2021年SFプロトタイピングの旅 第11回「サジェストの先にあるのは快適さだけ」 | ScanNetSecurity
2024.04.16(火)

2021年SFプロトタイピングの旅 第11回「サジェストの先にあるのは快適さだけ」

昨2021年をはるかに超えて不確定要素が増す現在、3名の講演とそれに続くディスカッションを、勉強会の講演再録として連載でお届けします。第11回以降は講演者3名によるパネルディスカッションです。

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2021年SFプロトタイピングの旅 第11回「過去の延長に進歩はない」
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 1968年に作家のクラークが発表した小説「2001年宇宙の旅」と、同年公開されたキューブリック監督による映画化作品の成功は、その後の人類の宇宙開発に少なからぬ影響を与えました。

 空想科学小説(SF)という文学ジャンルの持つ力を借りて、新しい価値観や目標、今までになかった製品やサービスを考える手法は「SFプロトタイピング」と呼ばれており、Intel社の研究機関の未来学者によって提唱され、近年日本でも注目が集まっています。

 SFプロトタイピングは、飛躍や自由な発想が積極的に許容され、その点が、既知のデータをもとにしたシミュレーションや未来予測とは異なっています。

 未知の要素を最大限考慮に入れながら将来やってくる未来を思い描く。これを「将来やってくる未来」ではなく「将来やってくる脅威」に置き換えれば、それはセキュリティ担当者なら多かれ少なかれみんながやっていることではないのか。

 そんな認識のもとで、2021年夏、1名の作家を含む識者3名が集まり、サイバーセキュリティ領域でのSFプロトタイピングの利活用の可能性について考える勉強会を開催しました。3名の講演とディスカッションで構成され、ディスカッションのテーマに設定したのは、サイバー攻撃の非対称性を無効化する兵器を構想すること。

 登壇したのは、著書「SFプロトタイピング: SFからイノベーションを生み出す新戦略」を早川書房から出版(共著)したばかりの、筑波大学の大澤 博隆 先生、そして、SFプロトタイピングを活用した企業コンサルティングの実績を持つアノン株式会社の森 竜太郎 社長。そして、サイバーミステリー作家の一田 和樹 氏の3名です。(註:所属及肩書は当時)

 昨2021年をはるかに超えて不確定要素が増す現在、3名の講演とそれに続くディスカッションを、勉強会の講演再録として連載でお届けします。第11回以降は講演者3名によるパネルディスカッションです。

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【司会:編集部】すでに先ほど一田先生から非対称性を覆すための手段・仕組みの一部をご提案いただきました。そこをスタート地点にしてお話をいただければと思います。今回のSFプロトタイピングというテーマ上、必ずしも明確なゴールがあるわけではありません。お三方のお話からヒントや視点、気づきを得る機会となるんじゃないかな、と思います。それではお願いいたします。

【大澤】私から、ざっくり考えていたことを。非対称性のことはすごく重要な観点だなと感じました。私が専門でやっているAIの話なんかでも言われている。ルールを決めていけばいくほど、動きづらくなってくる。ルールを決めなくて自由にやるほうが、うまくできちゃう面があります。そこをどうルールで押さえながらやっていくか、というのは考えなければいけないと思っています。

 SF作品自体はいろんな形の社会像を描いているので、そこはいったん既存のタブーを抜いた形で議論をやってみるのもいいんじゃないかな、というのはすごく思います。従来ならディストピアと思われていたビジョンに対しても、一回フラットに議論してもいいんじゃないかな、と思います。そういうことをするのに、たぶん心理的な障壁を下げられることは、一つのメリットかなと思っています。

 ただその中で、どういうルールならコミュニティが妥協できるかというのは、実際に実装する際には議論していくべきだと思います。アイデアの段階では、そういうのを使っていくほうがいいですが。

【森】私はネットセキュリティもサイバーセキュリティも専門家ではないので、今回「非対称性」というものに関して、初めて考える機会をいただきました。

 一田先生が与えてくれた定義というのもあるんですが、僕の中で一つ感じたところを。と、言うのもですね、もう一つの非対称性という意味で、サイバーセキュリティで攻撃者と被害者の間に、「被攻撃者」という介在している存在がある。ここのところに関しても非対称性と言えるのかな、と思いました。

 例えば、我々がデータを預けているGoogleが攻撃を受けたら、本当に被害を受けるのは我々個人。ここにも非対称性があるのかなというのが、私がこの話を聞いて真っ先に思い浮かんだことです。

 SFプロトタイピング的な話では、我々は今、繋がれば繋がるほどどんどん便利になっていくし、危険度も増していく。こういうような時代がやってきている。その部分に我々の根源としてあるのは、我々のデータや情報を監視資本主義社会の中で預けすぎている。他人に委ねすぎているというところが、根本にあるのかなという風に思っている。ここの部分を解消する手段が無いのか、SFプロトタイピング的に考えていくことは非常に重要なんじゃないかな、と僕は思いました。

 これはジャストアイデアでありますけれども、例えば自分がサードパーティーに提供する情報を自分が制御できる。ただ制御というのも一つ一つの情報を丁寧に自分でさばいていくなんていう時間はどうやっても取れないと思うので、そこの部分を自身の直感とか過去の行動とかデータに基づいて自動で判断してもらえる機械がある。そういったような可能性を、SFプロトタイピングで探っていく。そういうことによって、対称性というテーマを別の観点から考えられる機会になるのかな、と感じました。

 すみません、ちょっと感想チックになりましたが、以上です。


《ScanNetSecurity》

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