ロビンフッドに翻弄された投資ファンド | ScanNetSecurity
2021.09.27(月)

ロビンフッドに翻弄された投資ファンド

株や投資をやらない人にはピンとこないかもしれないが、昨年、現代の「ロビンフッド」がウォール街や大手ファンドを相手に暴れまわった。

特集 コラム
 株や投資をやらない人にはピンとこないかもしれないが、昨 2020 年、現代の「ロビンフッド」がウォール街や大手ファンドを相手に暴れまわった。

 ロビンフッドはアプリの名前だ。手数料無料の投資アプリで、20 代から 30 代といった若い世代がゲーム感覚で株を売買している。セオリーやスタイル、ときにはマナーを無視した取引が場を乱すこともあるが、多くは子ども(素人)の遊びと思われていた。

 2020 年上期はパンデミックにより株式市場も低迷したが、夏以降の回復はロビンフッドによる若者の参入が大きく寄与したとも言われ、大手ファンドや機関投資家も生暖かく見守っていた状態だ。しかし、2021 年に入って「GameStop」株の株取引のルールを無視したディールは、トレーダーや機関投資家たちを狼狽させた。あまりに異常な取引のため、ロビンフッドアプリの運営元が取引を制限したくらいだ。

 GameStop は北米のコンピュータゲームの小売事業者だ。PC ゲームを店頭で売る伝統的なゲームショップのため、業績は芳しくない。株価は長期にわたって下げ圧力のまま推移している。これに目を付けたいくつかのファンドが空売り( Shorting )を仕掛けたとされる。この情報が Reddit の投資コミュニティにアップされると、ウォッチしているメンバーが「やつらに儲けさせるな。GameStop を買え! そして売るな!」と動き出した。

 もちろん彼らはロビンフッドのユーザーでもあり、ネットミームとともに生きる健全なネット民であり、ゲームマニアでもある。おそらく子どものころにゲームを買いにいった店がハゲタカたちの餌食になるのを見ていられなかったのではないだろうか。 義憤にかられた「ロビンフッド」は義賊である本家ロビンフッドよろしく行動を起こしたのかもしれない。

 本当の理由は確認できないが、少なくとも GameStop 株を買った知り合いは「絶対に売らない。これで儲けようとは思っていない。ざまあみろ〇△□キャピタル(空売りを仕掛けたとされる投資会社名)」と喜んでいる。

 もちろん彼らは特定の投資ファンドやトレーダーに恨みがあるわけではない。完全にネットの「祭り」であり、楽しむために行っている。

 社会や権力、既存勢力に対する義憤や反抗心など、自分たちの主張を繰り広げ行動を起こす存在は、サイバー空間では「アノニマス」を想起させる。アノニマスは「ガイフォークス」のマスクを活動のシンボルとしてハッキングや情報リークを行う場合がある。

 アノニマスは特定の団体や個人でもなければ、定まったグループでもなく、指示系統さえ存在しない。事案ごとに自然発生的、もしくは志を同じくする有志が集まって行動する。最小限の連携のもと基本的に各自が勝手に行動を起こすが、外形的には統制がとれた活動に見えることがある。APT グループも明確な実体や組織を持たず、このような特性を持つこともあるとされる。

 GameStop のロビンフッドたちは、Reddit など有機的な連絡チャネルはあったが、株の取得は、各自が自発的に行っている。すくなくともアプリの操作は自分が行っている。アノニマスの活動は現在下火になっている。さらにアンダーグラウンドに潜ったか、国家支援型のハッカー組織に吸収された(ある国の抗議活動は敵対国家にとって利用価値がある)か、あるいは活動に飽きたか、それは不明だが、ネット上で自然発生的に特定の連携行動を起こすという点で、アノニマス的な衝動がロビンフッドのユーザーたちを突き動かし、ネットがそれに力を与えた。

 デジタル(ネット)の変化がリアル社会に反映される「デジタルツイン」とは、本当はこういう現象をいうのかもしれない。

《中尾 真二( Shinji Nakao )》

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