最強のバイリンガルエンジニア集団が開く、グローバルセキュリティエキスパートの東南アジア進出 | ScanNetSecurity
2024.03.29(金)

最強のバイリンガルエンジニア集団が開く、グローバルセキュリティエキスパートの東南アジア進出

株式会社EPコンサルティングサービスで取締役兼ITソリューション事業部 事業部長をこれまで務め、4月からGSXにジョインした吉見主税(よしみ ちから)氏に、GSXと融合する意義と、これからの展開について話を聞いた。

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グローバルセキュリティエキスパート株式会社 取締役 吉見 主税 氏
グローバルセキュリティエキスパート株式会社 取締役 吉見 主税 氏 全 1 枚 拡大写真
 グローバルセキュリティエキスパート株式会社( GSX )は、ホワイトハッカーによる脆弱性診断、セキュリティコンサルティング、メール訓練、インシデント緊急対応などの事業を展開し、近年は「サイバーセキュリティ教育カンパニー」をコーポレートアイデンティティに掲げ、教育研修を軸とした事業展開を行ってきた。

 同社最大の特長はサービス提供の対象を「中堅・中小企業」と「地方企業」に明確に絞っている点だ。これまで大手セキュリティ企業によって顧みられることがなかった領域で、積極的に挑戦を行い業績を伸ばしている。

 2017年から提供開始したセキュリティエンジニア養成講座 EC-Council 公式トレーニングは、ユーザー企業内にセキュリティ担当者を養成することで、セキュリティ企業の長い待ち行列に並ぶことをやめ、セキュリティの運用管理を内製化し独立することを支援するサービスだ。

 2019年には、名古屋・大阪・神戸・広島・福岡を中心とした関西圏をカバーする西日本支社を設立、日本の西で存在感を増している。

 2020年2月には、全国各地に点在するセキュリティ人材と、地方の中堅・中小企業を結ぶマッチングサービス「vCISO」を開始したばかりだ。

●最後のピースを埋める事業

 2020年4月1日、矢継ぎ早に施策を展開するGSXに欠けていた最後のピースを埋めるかのような発表がなされた。それは、GSXと同じ株式会社ビジネスブレイン太田昭和( BBS )グループの、株式会社EPコンサルティングサービスのITソリューション事業部の事業譲り受けである。

 株式会社EPコンサルティングサービス ITソリューション事業部は、グローバル企業の日本法人や、日系グローバル企業の海外拠点などに向けて、ITインフラ構築やエンジニアの常駐派遣などを行ってきた。ITソリューション事業部が擁する20名のエンジニアと5名の営業担当者全員が、英語と日本語双方を流暢に話し、高付加価値ITソリューションを提供する。

 株式会社EPコンサルティングサービスで取締役兼ITソリューション事業部 事業部長をこれまで務め、4月からGSXにジョインした吉見主税(よしみ ちから)氏に、GSXと融合する意義と、これからの展開について話を聞いた。

グローバルセキュリティエキスパート株式会社 取締役 吉見 主税 氏
グローバルセキュリティエキスパート株式会社 取締役 吉見 主税 氏

● IT インフラ構築とツール開発を行うバイリンガル集団

 株式会社EPコンサルティングサービスは外資系企業向けのIT人材派遣を行う株式会社パナッシュと、グローバル監査法人系のアウトソーシングサービスを提供する株式会社EOSの合併によって2011年に設立された。ITソリューション事業部は、当時仮想化技術の将来性を展望した吉見氏によって、パナッシュ時代に2008年に立ち上げられた。

 ITソリューション事業部の特長は、ITインフラ構築の能力を持つ完全バイリンガル人材によって、英語と日本語双方のニーズに的確にこたえること。吉見氏もUSの大学で学んだ国際派だ。

 グローバル企業の日本法人は、本体は巨大だが日本支社の規模は大きくないことも多く、その場合は予算規模も限られる。ITソリューション事業部は、そんな企業を対象にエンジニアを客先に常駐させ、ITインフラ構築や情シス業務の代行などを行うSES案件やプロジェクト案件を次々と受注し、新規事業を軌道に乗せた。

 ジャパンエンターの外資向けに同様のサービスを提供する企業は数あれど、ほとんどが外資系だ。英語はともかく日本語のニーズを拾うことは長所ではない。ITソリューション事業部は、どちらもできることを強味としてきた。

