ドローンとクラウドサービスを組み合わせた新しいBtoB事業を開始(ソニーモバイル、ZMP) | ScanNetSecurity
2025.12.21(日)

ドローンとクラウドサービスを組み合わせた新しいBtoB事業を開始(ソニーモバイル、ZMP)

ソニーモバイルとZMPによる合弁会社として設立されたエアロセンス株式会社が、同社のドローンとクラウドサービスを組み合わせた新しいBtoB事業に関する記者説明会を開催した。

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ソニーモバイルの十時氏(左)とZMPの谷口氏(右)
ソニーモバイルの十時氏(左)とZMPの谷口氏(右) 全 10 枚 拡大写真
 3日にソニーモバイルとZMPによる合弁会社として設立されたエアロセンス株式会社が、同社のドローンとクラウドサービスを組み合わせた新しいBtoB事業に関する記者説明会を開催した。

 エアロセンスはソニーモバイルとZMPのそれぞれの強みを活かしながら、自立型の無人航空機(UAV)とクラウドサービスを活用した、より効率的なモニタリングや測量管理、物流などBtoB向けのサービスを中心に提供する会社だ。

 ソニーモバイルは母体であるソニーのデジタルイメージングやセンシングの技術、通信ネットワークとロボット分野でのノウハウを持ち寄り、ZMPが培ってきたドローンを中心としたロボット技術、自動運転や産業分野でのビジネスの経験値との融合を図る。

 今後は建設や物流、農林水産などの現場を中心に、人々の暮らしを支える基幹産業をUAVによってサポート、発展させるためのビジネスを提案していく。具体的な企業向け商品のメニューは2016年前半に揃える予定だという。新しく設立されたエアロセンスへの出資比率は、ソニーモバイルが50.005%、ZMPが49.995%の構成になる。

 本日の記者会見にはソニーモバイルコミュニケーションズから代表取締役社長兼CEOの十時裕樹氏が出席し、エアロセンスが発足された経緯を説明した。

「ZMPとの出会いは2014年に遡る。秋にソニーのR&D部門でドローンを研究しているチームを引き合わせて共同研究の話がまとまり、ZMP社内にソニーの開発チームが常駐。そこから共同開発・研究が始まった。2015年3月にはソニー製の超高感度CMOSイメージセンサーを搭載したステレオビジョンシステム『RoboVision2』が受注を開始した。そして8月にエアロセンスを設立。ソニーモバイルはこれまでスマホを主力にビジネスを展開してきたが、これからの時代はスマホだけでは成長が望めない。新規事業を積極的に取り組んでいくための一環としてZMPとのジョイントベンチャーにチャレンジした。エアロセンスのビジネスモデルは当初BtoBが中心になると思うが、さまざまなソリューションを求めている方に新たな付加価値を提供することが当社の役割。ZMPの自動運転やロボット、産業ビジネスの経験が役立つだろうし、ソニーモバイルはカメラ、センシング、ネットワーク通信、クラウドサービスの経験を融合した新たなサービスが作り出せると期待している。またクラウドに蓄積したデータを活用するために、コンサルタントビジネスへ拡大できるとも期待している」(十時氏)

 さらに「今回のジョイントベンチャーを成長に結び付けるために最も大事なのはベンチャースピリット」であるとしながら、「私たちもZMPから良い刺激を受けている。ベンチャースピリットを事業につなげていくことが素晴らしい財産になるだろう。エアロセンスはスタートしたばかりだが、ソニーモバイルとして事業の開始から成長に向けて積極的にバックアップ、支援していきたい」と抱負を語った。

 エアロセンスの事業内容については、現ZMPの社長であり、新会社エアロセンスの社長を兼務する谷口恒氏が壇上で説明を行った。

 ZMPはこれまで家庭用の自律活動ロボットや自動車の自動運転をコア技術として磨き上げてきた会社だ。培ってきたノウハウは、鉱山建設、農業機械の現場で採用されてきたほか、荷物の運搬に用いる台車にロボット技術を組み込んだ製品「キャリロ」を開発した実績もある。また関連会社ではロボットタクシー車のサービスを提供するなどロボット技術を中心に事業の幅を広げてきた。「これらはすべて陸上のソリューションだったが、エアロセンスを通じて空へとフィールドを広げられることが楽しみだ。ソニーとZMPが単体ではできなかったことを、ジョイントベンチャーになってかなえていきたい」と谷口氏は意気込む。

 同社では産業用UAVの活用をBtoB向けを中心に提案。ハードウェアとソフトウェアの両方を手掛けられることが同社の強みであり、共通のワークフローをプラットフォーム化してさまざまな領域に拡げていく。

