アラフォー無職のエンジニア女子が前代未聞の無償脆弱性管理セキュリティサービス「S4」の担当になるまで | ScanNetSecurity
2022.07.01(金)

アラフォー無職のエンジニア女子が前代未聞の無償脆弱性管理セキュリティサービス「S4」の担当になるまで

定年まで逃げ切らんと全力を尽くす「空に聳える低い志」の紳士と対極的に、新卒として社会に出たときから、あらゆる約束を反故にされ奪われた山田の手によってこの仕事が完成されたとき、S4 というプロジェクトが必然に変わる。

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株式会社SHIFT SECURITY 山田 蕗代 氏
株式会社SHIFT SECURITY 山田 蕗代 氏 全 1 枚 拡大写真

 「逃げ切る」という言葉を使う紳士がいて、たいてい「定年まで」という接頭辞と一緒に用いられ、発言者のほとんどは中高年男性である。

 何から逃げ切るのか、逃げ切った先には何が待っているのか、さすがにそこまで聞けなかったが、単に自身が成長と挑戦をせず、協調性の高さだけを頼りに定年までリスクを一切負わない仕事ぶりを垂れ流すという単純な話だけではなさそうだ。

 おそらくは彼らの世代が先送りし続けてきた経済的あるいは社会的課題と、それらの課題がこじれきった果てに生じたやっかいな結果とビタイチ直面することなく定年を迎え、にも関わらず満額退職金を受け取り、その後年金なりを受給しながら、人としての尊厳が保障された老後へ向かって爆走する、といった意味合いにそのときは聞こえた。そういうことができると本気で思っているように聞こえた。

 日本が過去 30 年、ドイツやアメリカ並みに成長していたら、中小企業でも初任給 50 万円、GDP 2,000 兆円、日経平均株価 12 万円。少々大げさだが決してこれはなかった可能性ではない。そのかわりラーメン一杯も 1,500 円から 2,000 円くらいになっていただろう。このように約 30 年時間が止まったことで生まれた課題や難問を、次の世代に積極的に先送りして、自分は華麗に現役からおさらばする=逃げ切るという腹づもりなのであろう。もはや紳士としか呼びようがない。空に聳える(そびえる)低い志 スーパー老害 逃げ切るおっさんである。

 ということは一方で、逃げ切ることがかなわずに「つかまってしまった」世代がいるはずで、今回取材した中小企業向け無償セキュリティプラットフォーム S4 プロジェクトのディレクターである山田蕗代(やまだ ふきよ)も、経済停滞とそこから生まれた様々な社会課題というゾンビの集団に取り囲まれ、ショッピングセンターに立てこもり、一人また一人と仲間を失い、孤独なサバイバル戦を日々展開し、辛くも(からくも)生き延びてきた無数の日本人のうちの一人であろう。

 彼女が、S4(エスフォー)と呼ばれる中小企業向け無償セキュリティ管理ソフト開発の中心メンバーに就任するまでの経緯は少し変わっている。

 山田は、S4 を開発・運営する株式会社クラフと株式会社SHIFT SECURITY の親会社である株式会社SHIFT の社員として、愛知県にある日本を代表する製造業の関連会社で常駐スタッフとして働いているとき S4 に出会った。その後山田は SHIFT を一度退職し、S4 を提供する SHIFT SECURITY に再入社。S4 のディレクターにアサインされ、中心メンバーとなって開発を進め、2022 年 2 月のクローズド ベータ テストのローンチまでこぎつけた。

 ここだけ聞くと、大手で働いていたエリートが、子会社のベンチャーが開始した SDGs 的プロジェクトに感銘を受け心酔し、わざわざ身一つで飛び込んで活躍しているという美談めいた話に聞こえかねないが、現実は全く違っていてむしろ反対だ。そんなクソ面白くもない美談に着地させたりしたら山田から「しゃらくさい」と吐き捨てられるだろう。

 山田は就職氷河期の後期に情報処理系の専門学校を卒業。それまで親や教師から聞いていたのとはまるで違う条件のもと社会に蹴り出された。よく例が挙げられるが、たとえば一世代上の先輩が入った会社の「発注先」や「下請け」の企業にその後輩が入社できたら恩の字という時代である。しかしそれでも半導体製造の国内大手に就職できた山田は、能力と運を持ち合わせていたに違いない。