 ITソリューション事業部の提供するサービスは、やがて噂となっていく。大手グローバル保険会社2社の売却の際、日本支社のシステム分離必要となり、メインベンダーとなった米IT企業は、海外から吉見氏のチームへ直接依頼してきたという。

 SES事業だけではなく、自社開発のプロダクトを持つ点もITソリューション事業部の特長のひとつだ。ITソリューション事業部が開発した会議室予約システムは、国内事務機大手が採用、現在も会議室予約システムの上位3社に数えられている。

 今回の事業譲り受けによってGSXは、ITインフラ構築とプロダクトの自社開発に実績を持つ完全バイリンガルエンジニア集団を取得することになる。

● GSX の3つの進化と発展

 事業譲り受けによってGSXは、次の3つの価値を実現することを掲げるという。

1.コンサルティングからITネットワーク実装まで一気通貫で提供できる企業へと進化する

2.ITソリューション事業部の人材をGSXの提供する教育研修でさらに高付加価値の「IT×セキュリティ×バイリンガル人材」へと転換させる

3.ITソリューション事業部の開発力を用いセキュリティツールメーカーに転身し、労働集約型事業からの脱却を図る

● GSX 東南アジア展開の戦略

 GSXは東南アジアの日系企業への教育支援やコンサルティング事業を計画してきた。東南アジアもまたセキュリティコンサルやインシデント対応が不足している点で、日本と同様なスキームが展開できると考える。

 これまで大手セキュリティ企業各社によって、日系グローバル企業の海外拠点などを対象にコンサルティングなどのセキュリティサービスが展開されてきたが、顕著な成功例はまだこれからだ。

 そこには大きく分けて2つの理由があり、最大の理由は日本と特にアジアでは原価が異なり価格競争で勝てないことだ。もうひとつは、日本では大企業でも海外の現地法人は中小企業であるため予算規模が小さくビジネスの対象にならないのだ。

 GSXは中堅・中小企業向けのコンサルティング実績を豊富に持ち、たとえ小規模・中規模の予算でも、原価を圧縮することで利益を確保するノウハウを蓄積してきた。吉見氏の率いるITソリューション事業部がジョインすることで、これまであった外国語の壁が取り払われ、GSXの持つ中堅・中小企業向けサービスの真価を海外で問うことができるようになる。

 日系グローバル企業の海外拠点は、多い場合300箇所を超える。現地駐在員の負荷を下げる、情シス業務の代行にセキュリティの付加価値を加えたサービス展開などを目論む。

 ITソリューション事業部の持つ開発力もまた、東南アジア進出の武器となる。労働集約型でないツールやソフトは、アジアで戦える商材であり、実際にメイドインジャパンの資産管理ソフトやログ管理ソフトなどが海外に活路を見出している。

 GSXはこれまでのセキュリティサービス企業から、セキュリティツールメーカーへと脱皮を図り、日本とアジアの中堅・中小企業に教育を軸にセキュリティを提供する総合セキュリティ企業という、極めて独自の位置を取りに行かんとしている。

●「グローバルな」セキュリティエキスパートへ

 吉見氏は海外の大学でスポーツマネジメントを専攻し、スポーツビジネスでのキャリアを目指したものの、夢半ばで帰国し株式会社パナッシュに入社した。

 吉見氏自身もアスリートの肉体を持つ。アウトリガーカヌークラブに所属し、本場ハワイのレースに参戦していたこともあるという。鍛え上げた筋肉から発散される取材時の熱量は半端なかった。

 「アジア圏は、企業対企業ではなく、人対人。日本の大手企業がやらない苦労を積極的に引き受けて、各国の現地ベンダとのつながりを構築し、3年以内に、現地でセキュリティの困りごとがあるときに相談される位置を築きたい(吉見氏)」

 日本で最初にタイガーチームサービスを開始するなど「セキュリティエキスパート」としての実績と経験は豊富だったものの、「グローバルなセキュリティエキスパート」としての本格的海外事業展開はこれまで行われていなかったGSX。

 GSXはいつ海外事業を行うのか? これは取引先からも、そしてGSX社内でも言われ続けてきたことだという。GSXが展開する事業ポートフォリオのもうひとつのピースがいま埋まった。

《ScanNetSecurity》

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