[特集予告] 一田和樹訪日対談
「サイバーテロ 漂流少女」などの、サイバー犯罪をテーマとしたミステリ小説で知られるカナダ在住の小説家 一田和樹氏が5月末に来日し、次回作構想のために、国内の情報セキュリティのプロフェッショナルや、先端研究者6名と、対談を行いました。
おしらせ
編集部からのおしらせ
同行取材した当誌は、許可を得た対談の模様を、記事として本日7月18日配信の有料版Scan木曜号から配信開始しました。
一田和樹氏は、対談予定者全員に、下記の対談趣意書を事前送付しました。
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各位
下記の3つの仮説について、ご専門家としてのご意見、お考えをお聞きしたく存じます。
1.仮説についての意見、感想
2.貴方のお立場
a)サイバーセキュリティ専門家としてどの立場をとるか
b)所属する企業はどの立場をとるべきか
c)業界団体はどの立場をとるべきか
[仮説1] 三極構造の世界
今後の世界は、第一勢力=政府、第二勢力=多国籍企業、第三勢力=市民の三極構造となる。三極構造で重要な役割を演じるのは、サイバーセキュリティ。個人についてもっとも多くの情報を持っているのは多国籍企業。これを武器に世界規模で事業拡大し、その結果各国政府との摩擦が深刻化している。回避策のひとつには、宇宙に本社を置く、自分で国を作る、いまあるどこかの国を支配下に置くなどがある。
政府は、表裏でサイバー戦争態勢とサイバー監視環境を整えつつある。サイバーセキュリティ専門企業の一部は、政府を相手に商売を開始。元諜報機関の人間が経営陣にいる企業や政府や軍部との取引中心の企業も増加する見込み。そもそも政府というか国家は暴力装置と通貨を独占できなくなりつつあるので基盤崩壊の危機に瀕しているので必死。
通貨と暴力装置を独占できなくなった国家は崩壊するのかな?(考え中のネタ)
http://kichida.tumblr.com/post/47973906478/bitcoin
市民の対抗策は、自らもサイバーセキュリティについての知識を持ち、暗号化、匿名化などによって過剰な監視や市民の商品化に対抗する。ネット社会で生きる以上、この三つの勢力のどれかに所属することになる。特に立場を表明しないのは、消極的に所属していることになる。
[仮説2] コードライティングが市民の必須技能に
コードを書き、理解できるものが重要な役割を果たすことになる。原子力や医療など専門分野では、そこに関わる法律家、ジャーナリスト、評論家、活動家にも専門知識が必要になる。
サイバーセキュリティでも同様。コードを自分自身で書けることが求められるようになる。例えば市民活動では文章を書くのと同じくらいに必要になる。コードがわからないと正しく内容を理解し、影響を把握できないため、法律家、ジャーナリスト、評論家、活動家には必須となる。ただし十分条件ではなく、コードが書けてもその影響力を理解できるとは限らない。あくまで最低限必要な素養。また、これにはコードを書くこと自体が簡単になる環境の実現も含まれる(もうなっているような気もします)。
[仮説3] コードジャーナリズムの到来
仮説1、仮説2の変化とともに、自らコードを書ける人間がレポートするコードジャーナリズムの重要性が増大。その役割は二つ。
1)コードの内容と影響力を理解したうえで、レポートを書き、発表する
2)サイバーセキュリティ専門家や政府の発表を批判的に分析、レポートする
とくに後者の役割の重要性が増加する。「サイバーセキュリティ専門家がニュースを作り社会に影響を与える時代」においては、その内容を批判的に吟味できるジャーナリストが求められる。サイバーセキュリティ専門家の言うことをうのみしてそのままニュースにすることがOKだとかなりやばい。
サイバーセキュリティ専門家がニュースを作る時代(考えている途中)
http://kichida.tumblr.com/post/47924619923
一田和樹
《ScanNetSecurity》