 山田は半導体の製造管理のプログラムを C言語で開発する仕事に従事した。フラッシュメモリ事業の拡大・成長と国際シェア獲得の時期と重なり、露光装置などの製造装置とホストコンピュータ間との通信処理や、その検査装置に関わるソフトウェア開発をのべ 13 年続け、研鑽を積み成長を重ねた。しかし、後述するが思うところあって山田は退職、その後おなじく産業用機器の製造管理プログラムの開発企業での 3 年を経て、名古屋で開催された転職フェアで、ソフトウェアテストの領域で急成長するベンチャー企業 株式会社SHIFT と 2019 年に出会った。

 熟練職人の聖域とされてきたソフトウェアテストを標準化して成功した同社の仕事は、自分に合うと山田には思えた。株式会社SHIFT に入社した山田は、新入社員研修が終わるとすぐに、名古屋にある日本を代表する製造業の関連会社の常駐スタッフとして派遣された。コネクテッドカーとそれを制御するクラウド周辺のソフトウェアを開発する会社で、かなり重要なクライアントのひとつだった。会社が山田の能力を的確に査定し、かつ人物にも信頼を寄せたことがうかがい知れる。こいつならやってくれると思われたに違いない。

 山田が常駐先で行った主な仕事の一つが、開発を外部委託している様々なソフトウェアの「納品受け入れ」の基準を作ることだった。常に数十件のソフトウェア開発が同時進行している中で、委託先に提出を求めるドキュメントの標準化や、どうなったときに納品完了となるのか等々の要件を定めた。その業務の中で、ソフトウェアの脆弱性診断とその管理を行うマネージドサービスを探して見つけたうちのひとつが、S4 だった。

 2021 年 1 月、S4 を提供する、山田にとってはグループ会社にあたる株式会社SHIFT SECURITY の代表 松野真一と山田は面会した。つづく二回目の打ち合わせで、近い将来 S4 を中小企業と大企業のセキュリティ格差を解消するために、中小企業にのみ完全に無償で提供するビジネスモデルを検討していると松野が語るのを聞いたとき、山田は不思議だと感じた。

 世には広告モデルを採用したアンチウイルスソフトなど、個人向けの無償セキュリティサービスは数多(あまた)存在する。しかし法人向け無償セキュリティサービスなどついぞ見たことがない。そしてそれには明確な理由がある。随分と突飛な、絵空事(えそらごと)感さえあるアイデアをいま自分は聞かされているはずなのだが、山田にはそれがごくごく自然なことに思えた。そうだそうだ、こういうものが世の中には必要だったのだ、そう素直に思えた。

 複数候補があったマネージドサービスのうち、最も良いと判断できる根拠を添えて S4 を常駐先の企業に推挙はしたが、最終決定を山田は見ることができなかった。SHIFT社を退職したからである。S4 のプレゼンを受けてから約 2 ヶ月後のことだった。

 目の前の問題は、山田が関わることで合理的かつ迅速に処理され、改善されていく実感が常にあった。しかし、そういう課題解決の積み重ねの先に、タスクの消化の果てに、いったい何が待っているのかと思いを巡らすと、そこには端的に破綻のイメージしか山田は持つことができなかった。社会も、事業も、そして自分自身も。

 仕事が早くなる。効率化が進む。作業者の負担が減る。利益が向上する。これが 20 年以上山田が携わってきた、そして得意としてきた仕事だが、それを積み重ねても、負担が減ったら減った分だけきっちり人が減らされ、さらに過剰な業務が割り当てられ、より高い利益目標が天災のように上から降ってきた。

あれだけ課題を解決してきたはずなのに一歩も前に進んでいないことに愕然とし、それを忘れるために仕事に打ち込めば打ち込むほど、事業や自分の未来がむしろ狭まっていく気がする。そんな日々にけりをつけたい。他にやりたいことのひとつとてなかったが、少なくともここに居続けることだけはやめようと決心した。

 就職氷河期に社会人になった山田にとって「胸に穴があく」という言葉の意味がずっとわからない。そうではなく、世界の中に「山田蕗代という形の空洞」が存在するという思いを抱え 20 年社会人生活を送った。居場所も何も穴があくような実体がそもそも最初からない。

