体系が導入されたことも大きな注目を集めた。
以上二項目に加え、「トレンド フレックス セキュリティ」というオンラインサービスを立ち上げ、同ソフトのユーザでなくても利用可能なオンラインスキャンやソフトウェアキーボードを、また、同ソフトのユーザには、リモートファイルロック機能など様々なセキュリティサービスを提供している。これにより、Webサイトからもセキュリティサービスを提供することでソフトを補完するという、質的に新しい商品コンセプトを打ち出している。

トレンド フレックス セキュリティ
http://trendflexsecurity.jp/

今回SCAN編集部では、トレンドマイクロ株式会社 プロダクトマーケティングマネージャ 田中淳一氏を取材し、トレンド フレックス セキュリティの今後の可能性について話を聞いた。

────
>>リモートロック機能

SCAN:トレンド フレックス セキュリティは、ウイルスバスターのユーザだけが利用できるサービスなのですか。

田中:誰でも無料で使えるコンテンツも多数含まれています。たとえば、自社製作のセキュリティニュースである「セキュリティNOW」、また、無料で使えるツールとして、ウイルスやスパイウェアの検出と削除を行う「オンラインスキャン(以前から無償提供していたものを強化)」、スパイウェアの侵入や活動をリアルタイムで監視したり、ソフトウェアキーボードを提供する「セキュリティウオッチャー」などがあります。

ウイルスバスターのライセンスを受けたユーザだけが使える、いわば有料コンテンツとしては「リモートファイルロック(11月中旬リリース予定)」があります。これは、機密性の高いファイルやフォルダをデスクトップにある「リモートファイルロック」フォルダ内に暗号化して保存・管理する機能で、通常インターネットに接続された環境では、暗号化を意識せずに利用できますが、ネットから切断された環境では、リモートファイルロックフォルダにはパスワードロックがかかります。また、万一コンピュータを紛失・盗難された場合は、すぐにトレンド フレックス セキュリティにログインして、リモートファイルロックフォルダにロックをかければ、重要ファイルを保護することができます。

SCAN:携帯電話のリモートロック機能と同様ですね。

>>いかに初心者ユーザの敷居を下げるか

田中:また、初心者向けに、より質の高いサポートを提供するため、専用のチャットサポートツールとリモートサポートツールを提供します。専用のリモートサポートツールでは、ユーザのパソコン画面をサポート担当者が閲覧することができます。口頭で不具合の説明が難しい初心者ユーザのトラブル解決を目的としています。

SCAN:ユーザのPCを閲覧してしまうという、だいぶ思い切ったサービスだと思いますが、ユーザの希望から企画されたものなのでしょうか。

田中:弊社で実施した調査によれば、トラブルが起こった場合の対応の順番は、まず最初に自分で試行錯誤をして、その後パソコンに詳しい友人に相談する、という結果でした。友人に相談してもダメな場合に限り、そこではじめてメーカーの電話サポートに電話するという順番だそうです。サポートへの相談は、最後の選択肢であるという特徴的な結果が出ました。ユーザにとってサポートへの相談は「できればやりたくない行為」という敷居の高いものであるという実態が明らかになりました。

これにはいくつか理由があるようです。一つは、電話がつながらないことで、自分の時間が浪費されること、もうひとつの理由は、自分が困っている状況をうまく説明できるか自信がない、または、サポート担当者の説明が理解できないのではないかというコミュニケーションの問題。そして、最後は、これはきわめて日本的な考え方だと思うのですが、そもそもトラブルが起こったのが、自分が何か誤った悪い操作をした結果であって、それをサポート担当者に指摘されてしまうのではないかという不安があるようです。そういうサポートの壁をいかに下げてあげるか、気軽に相談してもらえるようにするか、そこから発想したツールが、このチャットサポートとリモートサポートなのです。

>>Webサービスとしての提供は新機軸となるか

SCAN:トレンド フレックス セキュリティになったことで、パッケージを流通網に載せて店頭で販売する従来の商品と比べて、何か、売り方や戦略が変わることはありますか?

田中:オンラインサービスの「トレンド フレックス セキュリティ」は、現時点では、あくまでもソフトである「ウイルスバスター」を補完するものであるため、基本的に従来の販売の延長であり、マーケティングや販売戦略が変わることはありません。但し、トレンド フレックス セキュリティとは別に、ISP経由で月額課金でウイルスバスターを提供する販売形態や、ダウンロード販売も行っており、いずれもチャネルの多角化の一環です。

SCAN:収益性の違いはありますか?

田中:月額とダウンロード販売とパッケージで比較すると、箱やマニュアル代、流通コストが減らせる分、収益性は改善されます。ネット経由で提供するものは全般、収益性は高いですね。

SCAN:今後、パッケージを店頭に並べる流通モデルではなく、オンライン販売や、Webサービスでの提供形態にシフトしていく可能性はありますか?

田中:以前と比べるとオンラインの役割は重要になりつつありますが、依然として、販売流通網の存在は大切なものです。日本では、全国津々浦々まで販売流通網が存在していますし、購入されるユーザ様も日頃の生活圏のなかに購入できるお店があるという環境がすでにできています。また、年齢の高い方を中心に、店頭でパッケージ版を購入したいというニーズが存在しています。

SCAN:「パッケージ販売」「ISP経由で月額課金」「ダウンロード販売」それぞれの売上比率と伸び率を教えて下さい。

IR上、具体的な数字は申し上げられませんが、まだまだ半数以上がパッケージ販売で依然売上の主力です。しかし、ISP経由の月額課金や、ダウンロード販売は好評で、伸び率としては高くなっています。

SCAN:セキュリティサービスの販売方法が店頭でのパッケージ売りに依存すると、安全対策がエンドユーザに依存することになります。最も脅威を受けやすい初心者ユーザは、実は自分で安全を守るという意識が一番低いという逆説的な状況があり、「トレンド フレックス セキュリティ」のように、ソフトウェアやWebを複合させて、総合的なセキュリティを提供するニーズは今後高まっていくと思います。

トレンド フレックス セキュリティ
http://trendflexsecurity.jp/

【取材・文:田坂啓輔/SCAN編集部】

《ScanNetSecurity》

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