サイバープロパガンダはどう社会に浸透するのか | ScanNetSecurity
2026.03.25(水)

サイバープロパガンダはどう社会に浸透するのか

国家支援型のサイバー攻撃が軍事施設や国家中枢・社会インフラや大企業を狙うという認識は少々改める必要がある。中露をはじめ各国サイバー部隊の活動は、もっぱら世論操作や諜報活動にシフトしているからだ。

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 今年で開催10回目を迎える CODE BLUE 2022 は10月27日(木)~10月28日(金)に開催される。本稿は昨年開催された CODE BLUE 2021 の取材から、重要セッションであるにも関わらずまだ未掲載となっていた講演レポートを「蔵出し」でお届けする。

 国家支援型のサイバー攻撃が軍事施設や国家中枢・社会インフラや大企業を狙うという認識は少々改める必要がある。中露をはじめ各国サイバー部隊の活動は、もっぱら世論操作や諜報活動にシフトしているからだ。これらの活動は、われわれが日ごろ接しているSNSやビデオクリップで確認することができる。

◆サイバー攻撃の大多数は金銭目的

 日本では、企業がサイバー攻撃を受けると「中国が先端技術を盗もうとしている」、ランサムウェアの被害が発覚すると「第三国によるサボタージュ(破壊活動)だ」といった議論が起きがちだ。もちろんサイバー安全保障、経済安全保障の議論は重要であり、現実のリスクとして対処する必要がある。中露に限らず主要先進国は、敵対国の軍事施設や中枢機関に軍事的なサイバー攻撃を実施する能力を保持しているからだ。

 だが、現実のサイバー攻撃は、発生件数や事例としては犯罪組織やアンダーグラウンドによる一般的な金銭目的のサイバー攻撃がほとんどである。サイバー国家安全保障の議論でよく引き合いにだされるのが、2021年5月に発生したコロニアル・パイプラインへのランサムウェア攻撃だ。

 アメリカ東海岸の主要都市への石油供給が一時的に停止し、消費者によるガソリンのパニック買いが発生するなど大混乱を引き起こした。事件発生当時、この影響をもって国家支援型のサイバー攻撃であるかのような報道、SNSの書き込みが見られた。攻撃者は確かにロシアのハッカーグループだったが、ロシア政府の関与を示す証拠は示されていない。攻撃グループを解体され、FBIは犯人側に支払われた身代金を追跡し大部分を回収した。ロシア政府は、バイデン大統領の抗議に反論するわけでもなかった。アメリカによる捜査や資金回収がすんなり動けたのは、ロシア政府として事件やグループに全く関与していなかった可能性を示唆する。

◆台湾TEAM T5による中国プロパガンダ研究

 国家支援型のサイバー攻撃は、実際どんな形にシフトしているのだろうか。世論操作や諜報活動と述べたが、2016年のアメリカ大統領選挙で問題になったフェイクニュース、フェイクサイトの活動が典型例のひとつといえる。その前のオバマ大統領は、Facebookなどソーシャルメディアを活用して多くの支持を集めて当選したが、トランプ大統領以降、人類はソーシャルメディアはプロパガンダや世論操作に活用できることを覚えてしまった。

 国家でこれを積極的に展開しているのは中国だ。香港の民主化運動では、「アラブの春」のごとくネットが民主主義や人権の強力なツールとして活用されたが、同時に中国共産党のプロパガンダや活動家のトラッキングなどに利用された。新疆ウイグル地区の人権問題(海外メディアでは普通に「民族虐殺」と表現されている)でも、国民へのプロパガンダ、海外へのアピールにブログや動画投稿サイトなどがフル稼働した。


《中尾 真二( Shinji Nakao )》

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