利用者から見た電子自治体、電子政府(23) 〜オープンソースの活用
●オープンソースとは
特集
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最近のニュースで、「公共団体の60%がオープンソース導入、リナックスサーバは30%成長」――矢野経済研究所( http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro/NEWS/20050213/156110/ )と報道された。調査会社ガートナーの報告でも、自治体でのオープンソースの利用が高い伸びを示している( http://www.gartner.co.jp/press/pr20050106-01.pdf )。
オープンソースとは、いろいろ定義はあるが、IT用語辞典によれば「ソフトウェアの設計図にあたるソースコードを、インターネットなどを通じて無償で公開し、誰でもそのソフトウェアの改良、再配布が行なえるようにすること。また、そのようなソフトウェア」とされる。何故、無償でしかもソースコードを公開しているソフトウェアがこのように普及してきたのだろうか?
そもそも、オープンソースは、知的所有権保護の流れと逆行するように見える。それが普及したのは理由があるが、最近ではセキュリティ上の理由が大きくなっている。最近のWindowsのセキュリティホールは、テレビでも報道されるほどの問題になっている。
特に、スパイウェアといわれるウイルスの一種が増加し大きな問題になっている( http://www.netsecurity.ne.jp/1_1536.html )。スパイウェアは、Webページを見ただけでWindowsのパソコンに入り込み、さらにそのパソコンが参加しているネットワークに入り込み、他のWindowsパソコンにさらに伝染してゆく。スパイウェアは進化が激しいため、商用のウイルス検出ソフトでも新種に対応するのが遅れがちになっている。ほんの少しの間、ウイルスソフトの更新を怠るだけで感染してしまう。そのため、多くの人がウイルスやセキュリティホールにうんざりしているだろう。オープンソースのソフトウェアはソースコードが公開されているために問題が事前にわかり、そのようなセキュリティホールは少ないとされる。そこで、特に公開するWebサーバにはよく使われているようになっている。また、標準化された技術は無償化への圧力がかかるのが通常である。
そもそも知的所有権は期限がある。特許にしろ著作権にしろ、時間がたてば権利が消失する。もともと知識は人類共有の財産であり、無償で誰でも使えるのが本来のあり方だからである。ただ、知的財産を創造するには費用がかかるので、費用回収のために一定期間権利を保護するとされている。パソコンの基本ソフトであるオペレーションシステムやワープロや表計算のようなアプリケーションも、一般の人が広く使うようになれば、標準化されたものでそこに知的所有権を強く主張しつづけるのは、上記のような知的所有権の本質と矛盾するのである。
オープンソースの普及はそういった知的所有権の本来の性質からも後押しされていると言える。まだ、電子自治体、電子政府の文脈から見ると、標準化されたオポレーティングシステムやアプリケーションは、情報社会のインフラである。自治体、政府がそういった標準化された情報社会のインフラ普及を本気で目指すならば、まさにオープンソースの導入は、必然であると言える。
●インフラとしてのオープンソース 政府がつくり自治体が使う
小さな政府が言われているが、小さな政府でも大きな影響力を行使できるのが情報化された社会の本質である。情報化社会では、個人が大きな影響力をもちえる社会である。特にオープンソースのプロジェクトは個人からはじまり、大きな影響力あるソフトウェアに育ったのを見ればわかるだろう。ただ、「小さな政府、大きな影響力」はまだそれほど意識されていない。もちろん、そのさきがけになる動きは政府の中にある。独立行政法人情報処理推進機構が行っている「オープンソースソフトウェア活用基盤整備事業」がそれだ。
【執筆:武井明】
(この記事には続きがあります。続きはScan本誌をご覧ください)
http://www.ns-research.jp/cgi-bin/ct/p.cgi?m-sc_netsec
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