海外における個人情報流出事件とその対応 第194回 米大手石油会社の元社員が極秘情報を不正入手 (1)増加する元従業員による情報漏えい
1月6日付で、米国の大手石油会社、Occidental Petroleum Corporationで情報漏えい事件があったことが、バーモント州の検事総長に通知された。通知を行ったのは、同社を代理した弁護士事務所で、極秘情報を元従業員が個人のe-mailアドレス宛に送付していたというものだ
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通知によると、12月11日に、元従業員が以前Occidentalに勤務していた社員の氏名、住所、生年月日、従業員認識番号、入社日、退社日、社会番号をリストにしたスプレッドシートを、不正に個人のものとしていたことを確認したという。Occidentalはニューヨーク証券取引所に上場している石油やガスの探査・生産を行う会社で、本社はロサンゼルスにある。
事件が発覚してすぐに、Occidentalは弁護士事務所に連絡して、弁護士事務所から12月12日に財務省検察局と、事件が起こったオクラホマの検察局に通知している。続いて15日には情報を不正に入手した元従業員に対して、返還を求める訴訟を起こした。23日に行われた公聴会でこの元従業員は、情報は誤って入手したもので、悪用していないと証言している。
裁判所が情報の返還命令を行い、情報が削除されていることを確認するため、Occidentalが元従業員のコンピュータとe-mailアカウントにアクセスすることを認めた。検察局に通知した時点で、Occidentalは事実確認のためにフォレンジック調査を行っているところだった。バーモント州の検事総長への情報漏えいの通知は、元従業員が不正に入手したデータを確認して、被害者の中に同州在住者がいたためだ。
Occidentalは、情報を使用したり、公開していないことを元従業員に裁判所で宣誓供述させている。そして、実際に情報は不正使用、公開されていないという考えだ。
情報漏えいの被害者への通知も迅速に行われた。情報の不正使用はないと考えられるが、金融機関の口座の動きや信用報告書を監視して、警戒をしておくことが被害者にとって大切だと説明している。さらに口座の不正使用があった場合、すぐに探知できるよう、ExperianのTriple AlertSMを被害者には無料で提供している。
Triple AlertSMは情報の不正使用を確認するために、
・信用報告書を毎日監視
・信用報告で大きな変更があると、すぐにe-mailで警告を行う
・不正や個人情報盗難の被害者となったとき、不正解決のため、"Fraud Resolution Team"が詳細にわたり手助けを行う
というものだ。また2万5,000ドル分の個人情報盗難保険も用意した。
被害者は90日以内にTriple AlertSMの利用を有効にすることができる。また、このサービスは1年間有効だ。Occidentalの事件への対応は迅速、かつ丁寧だったと言えるだろう。
●政府援助法人でも元従業員による情報漏えい
元従業員による情報漏えい事件は他にもある。1月29日付の『The Examiner』によると、Fannie Maeを解雇された契約社員が、ネットワークにウイルスを仕掛けたと伝えている。この社員はインド国籍のRajendrasinh Makwanaで、解雇されるまでの3年間、Fannie Maeでコンピュータ技師として勤務していた。
Fannie MaeはFNMA(Federal National Mortgage Association)で、日本語名、連邦住宅抵当公庫だ。野村證券のホームページでは、「GSE(政府援助法人)で、民間金融機関から直接住宅ローン債権を買い取り、それをもとにして単純なパススルー証券や、パススルー証券を裏付け証券として発行されるモーゲージ証券の発行・保証を行っている」となっている。米国最大の住宅ローンの組織だ。
Makwanaが勤務していたのは、ウルバナのデータセンターで、Fannie Maeのワシントンにある本部から約35マイル離れていた。解雇されたのが、10月24日で、Makwanaは、1月31日付で実行されるマルウェアをサーバに隠していたという。
『The Examiner』の報道では、このマルウェアが実行されていれば、Fannie Maeのサーバ内にある全てのデータを破壊して、変更してしまうこととなったようだ。また、最低でも1週間は業務ができなくなったほか、被害額は数百万ドルにのぼったと見られている。
幸いにも、"偶然"他のITスタッフが10月29日に隠されたマルウェアを見つけたことで事なきを得た。しかし、Makwanaが1月31日付でなく…
【執筆:バンクーバー新報 西川桂子】
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