工藤伸治のセキュリティ事件簿 第11回
※本稿はフィクションです。実在の団体・事件とは関係がありません※
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そろそろ作業が終わろうとする頃、なにやら気配を感じてオレは振り返った。
和田が立っていた。目があった。
「私の番はまだですか?」
和田は黒のセルフレームの眼鏡ごしにオレをじっと見ている。こいつ、なにを言ってるんだ?
「なに?」
オレは訊き返した。
「さっき、遠山さんとお話ししてたでしょ? だから、次は私の番かなあ?」
わからねえ、なに言ってんだ、こいつ。
「すみませーん」
遠山がやってきた。和田が不思議そうな目で遠山を見る。
「この子、ちょっと不思議ちゃんなんですよ。ごめんなさい。普通にしてる時は、普通なんですけどね。なんか、勘違いするとおかしなことを言い出すんです」
不思議ちゃんってそろそろ年齢制限いっぱいじゃねえの? とオレは言いそうになったが、止めておいた。和田は、遠山とオレの顔を交互に見ると、突然、ひとりでうなずきだした。
「そっか、わかりました。あははは、私、また勘違いしちゃった」
そう言って笑う。その笑顔は屈託がなくてかわいい。それに、柔らかそうな胸が揺れるのも気になる。スカートからのぞくむっちりした太腿もいい感じだ。
「いつでも呼んでください」
和田はそう言うと自分の席に戻っていった。なにを言ってるんだ? それとも、これは新手の逆ナンなのか? オレは、なんか説明してくれ、という思いを目に込めて遠山を見た。
「気にしないでください。和田ちゃんのことは、誰もよくわからないんです。相手にしない方がいいと思いますよ」
理解できないものには、タッチするなということか、君子危うきに近寄らずだな。オレは遠山のアドバイスに従って、気にせず作業を続けた。しかし和田の胸と太腿がちらついて、脳に回るべき血液がオレの下半身に回ってしまったことは否定できない事実だった。
【註解】不思議ちゃんというのは、どこにでも棲息している。一見無害そうに見えるが、そうではないことに注意が必要だ。一定年齢を超えた不思議ちゃんは、自分がどのように見られており、どこまで許されるかを理解している。逆に言えば、不思議ちゃんを隠れ蓑にして通常は問題視される行動をとったりしているのである。注意を怠ってはならない、特にむっちりした不思議ちゃんには。
【執筆:才式】
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