 さすがに何の挨拶もなくいきなり連絡が取れなくなるというのもアレ過ぎるだろうということで山田は、おそらく最後の面談と思われる打ち合わせの際に、松野に退職することを告げておこうと思った。セキュリティの格差を解消するだの、サイバー攻撃の被害者を減らして社会に笑顔を作るだの、もはや一生自分には関係のないことだが、これはこれでいいプロジェクトだと思っていたし、うまくいくかどうかは別問題として、後はおまえらでなんとか頑張ってほしいとすら思っていた。その気持ちが伝わればと願った。

 「そうなんですか。退職なさるんですね。どうもおつかれさまでした」

 ゆうべ Netflix で観たドラマについてでも話すかのように松野真一から軽くそして薄い返事が返ってきた。

 「次に行かれるところはもう決まっていらっしゃるんですか」

 無遠慮に聞いてきた松野に山田は再び不思議だと思った。その無神経さではなく、ズカズカと踏み込むそんな質問をされても、なぜか不快さをほとんど感じなかったからだ。

 山田はすでにアラフォーと呼ばれる年齢を迎えていた。「仕事に疲れたから辞めて、しばらく休んでじっくりこれから先を考えたい」などと夢みたいなことをほざける年代ではもうないことは、己(おのれ)が一番よくわかっていた。端的に言うなら「来月から無職」。その言葉がまるで正月の書き初めのように大書(たいしょ)され、山田の脳裏の床の間に軸装して架けられていた。来月から無職 と。

 どうせこの夢多き変わった経営者とも一生関わることなどないのだ。そう思い「いいえ、まだ何も決まっていないんです」と正直に答えた山田は少し自分の身が軽くなるのを感じたが、間髪入れずに松野から返ってきた言葉は耳を疑うものだった。

 「それはよかったです。じゃあ来月からうちの会社に入社してこのプロジェクトを一緒にやりましょう」

 耳を疑うほど嬉しかった。「 SHIFT と名のつく会社にはもう入りたくない」と山田は告げた。他意は全くないものの偽らざる本心であり本音だった。

 一瞬でこの返しができるとは、さすが山田は仕事ができる女である。条件面などの交渉の余地なくスッパリと断ることができる。しかもあくまで断った理由が山田側にあるので相手を傷つけることがない。握手を求めて右手を差し出したら、ふと気がついたら手首から先が、痛みもないほどの早業で切り落とされていたような断り方である。見事な太刀さばきだ。

 ここからどのようなプロセスを経て、山田が株式会社SHIFT SECURITY に入社して S4 のプロジェクトに関わるようになったかを詳しく書けば、美談に仲間入りできるのかもしれないが、そこはまるまる省略することにする。どうやら 2 回オファーされたが 2 回とも華麗に断ったらしい。三顧の礼などと書けば聞こえはいいが、要は単に切り落とされても切り落とされても、すぐに松野真一の右手はプラナリアやヒドラのように再生しすぐに生えてくる体質だったのだろう。高校生物の教科書に載っているヒドラというよりは、風の谷のナウシカ コミック版 第 6 巻のヒドラである。

 3 月から 5 月にかけて、何回かにわたって山田に S4 開発の話を聞こうとインタビューを行ったが、何から何まで新しいことばかりで、日々試行錯誤の繰り返しだと語るだけだった。これまでの山田なら、何か問題が一つ見つかれば、その問題だけでなく、関連する課題を二つも三つも同時に解決し完成に近づけたり、洗練させたりするのがいつもの仕事のやり方なのだが、S4 で全くそれが通用しないことに激しくいらだってもいた。

 無理もない。S4 は、山田がこれまで作ってきたような、資本主義経済の中でお金を生み続ける永久機関となることのみを祈念して作られる、どこにでもあるソフトウェアではないからだ。

 「道のないところに新しい道を作る」とも異なっていて、より正確に言うなら、道という概念がなかったはるか太古の時代に道を構想するような、時間という概念が曖昧だった時代に時計という道具を想像するような仕事に似ている。

