工藤伸治のセキュリティ事件簿 第14回
※本稿はフィクションです。実在の団体・事件とは関係がありません※
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オレは上機嫌で会議室を出た。葛城の野郎は残って、IDとパスワード再発行の作業計画を立ててる。
オレが鼻歌を歌いながら会社のビルのロビーに出ると、和田が通りかかった。そういえばこいつもメールを盗聴してたんだよな。
「あ」和田はオレを見ると声を上げた。こいつ、意外と目が大きい。結構かわいいかもしれない。オレは、さっき妄想の中で触った太腿を見た。むっちりとした太腿は黒いストッキングに覆われている。きれいな細い脚じゃないとこが余計にいやらしい感じがする。
「こんちは」
オレが挨拶すると、和田は顔を赤くしてうつむいた。わからない。なんで恥ずかしがってるんだ。と思っていると、和田はちょこちょことオレに近づいてきた。
「和田です」
和田は上目遣いでオレを見ながら、小さな声でささやくように言った。なんでまた自分の名前を言ってるんだか、よくわからなかったけど、声はちょっと色っぽい。
「オレ、工藤」
「知ってます。遠山さんと話をしてました」
ああ、ちゃんと憶えてるんだ。じゃあ、なぜまた自分の名前を言ったんだ。でも、近くで見ると、この子の肌はきれいだ。化粧してないのに、ちゃんと見られるというのは、実はかなりいいんじゃないだろうか。それに、くどいようだが、胸が大きい。
「よかったらゴハン食べない?」
オレは下半身に突き動かされてそう言っていた。すると和田は、くすくすと笑い出した。なんで笑ってるんだろう。
「…いいですよ。私、もう仕事終わりなんです」
やった。今日のオレはついてる。このままメシをおごって、それから酒でも呑ませてやっちゃおう。
一瞬、クライアントの社員、それも容疑者に手を出すとマズイんじゃないかという気がしたが、そんなことは知ったことじゃない。仕事よりも、やらせてくれる巨乳の方が出現確率が低い。どちらを優先すべきかは明白だ。容疑者のひとりというのが、気になるが、まあ、これも一種の内偵だ。
【註解】
もちろん、依頼元の企業のOLと食事に行くなどというのは、現実にはありえない。いや、あるかもしれないが、ごく少数だろう。「特命係長只野仁」の世界である。とはいえ、日本のセキュリティコンサルタントは、あまり足で稼ぐ調査、特に人を対象としたものはやらない傾向があるような気がする。借金や交友関係をチェックするだけでだいぶいろいろなことがわかってくる。興信所に頼めば一発だ。などというと、人権やプライバシーの問題がありそうな気がするが、サイバー犯罪者に対抗するためには、ある程度非合法な調査活動は不可欠ではないかと考えるのである。スパイウェアを被疑者のパソコンに仕込むくらいやっていいと思う。え? 極論ですか?
【執筆:才式】
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