#NoMoreFake 第11回「普通でない普通」 | ScanNetSecurity
2026.01.03(土)

#NoMoreFake 第11回「普通でない普通」

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特集 フィクション
大和田紗希 作 / 一田和樹 監修 サイバーミステリ小説「#NoMoreFake」
大和田紗希 作 / 一田和樹 監修 サイバーミステリ小説「#NoMoreFake」 全 1 枚 拡大写真
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「…でも、これでまた畠山さんの名前が出たら、畠山さんが批判されちゃうんですよね?」

意気揚々と話す三人の話を折りたくはなかったが、どうしても抑えきれず割り込む。

毎日何記事も畠山さんについての記事がアップされている。

ネットで悪徳な転売をしていただとか、情報商材でお金を稼いでいたとか、事実に嘘を重ねて近くにいる私でさえ本当なのか嘘なのかわからない記事が多数あがっていた。

「これ、すごいですね。桜ケ丘高校に通っているときからパソコンオタクで友達もおらずいじめられており…って。コメントした学校関係者って誰ですかね」

兄も、畠山さんの名前が出ているのは知っていたみたいで、記事を見ていた。

「そんなのいるわけないですよ。そもそも学校の名前すら間違えてるのに」

「え、そうなんですか?」

「俺が通ってたのは桜台高校だからね」

どうしてこんなに三人とも余裕なのかわからない。

畠山さんに被害が行くのに、自分たちは匿名で悠々と過ごしている。

お兄ちゃんにもに三木さんにも、畠山さん本人にも少しイライラしてしまっていた。

「完全なる嘘じゃないですか。こんなの」

「フェイクニュースってそんなもんだよ」

興奮気味の私をなだめる畠山さん。

いつもなら落ち着くその笑顔も今は少しムッとする。

(どうして畠山さんが傷つかないといけないんだ…)

「でもこれも 1 万リツイートされてますよ?」

「話題になれば何でもいいんだろうね。普段、コールセンターのバイトしてて思うでしょ?本当に安くなるのに、話も聞いてもらえないって。でもネットでは、友達から回ってきた記事だったら知らない人の記事でも信じるし拡散する。情報が正しいかどうかなんて気にしないんだ。まぁ、拡散している人の大半は業者だろうけどね」

「なんか本当に…」

いやなところばかり見てもしょうがないがどうしても見えてきてしまう。投稿されている記事の中には勤め先のコールセンターの記事もあった。こんなに簡単に個人情報が特定さる時代に、自分の生活がどうなるかもわからないのに誰が大きく声をあげられるんだろう。声を上げれば批判され、粗を探されて排除される。本質的に何に向かっているのか、投稿者本人すらわかってないのかもしれない。

「まぁ、これが普通だからね」

三木さんがなだめるように言うがもどかしさは止まらない。

「普通がもうおかしくなってるじゃないですか」

つい食いついてしまった私に困ったように笑う三木さんを見てばつが悪くなる。もちろん世間知らずなのはわかっている。でもどうしても身近な人が傷つけられるのは我慢できなかった。

「私も以前はそう思ってたんだけど、なかなかうまくいかなくて。それを感じるのは遥ちゃんが今身近でいろんなことが起きてるからなのね。普通、自分とは関係ないから気づけない人も多くて」

三木さんがゆっくり話し始める。

「記事を読む人、受け取る人の受け取り方から変えていくにはすごく時間がかかって、きっと私たちも、もしかしたら遥ちゃんも傷つくことがあるかもしれないし、いわれのない悪意を向けられることもあるかもしれない。でも、それが当たり前だと思ってないから私たちはどうにかしたいって行動してるんだよ。きれいごとだけじゃなかなか進まないけどね」

三木さんの表情からは悔しさがにじみ出ている。

きっと三木さんも悔しいっていう気持ちは感じている。

「でも、遥のその考えもその気持ちもそのままでいいからな。おかしいことをおかしいって思えなくなったら終わりだから。でもその怒りのエネルギーをさ、ちょっと前向きに使ってみるのもいいかもな」

場をなごませるお兄ちゃんのやさしさに、子供じみた自分が恥ずかしくなる。みんなもどかしさを感じながら、でもどうにかしようと必死なんだ。言葉だけをとらえて、行動を見ていないのは、フェイクニュースの記事の上っ面な部分だけを読んでいるのと同じだ。三人に謝り、お茶を片付ける私に、畠山さんがそっと近づく。

「気づいたんだよね、俺。どうしてもこういうことすると見えない敵ばっかりが見えてしまうけど、本当に大事なのは目の前に信じてくれる人がいることなんだって。こうやって怒ってくれる遥ちゃんとか協力してくれる達夫さんたちとか、そっちを見ようって。だから、俺は大丈夫だから。ありがとう」

「いや…なんかすみません」

「でも、遥ちゃんがいなかったら始まらなかったんだよ?」

「え?」

「遥ちゃんがおふくろさん食堂をどうにかしたいって言ったから動き出したんだ」

「…」

「その前向きな一言で、きっと変わっていくんだと思うよ」

きっと畠山さんはフォローしてくれただけなんだと思う。でも、私はすごくうれしくて泣くのを隠すようにお茶を片づける。一歩一歩進んでいけるように頑張るだけだ。そう思った。

>> #NoMoreFake 第12回 エピローグ「信用の価値」

大和田紗希 作 / 一田和樹 監修 サイバーミステリ小説「#NoMoreFake」

《大和田 紗希》

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