 S4 プロジェクトのチームは、山田を含む 3 名のディレクター、プロダクトデザインの かめもときえ、小田と小林を含む株式会社クラフの 4 名の開発チーム、開発パートナー企業、テストチーム、コミュニケーションデザインを担当する西本( 6 月から株式会社クラフの宮本が担当)らで構成される。

 S4 というプロジェクトの特徴的なエピソードを山田がいくつかインタビューで挙げてくれた。中でも印象に残ったのが、脆弱性管理、IT 資産管理のプラットフォームとして S4 は、単なる便利さや高機能を目指すことは「しない」という原則だった。

 S4 は、サプライチェーンを統べる大企業が有償版を導入し、子会社や取引先全体に取引条件のひとつとして無償版導入を義務付けるといった、プライバシーマークにおける電通のような利用シーンが考えられる。そのため、2022 年 4 月 12 日に配信した記事に書いたように、大手インテグレーターなどが取り扱い製品の一つとして S4 に興味を示しており、すでにいくつかの企業と、機能や仕様に関するコミュニケーションが行われている。

 しかし、あくまで S4 は、セキュリティ対策をほぼ何も行っていないような企業のセキュリティ水準を必要最低限まで上げる、いわば「 0 点を 60 点にするセキュリティサービス」であると考え、80 点 90 点を目指すような機能追加は一切行わないと最初に決めたのだという。

 「高機能なもの、ただ便利なものを求めているお客様には、我々の方からご利用をお断りすることも考えている(山田)」

 要は、90 点を 95 点や 96 点にして、なおかつ効率も上げるような、もののわかった情シスが感涙随喜する完成度のセキュリティ製品をお求めなら、「空」をあおぐか、あるいはソリトンシステムズのようなところへ行けということだろう。

 近年、固形シャンプーという商品が存在し、プラスチックボトルを使わないことが商品の価値の一つになっている。こういう類の商品を作るような企業は総じて、単にプラゴミ削減だけでなく、フェアトレードに真剣に取り組んでいたり、原材料生産プロセスでの児童労働を排除していたり、動物実験を一切やっていなかったりすることが多く、何よりほぼ例外なく成分が肌にとても優しく、一定のユーザーを獲得している。固形よりは液体の方が利便性はあるが、それ以外の利他的な価値提案がある。これと同様のことを、セキュリティプロダクトとして世界に先駆けて S4 が行うということのようにも思える。便利になったことで失われるものへの視線である。

 しかし当然そうなると、どの機能を付けてどの機能を付けないのか、という選択の問題が発生する。

 それを決めるのも山田の役割だ。

 S4 というプロジェクトを発案した株式会社SHIFT SECURITY は、脆弱性診断の本格的な標準化を行った企業だが、その際に基準となる人物として、大手コンビニチェーンで雇われ店長をやっていた、当時 41 歳の気のいいおじさんを採用した。41 歳コンビニ店長は、技術教育を受けた経験ゼロ、セキュリティどころか IT 業界で働いた経験すらなく、セキュリティに興味が全くないどころか、そんな難しそうな仕事ワシまっぴらと思っていた。そんなおじさんでも一定の訓練を経さえすれば、日本のプラットフォーマー他、さまざまなアプリの脆弱性診断を無事全うできるところまで、業務を分解しマニュアル化し進捗管理を行うシステムを完成させた。

 今回の S4 というプロジェクトは、見方を変えれば脆弱性管理や IT 資産管理という業務プロセスの標準化を行おうとしていると見ることもできる。流行のマーケティングキーワード「一人情シス」すらいないような日本の大多数の中小企業で、それでも資産の棚卸を行い、Web サーバやアプリのアップデートを行い、新しい脆弱性が出たらパッチを当てる。これらの業務をコトバどおりに「誰にでもできるようにする」のがこのプロジェクトの隠しテーマでもある。

 そのために今回選ばれた基準となる人物が、2022 年 2 月 18 日の記事で紹介したデザイナー かめもときえであり、今回取材した山田蕗代である。

 山田は熟練の開発者として、これまで工場の製造装置や制御機器など、ミクロン単位の正確さと安全、そして何よりも「安定稼働(止まってはいけない)」という強烈なプレッシャーを課されるソフトウェア開発を 16 年続け、いわば日本のもの作りの正統遺伝子を受け継いでいる。しかしセキュリティの知見や Webアプリケーションの開発経験はそれこそ 1 ナノメートルも持たない。そこが評価された。