 一例としては自律飛行型のUAVを飛ばして建築現場の模様を計測。得たデータをそのまま高速にクラウドへアップロードしながら解析を加え、顧客にとって価値あるデータのかたちに整えて提供するという、一括したソリューションを実現したいと谷口氏はビジョンを語る。

 UAVやドローンに関連するビジネスには、国内・海外の先行事業者があり、エアロセンスは先行するライバルを追いかける立場になる。谷口氏は、エアロセンスならではの強みは「自律型ロボット」の開発ノウハウにあると強調する。

「フライトパスを自動生成し、自動での離着陸や飛行が可能だ。高精細な写真を自動で撮影することもできる。これらはすべて当社がユニークな競争力としてアピールできる部分になると自負している。さらに環境認識技術により、GPSが届かないところでも認識できる技術を開発していきたい」(谷口氏)

 本日の記者会見ではエアロセンスが開発を進めるマルチコプター型UAVの試作機も発表。製品の特徴はエアロセンス 取締役CTOの佐部浩太郎氏が説明を担当した。

 佐部氏は、エアロセンスがUAVを開発する際に重視する3つのポイントを紹介。飛行操作は人間が操縦するタイプではなく、機械が自律飛行しながら、撮影も全て自動でできる製品を目指す。そのメリットについては「ヒューマンエラーによる事故が高い確率で防げるようになる安全性の向上と、操縦のために人が係る手間や時間が不要になるコストパフォーマンスの高さ」であると指摘する。

 さらに撮影された画像など、UAVを飛ばして得たデータの活用提案についても独自の知見を加えながら自動化し、使いやすさを高めていくことが大事とした。また3つめのポイントとして、ソニーとZMP両社の技術資産を活用していくことの視点を挙げた。

 現在開発を進めるマルチコプター型のUAVは、GPSレシーバーによる自律飛行を実現。あらかじめソフトウェアからプログラミングしておいた飛行経路に合わせて移動範囲を決めて安全に飛ばすことができる。ボディの底部には、下向きにカメラが装着されている。

 こちらはソニーがコンシューマー向けに発売する“レンズスタイルカメラ”「DSC-QX30」がそのまま装着されている。本体には高性能CPUが内蔵され、上空から撮影した画像をリアルタイムで処理。UAVが自身の位置を把握しながら飛べるようになる。

 撮影した画像データは近接無線技術の「TransferJet」をベースにカメラからPCへ高速転送ができ、そのまま画像編集ソフトで加工したり、クラウドにアップロードもできる。UAV本体には無線通信の切断、バッテリー低下、設定領域外の飛行を検知すると自動帰還する「Fail Safe」機能も搭載されるという。

 佐部氏はUAVの活用が見込まれる具体例として、土木の砕石管理場で30m上空から撮影しながら3Dモデルをつくって現場の状態をリアルタイムにチェックしたり、現場の臨場感が把握できる3Dモデルの作成などを挙げる。ほかにも水田の上を低空飛行しながら稲の生育状況や病害の発生をチェックするなど、農業ICTの高度化にも役割を果たせるとしながら期待を寄せた。

 将来に向けて垂直離着陸機の試作も進められており、本日の記者会見ではその試作機も披露された。本体には二重反転型のプロペラを2基搭載。姿勢制御ファンは3基を備える構成だ。飛行速度は時速170kmにも及び、2時間以上の飛行時間を実現。最大積載量は10kg。壇上では試作機による試験飛行の動画も紹介され、同社の技術力の高さをアピールした。

 こうした自律飛行型のUAVを中心としたビジネスを実現していくうえで、課題となるポイントについてエアロセンス社長の谷口氏はこう語った。

「UAVが100%落ちない、事故がないとは言いきれないので、どこまで精度を上げて安全面を担保していけるかが課題になるだろう。現在のところ明確な基準もないため、業界団体や専門家と協議しながらルール作りにも力を入れていく必要がある。ただ、当面は建設現場など私有地の中で、一般の人々がいないところを飛ばすイメージでの活用を提案していくことになるので、大きな問題は起きないはず。でも、当然ながらGPSやセンシングのエラーで私有地の中を飛び出さないように安全性を確保するための技術は今後も磨きをかけていく。実績を積み重ねて信頼を得ながら、活用提案の範囲を広げていきたい」(谷口氏)

ソニーの技術を活かしたドローンが誕生へ……ZMPと新会社エアロセンス設立

《山本 敦@RBB TODAY》

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