日本の情報セキュリティ機関の現状−警察庁 情報技術犯罪対策課 (1) | ScanNetSecurity
2024.04.27(土)

日本の情報セキュリティ機関の現状−警察庁 情報技術犯罪対策課 (1)

ITインフラの普及とインターネットに蔓延する脅威の深刻化によって、単に情報システムのみならず、教育や法律、政策とも連携した、情報セキュリティへの官民一体となった取り組みが必要とされている。本企画では、官公庁や財団法人、公共性の高い企業の研究所等のうち、

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ITインフラの普及とインターネットに蔓延する脅威の深刻化によって、単に情報システムのみならず、教育や法律、政策とも連携した、情報セキュリティへの官民一体となった取り組みが必要とされている。本企画では、官公庁や財団法人、公共性の高い企業の研究所等のうち、セキュリティに特化した組織や部署を横断的に取材、連載記事として、広く企業のセキュリティ担当者向けに、それぞれのセキュリティ機関の役割をわかりやすく紹介します。

今回は、警察庁 生活安全局情報技術犯罪対策課 理事官の河原 淳平氏に、情報セキュリティ機関としての警察庁の役割についてお伺いした。

警察庁
http://www.npa.go.jp/
警察庁 サイバー犯罪対策
http://www.npa.go.jp/cyber/

警察庁 生活安全局 情報技術犯罪対策課 理事官 河原 淳平 氏

>>2004年、情報技術犯罪対策課を新設

警察庁では平成9年以降、サイバー犯罪対策を的確に推進するための体制強化を進めてきています。そのころから電子商取引などの金銭を介する取引が普及し始めたことにより、そのような社会インフラの安全確保を担当する組織が警察庁にも必要になってきたのです。具体的には、平成9年4月に生活安全局生 活安全企画課 セキュリティシステム対策室を新設した後、平成11年4月に各都道府県警察のサイバー犯罪捜査に対する技術的な支援部隊として情報通信局に情報技術解析課を新設し、その技術的中核として同課に警察庁技術センターを開設しました。

その後、さらなるインターネットの普及に伴い犯罪が広域化、組織化し、被害が複数の都道府県にまたがることも珍しくなくなりました。そのため、捜査と抑止対策とを一体化して推進する部隊が必要になってきました。こういった経緯から、警察庁 生活安全局に情報技術犯罪対策課ができたのが、平成16年4月になります。同課の設置以降、合同捜査本部の設置も増え、各都道府県間の調整が円滑に進んでいます。


>>サイバー犯罪は捜査だけではなく、抑止の観点も重要

ブロードバンド回線の普及により、インターネットは広大な空間に成長しました。警察庁が抱える昨今の大きな課題として、限られた捜査員の数で、広大なインターネット上の犯罪にどのように対応するかということが挙げられます。

また、これまで実社会で起こっていた誹謗中傷や侮辱、いじめなどの人間模様がインターネット上にも持ち込まれ、さらにインターネットの力を得てエスカレートしています。こういった事案は、被疑者を検挙したからといって問題が解決されるわけではありません。情報の削除の方が必要な場合も数多くあります。その一方で、掲示板などへの書き込みの削除は、警察から強制できるものではなく、ISPや掲示板運営者などの任意の協力によります。場合によっては、民事訴訟などを起こさざるを得ないこともあります。

このような状況にかんがみると、捜査だけではなく抑止の観点からのアプローチが重要であることが見えてきます。警察庁では、抑止の観点からさまざまな取り組みを実施しています。


>>インターネットカフェなどにおける匿名性の問題

いつでもどこでもインターネットを利用しやすくなるなど、インターネットの利便性はますます向上しています。一方、それは不特定の者にインターネットに接続できる環境を提供する施設が増えるわけですから、犯罪に利用されやすくなるという側面もあります。

誰がどの端末を使用したかを確認していないようなインターネットカフェを利用してのサイバー犯罪では、実際の使用者が判明せず、検挙が困難になることもありました。その問題の解消に向けてインターネットカフェの業界団体に対して、利用者の本人確認の実施について自主的な取組みを依頼したところです。


>>摘発した違法サイトの跡地に警告サイトを設置

児童ポルノやわいせつ画像の公然陳列等で摘発・閉鎖された違法サイトのURLにアクセスすると、警察が用意した警告文が表示されるという試みも始めました。例えば、「このサイトの管理者は、わいせつ図画陳列罪で逮捕されました。このようなサイトを利用することは、犯罪の助長につながりますので、利用しないようにして下さい。 」といった文章を、サイトを管理しているISPや運営業者などの理解・協力等を得ながら掲載するのです。そのサイトを見た人が違法性を認識してくれればと期待しています。


>>警察官が違法コンテンツを購入して確認

違法コピーしたDVDを販売しているように見えるサイトがあっても、実際に違法コピーされたものかどうかを判断する必要があります。そこで、警察官が実際に商品を購入して、その真偽を確かめるという、いわゆる買い受け捜査を推進しています。こういった取り組みは、人知れずやっているわけではなく、警察がインターネット空間にも目を配っているということを広く知らしめて違法な取引への警鐘を鳴らしたいのです。これも抑止の観点からの対策といえます。


>>Webサイトから違法・有害情報について通報可能なホットラインセンター

インターネット上には、児童ポルノ画像や、規制薬物の販売サイトなど、違法な情報が氾濫しています。こういったものを一般のインターネット利用者が見かけたときに、通報していただける受付窓口として、平成18年6月から民間機関によるインターネット・ホットラインセンターの運用を開始しています。

通報を受け付けた内容について違法であると判断されたものについて、警察庁へ通報するとともにISPや掲示板管理者などへの削除を依頼する仕組みです。また、有害情報だと判断された場合も、ISPや掲示板管理者などへ削除を依頼します。

警察庁
http://www.npa.go.jp/
警察庁 サイバー犯罪対策
http://www.npa.go.jp/cyber/
警察庁セキュリティポータルサイト@police
http://www.cyberpolice.go.jp/
インターネット・ホットラインセンター
http://www.internethotline.jp/
インターネット安全・安心相談
http://www.cybersafety.go.jp/
都道府県警察本部のサイバー犯罪に関する相談窓口
http://www.npa.go.jp/cyber/soudan.htm

【取材・執筆:株式会社トライコーダ 上野 宣(http://www.tricorder.jp/)】

《ScanNetSecurity》

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