工藤伸治のセキュリティ事件簿 第9回
※本稿はフィクションです。実在の団体・事件とは関係がありません※
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葛城はすぐに電話をかけて了解を取ってくれた。この辺は意外と柔軟、迅速に動いてくれる。思ったより、いい客になるかもしれない。オレはちょっとうれしくなった。
「これから、あんたとは携帯メールを使って連絡をとる。あんたんとこのシステムなんか怖くて使えねえ」
「はい」
「みんなが部屋から出て行ったら、内部監視ツールをセットアップする。ついでに盗聴されてないか調べてみるよ。あんた、一時間くらいシステム部の連中をどっかに連れ出してくれないか? 会議とかなんとか理由つけてさ」
「それは、なんとかします。ただ、全員は無理です。最低、ひとりか、ふたりは残さないと業務が回りません」
「わかった。それでいいよ」
「では、そうですね。一時間後に会議を行うようにします」
葛城はそう言うと、出て行った。
会議が始まってがらんとしたシステム部の部屋にオレは移動した。葛城の野郎が気を利かせたのか、システム部に残っていたのは二人の女だった。汗かきの男のでぶが残ってたら、オレはやる気をなくしていただろう。
三十歳半ばのくたびれてるけど、私まだがんばれます、といった感じの女と、二十歳代半ばの無表情なメガネ女だった(註)。メガネ女は化粧っ気もなく、ファッションも適当にユニクロで売ってるものを買いました、という感じなのだが、大きな胸が目立つ。オレは、こういうアンバランスなのに弱いんだ。
メガネ女を口説いて大きなおっぱいを揉んでる自分を想像しつつ、葛城のパソコンを通して監視ツールをインストールしていった。その一方でオレのノートパソコンを社内ネットワークに接続して、解析を行った。
オレが、妄想の中でメガネ女のスカートをまくり上げてむっちりした太腿に手を這わせた時、目の前にコーヒーが置かれた。我に返ると、いつの間にか、私まだがんばれます女が、愛想笑いを浮かべて立っていた。
「コーヒーをどうぞ」
「ああ、どうも」
間近に見るとぽっちゃりした顔つきで、肉厚な唇がいやらしい。こういうのもいいなあ、と思ってから、単にオレは欲求不満がたまってるだけなんだと気がついた。子供の頃、親に拾い食いをしてはいけません、と言われたことを思い出した。
【註解】筆者だけが感じていることかもしれないが、システム部には変わった人が多いような気がする。それも社会不適応っぽい方々をお見かけすることが少なくないような気がする。「変わり者会社員大集合」みたいなイメージが強い。その中にあっては、「私まだがんばれます女」などは、全然ましな方だ。
【執筆:才式】
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