 少々ギョッとするが「独裁者になれ」というのが現在山田に課されている目標だという。どう画面遷移するか、どの機能を採用しどの機能を落とすか、全体で話し合いをしても答えが出ないのだが、しかし決めないと前に進めない事案があったときは、山田の一存で決めなければならない。ちなみに多数決は NG だ。

 工場の制御機器のソフトウェアとセキュリティ管理のソフトウェアは、ざっくりしたたとえで申し訳ないが、和食と洋食ぐらいの違いは軽くあるだろう。みんながわからない難問ばかり山田が「独裁的に」決める(決めなければならない)というのは、記者から見ても何かの罰ゲームのように思える。もちろん山田が、日々爆死に次ぐ爆死を繰り返している(註)ことはいうまでもなく、インタビュー中ずっと山田の髪の毛からは煙が漂っていたことを付け加えておく。(註「爆死:壊滅的な大失敗を意味するインターネットスラング」ウィキペディア)

 S4 というソフトウェアと、それに関わる(残念ながら失敗に終わった)クラウドファンディングなどの活動もろもろは、社会へ問題提起する一種の社会実験であり、総体として社会的なアート作品(完成途上の)とも捉えることができる。アート作品とは通常、多数決で何かを決めて作ったりはしないし決してしてはならない。ひともうけするのが目的でもアートは作れない。ピカソは電通のスペイン支社と打ち合わせをしてキュビズム絵画を描いたわけではない。

 近年、セキュリティ対策費用は上昇傾向にあり、予算の潤沢でない全日本企業の 99.9 %を占める中小企業にとって、セキュリティ投資は以前以上に難しくなっている。一方で政府や経済界は、日々 DX(デジタルトランスフォーメーション)を絶叫し、デジタル的な価値をつくれつくれと急かし続ける。しかし相対的に守りが弱い中小企業はサイバー攻撃被害を受けやすいから、価値を作り出すそばからその価値が外国へ盗み出されていく。これは歪んだ社会である。

 セキュリティの格差を解消しようとする S4 が、恵まれた環境や条件で仕事を進める/進めてきたエリートによって開発されたとしたら、それはそれでありだろうしそれを妨げる気持ちは微塵もないが、端的に面白くない。

 そうではなく、定年まで逃げ切らんと全力を尽くす「空に聳える低い志」の紳士と対極的に、新卒として社会に出たときから、あらゆる約束を反故にされ奪われた山田の手によってこの仕事が完成されたとき、S4 というプロジェクトが必然に変わる。このプロジェクトが地上に存在する意味をもたらすのが、山田蕗代と彼女がサバイバルしてきたキャリアそのものである。山田が山田であることが大きな武器なのだ。そう考えたとき、独裁者となって開発を進めることはプロジェクトと整合する目標となる。罰ゲームなどでは断じてない。S4 の正式公開は 2022 年 9 月を予定している。


編集部註1:
 本記事の公開にあたって山田から、株式会社SHIFT を退職する際に別のポストへの異動の提案や、待遇・条件の見直しなどさまざまな慰留の提案をしてくれた当時の上司と勤務先に深く感謝していることをどこかに必ず書いて欲しいと強い要望があった

2:
 本記事のタイトルとして編集部は当初「無償セキュリティサービスS4 に意味を与える者」という案を示したが、「たとえ興味本位でも構わないのでまったく関心の無い人も含めてなるべく多くの人に記事を読んで欲しい」と願う山田から「疲れ切ったアラフォー無職のエンジニアが前代未聞のプロジェクトのディレクターになるまで」というタイトルの逆提案があった。編集部は山田の意図をくんで、山田案をさらに「改悪」し、「エンジニア」の後に「女子」を付け加え再提示、山田の支持と賛同を得て、その後各種の調整を行い今回の記事タイトルに決定した。エンジニアはエンジニアであり性別による価値や評価の違い等が習慣と制度と人間の中にけして存在してはならない

株式会社SHIFT SECURITY 山田 蕗代 氏

《高橋 潤哉( Junya Takahashi )》

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