【ITセキュリティ先端企業 対談シリーズ2】堀場製作所、イノベーションと成長を支えるITセキュリティ戦略 (1) | ScanNetSecurity
2024.04.29(月)

【ITセキュリティ先端企業 対談シリーズ2】堀場製作所、イノベーションと成長を支えるITセキュリティ戦略 (1)

先進的なIT活用は経営に効果をもたらす一方で、セキュリティリスクの増大という側面もあります。ITの利便性を享受しながら、一方でどのようなセキュリティ対策に取り組んでこられたのでしょうか。

特集 コラム
株式会社堀場製作所 業務改革推進センター 情報技術担当センター長 新井 修氏
株式会社堀場製作所 業務改革推進センター 情報技術担当センター長 新井 修氏 全 1 枚 拡大写真
※ TREND PARK 特約記事 ※

分析・計測機器分野で世界トップシェアを誇る堀場製作所。創業以来、精力的な技術革新、海外進出、M&Aを通じてビジネスを拡大してきた同社は、常に最先端のITを経営に組み入れてこられた企業でもあります。トレンドマイクロは、同社のネットワークやPC端末、また製品までを守る、セキュリティパートナーとして長年信頼関係を築いてきています。

なぜ堀場製作所はセキュリティのパートナーとしてトレンドマイクロを選ばれたのでしょうか。同社の成長とイノベーションの原動力をITマネジメント、セキュリティ戦略の面から、株式会社堀場製作所 業務改革推進センター 情報技術担当センター長 新井修氏に、トレンドマイクロ株式会社 取締役副社長 大三川 彰彦が伺いました。

●IT改革の推進でグローバル市場を拓く

大三川
経営におけるITの存在感が増しています。営業力強化を狙い、スマートデバイスやSNSなどを業務に活用する機運も高まっています。市場競争がし烈になる中、ITを活用し、有用な情報をリアルタイムに社員に届け、経営に活かすことは、競争を勝ち抜く鍵になっているともいえます。御社では、こうした昨今の動きに先んじて、ITによる情報戦略を推進されてきました。

新井氏
堀場製作所は、1990年から、IT改革、情報戦略を推進していきました。1995年時点では、Eメールやファイルサーバ、グループウェア、マイクロソフトオフィスへの統一など現在のIT環境につながる原型をほぼ構築しています。

ITをビジネスの最前線で活用する契機となったのが、1990年の中長期経営計画での市場指向への転換です。もともと堀場製作所は、研究開発型の企業のため、営業所を持たず、代理店経由で販売していたのですが、顧客ニーズを的確に捉えるため、東京・大阪・名古屋にセールス・オフィスを開設することとなりました。単にセールス・オフィスを構えるだけでなく、ITを活用し、営業力を向上、お客さまとの関係強化を行っていこうという考えのもと、TV会議を全拠点に構築したほか、メインフレームのLAN接続によるPCでのオンライン利用や今でいうCRMのような営業システムを導入し、本社と同様のコミュニケーションができる環境を整備しました。営業が最前線にいくための情報を取得する基盤としての役割がITに求められたのです。

大三川
企業におけるIT投資というと、これまではどちらかというとシステムの再構築が中心でした。ビジネスのイノベーションのためにITを活用しようという発想は、IT部門として先進的な取り組みと言えますね。

新井氏
取り組みが成功した背景には、一つにはトップマネジメントの関与、そしてもう一つにはシステム導入にあたって通常とは逆のアプローチを取ったことだと考えています。トップマネジメントについては、経営のためのITという考えのもと、トップとIT部門がコミュニケーションを密にし、二人三脚で改革を進めました。1995年のグループウェアの導入にあたっては、トップ自らが、その意義、重要性を従業員に向けて説明しています。グループウェアの導入もユニークで、まずは管理職から導入し、その後に一般社員へ広げるという、一般的なシステム導入の場合と間逆のステップを踏んでいます。単純な業務効率化のためではなく、管理職が意思決定をするためのシステムという考えがあったためです。もちろん、管理職がシステムを使いこなせるよう、インストラクターをフロアごとに配置するなど、浸透のための仕組みも用意しました。

大三川
IT活用が進めば、豊富な情報をリアルタイムに入手することができます。一方で、どんなに良いシステムを導入しても、それを使いこなせる人が育たないと意味がありません。御社では、ITと人の組み合わせを武器に、競争の基盤を強固なものにされているのですね。

●「セキュリティが『HORIBA』ブランドを守る」

大三川
先進的なIT活用は経営に効果をもたらす一方で、セキュリティリスクの増大という側面もあります。ITの利便性を享受しながら、一方でどのようなセキュリティ対策に取り組んでこられたのでしょうか。

新井氏
1990年代にウイルスの問題が顕在化し始めた当初から、経営陣含め、そのリスクを認識し、セキュリティ対策は最優先事項として取り組んできました。組織としてセキュリティ対策レベルを高めるためには、IT部門だけが、リスクを認識し、危機意識をもつだけでは不十分です。経営陣や従業員に対して、変化する脅威に合わせて、必要な知識を周知徹底させ続けることが、IT部門の務めであると考えています。セキュリティ製品による対策はもちろんのこと、ITを利用する従業員のセキュリティ意識を高めるため、セキュリティ教育を継続的に実施しています。

赤松氏(株式会社堀場製作所 業務改革推進センター 部長)
スマートフォンからの情報漏えいやSNSの炎上などセキュリティのリスクも多様化しています。こうした背景から、昨年から2月をセキュリティ月間として、全従業員を対象に集合教育やEラーニングによるセキュリティ研修を実施しています。2回目となる今年は、情報漏えいをテーマにセキュリティ教育を実施しました。管理職向けの研修では、御社から提供いただいた標的型攻撃を解説したムービーを利用しました。組織を狙う攻撃も複雑になっているため、今回のムービーのように分かりやすい教材は、受講者のセキュリティ意識の向上に効果的であると感じています。

大三川
ありがとうございます。セキュリティの重要性は理解されつつも、御社のように最優先事項として、トップマネジメントを含め意識を共通化できている組織はまだまだ多くないようです。(つづく)

※この記事はトレンドマイクロ株式会社のセキュリティ情報誌 TREND PARK から転載しました※

《TREND PARK》

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