2021年SFプロトタイピングの旅 第2回「SF制作のプロセス自体をイノベーションに利用」 | ScanNetSecurity
2026.01.03(土)

2021年SFプロトタイピングの旅 第2回「SF制作のプロセス自体をイノベーションに利用」

 1968年に作家のクラークが発表した小説「2001年宇宙の旅」と、同年公開されたキューブリック監督による映画化作品の成功は、その後の人類の宇宙開発に少なからぬ影響を与えました。

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2021年SFプロトタイピングの旅
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第1回

 1968年に作家のクラークが発表した小説「2001年宇宙の旅」と、同年公開されたキューブリック監督による映画化作品の成功は、その後の人類の宇宙開発に少なからぬ影響を与えました。

 空想科学小説(SF)という文学ジャンルの持つ力を借りて、新しい価値観や目標、今までになかった製品やサービスを考える手法は「SFプロトタイピング」と呼ばれており、Intel社の研究機関の未来学者によって提唱され、近年日本でも注目が集まっています。

 SFプロトタイピングは、飛躍や自由な発想が積極的に許容され、その点が、既知のデータをもとにしたシミュレーションや未来予測とは異なっています。

 未知の要素を最大限考慮に入れながら将来やってくる未来を思い描く。これを「将来やってくる未来」ではなく「将来やってくる脅威」に置き換えれば、それはセキュリティ担当者なら多かれ少なかれみんながやっていることではないのか。

 そんな認識のもとで、2021年夏、1名の作家を含む識者3名が集まり、サイバーセキュリティ領域でのSFプロトタイピングの利活用の可能性について考える勉強会を開催しました。3名の講演とディスカッションで構成され、ディスカッションのテーマに設定したのは、サイバー攻撃の非対称性を無効化する兵器を構想すること。

 登壇したのは、著書「SFプロトタイピング: SFからイノベーションを生み出す新戦略」を早川書房から出版(共著)したばかりの、筑波大学の大澤 博隆 先生、そして、SFプロトタイピングを活用した企業コンサルティングの実績を持つアノン株式会社の森 竜太郎 社長。そして、サイバーミステリー作家の一田 和樹 氏の3名です。(註:所属及肩書は当時)

 昨2021年をはるかに超えて不確定要素が増す現在、3名の講演とそれに続くディスカッションを、勉強会の講演再録として連載でお届けします。第2回は、前回にひきつづき大澤先生によるSFプロトタイピングの定義の講演です。

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 こうしたSFからの影響というのは、もっとダイレクトにイノベーションに結びついているんじゃないかというのが、80年代90年代2000年代以降、いろんな事例からだんだん分かってきました。

 一つはSFを使って何か新しいデザインを発見しようと、いろんなアプローチが行われています。そのひとつに「スペキュレイティブ・デザイン」という、問題を解決するためではなく問題を発見するデザインという考え方が提案されている。元を辿るとルーツの一つにはブルース・スターリング(サイバーパンクというジャンルにおける有名な作家の一人)が書いたデザインフィクションという概念がある。

 それからたとえば「メイカームーブメント」と言う、数年前から話題になっている話がある。今までのように大企業が作ったものをユーザーが使うんじゃなくて、ユーザー自身が自分で使いたいものを作っていくという考え方で、3Dプリンターの普及などの先駆けとなった考え方です。これもルーツを辿るとコリイ・ドクトロウというアクティビストの作家がいる。彼が書いた Makersという同名の本からアイデアの影響を受けましたよ、ということが最初に書いてあります。

 人工知能の分野だと、人工知能が人工知能を作り始めて、発展に不連続な点ができます、というシンギュラリティ(技術的特異点)という考え方があります。これはレイ・カーツワイルという人が色んな所で言って普及しているので有名です。アイデアとしてはヴァーナー・ヴィンジというSF作家と一緒に考えられたものだと言われています。シンギュラリティ自体は実現していないですけれど「シンギュラリティが来たらどうする?」みたいなことが、AIの発展における一つの議論になっています。そういうイノベーションのようなアイデア自体も、SF作家が提案したり、SF作品から提案されたりということが多いことが分かっています。

 これを意識的にやれないか、というのが最近のトレンドとしてはある。昔だったら万博とかでSF作家がやってきた色々な試みが、結果的に取り入れられたりしていました。そういうことを積極的に働きかけてコラボレーションできないか、という動きが出てきている。

 例えばNature誌は、ウェルズの小説・ジャーナルが載っていたことをベースに「じゃあフィクションを1回載せてみないか」ということで、20世紀の終わりぐらいからショートショートを断続的に載せる試みを行っています。

 同じように、日本の人工知能学会でもショートショートを載せるなどしています。

 後は産業界でもいろんな会社がSF作家を呼んでいる。例えばMicrosoftは作家を研究センターに招いて、そこの技術でフィクションを書いてもらえませんか、と依頼。無料で読めるようにアマゾンで発表しています。日本でも日産さんや清水建設さんも同じような試みをやられています。

 後は国の方でこれをサポートしようという動きも出てきています。

 これが現状になります。基本的にはSF作品のワードなんかに影響を受けた例から、だんだんSF作家自体を巻き込むなど、いろんな形でSFの発想力を使って、よりイノベーティブなアイデアを産んでいこうという流れが出てきました。これが昨今の状況です。


《ScanNetSecurity》

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