Shubh Kumar 氏は、インド工科大学パトナ校を卒業した。インド工科大学(Indian Institutes of Technology:IIT)は数百万人が受験するが、わずか 1 万 8,000 人の学部生しか入学できない名門大学群だ。
Google の CEO である Sundar Pichai 氏や IBM のトップ Arvind Krishna 氏は共に IIT の卒業生であり、企業は IIT の学生を積極的に採用する。新卒者は一般的に、23 校ある IIT のいずれかで学位を取得することがキャリアの素晴らしいスタートになると楽観視している。
しかし、Kumar 氏にとってその夢は実現しなかった。地元のスタートアップにソフトウェア開発エンジニアとして入社する数週間前、同社は「大幅な事業統合」と「極めて厳しい財務状況」を理由に内定を取り消した。
この知らせに Kumar 氏は衝撃を受けた。
「働く準備はできていました」と Kumar 氏は語る。「今はゼロに戻り、自信を保とうと努力しています」と同氏は The Register に語った。
Kumar 氏の体験談は、インドの大学キャンパス全体で共通するものだ。情報技術を学ぶ学生たちは、企業がキャリア初期の人材を採用することに関心を示さないことを実感している。
かつて若手エンジニアの一般的な就職先だったインドの IT サービス大手 5 社は、2020 年度には約 10 万人の卒業生を採用したが、2025 年度には 7 万人のみの採用にとどまる見通しだ。
他の企業も IT 分野のキャリア初期人材の採用を減らしている。テクノロジー人材派遣・HR サービス企業の TeamLease のデータによると、インドのテクノロジー企業による新卒採用は 2021 - 2022 年度の 60 万人でピークに達したが、2023年と2024年には共に 15 万人へと急減した。
インド高等教育省向けに作成された「補助金交付要求」報告書(PDF)によると、23 校の IIT のうち半数以上で、2021 - 2022年度から 2023 - 2024 年度にかけて卒業生の就職率が 10 ポイント以上低下した。
議会常任委員会はこの減少を「異常」と呼び、他の大学でも同様の傾向が見られ、平均初任給も減少していると指摘した。委員会は高等教育省に対し、学生の雇用適性を高める方法を見つけるよう求めている。
● AI の影響
専門家は、インドの IT セクターに構造的変化が起きており、AI やその他の自動化により、エントリーレベルのコーディングやサポート業務の需要が減少していると見ている。
「手動テスト、基本的なアプリケーションサポート、低レベルのコーディングなど、ルーティン化されたルールベースの役割が最も影響を受けています」と TeamLease の CEO である Neeti Sharma 氏は述べる。「生成 AI ツールがこれらの成果物をより速く提供するため、大量の新人採用の必要性が減っています」
この傾向はインドにとどまらない。Randstad Digital India のマネージングディレクターである Milind Shah 氏によると、世界的にエントリーレベルのテクノロジー職は 2024 年 1 月以降 35 %減少している。
Counterpoint Research のリサーチディレクターである Marc Einstein 氏は、インドのようなアウトソーシング中心の国がこの変化の影響を最も強く受けるだろうと指摘する。「エントリーレベルの役割が特に影響に弱いことはすでに明らかです」と同氏は述べた。
エントリーレベルの IT 人材の全体的な採用は減少しているものの、Randstad の2025 年人材トレンドレポートによると、AI / 機械学習の役割に対する需要は 39 %急増している。