工藤伸治のセキュリティ事件簿 第17回
※本稿はフィクションです。実在の団体・事件とは関係がありません※
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「全員の身体検査をした方がいいと思うんだ」
オレは言った。
「なにか健康上の問題が発生する可能性があるんですか?」
葛城の答えを聞いたオレは、まじまじとその顔を見た。本気で言ったのか、冗談なのか、判断できなかったからだ。どうやら、本気のようだった。身体検査の意味もわからないなんてどこまで抜けてるんだ。
「身体検査ってのは、身辺調査のことだよ。借金がないかとか、ヤクザとつきあってないかとか、麻薬やってないかとか、そういうことを調べるんだ」
オレが言うと、葛城はあかさまにいやな顔をした。
「工藤さん、それは人権問題になります」
なにを気取ったことを言ってるんだ。オレは怒鳴りつけたくなるのを我慢した。システム屋にはこういう世間知らずの甘ちゃんが多い。だから、オレも商売できるんだ。
「わかった。じゃあ、なにも言わずにオレのコンサル料金を百万円上乗せしてくれ。そしたら、明日にでもオレはこの会議室に、身体検査の結果を独り言を言う。もちろん、あんたからはなにも依頼を受けていないし、あんたにその結果を教えるつもりなんかない。ただ、独り言を言うだけだ。もしかして調査レポートも置き忘れるかもな」
ああ、めんどくせえ。
「工藤さんも、うちの部下をご覧になったでしょう。身体検査にひっかかるようなことはありません」
葛城は部下を疑われてむっとしているようだった。自分だって内部犯行説を唱えてたクセに、多重債務やヤクザやクスリとなると拒否反応を起こしやがる。
「あんた、多重債務者の知り合いいるか?」
「いえ」
「ヤクザの女に知り合いいるか?」
「いえ」
「じゃあ、そんなこと言うな。あんたに見分けなんかつくはずがない。あんたにそんな眼力があったら、とっくに自分で犯人を見つけてるだろ」
それからオレは、いかに見分けるのが難しいかをくどくどと葛城に説明してやった。葛城は、特に怪しい者に限定しての身体検査を了解してくれた。
「できるだけ明日にはわかるようにする」
オレは頭の中で誰に調査を頼むか考えながら言った。
「どうやって調べるんですか?」
葛城が聞いた。
【執筆:才式】
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