FreeBSD の SCTP モジュールの実装に起因するメモリ領域破壊の脆弱性(Scan Tech Report) | ScanNetSecurity
2024.05.07(火)

FreeBSD の SCTP モジュールの実装に起因するメモリ領域破壊の脆弱性(Scan Tech Report)

FreeBSD には、SCTP ソケットを扱う際の SCTP ストリーム ID の処理に起因して、特定のカーネルメモリを読み書き可能な脆弱性が存在します。

脆弱性と脅威 エクスプロイト
1.概要
FreeBSD には、SCTP ソケットを扱う際の SCTP ストリーム ID の処理に起因して、特定のカーネルメモリを読み書き可能な脆弱性が存在します。
システムにアクセス可能な悪意あるユーザに利用された場合、権限昇格やカーネルメモリから重要な情報を不正に取得される可能性があります。
脆弱性を悪用された場合の影響度が高いため、影響を受けるバージョンの FreeBSD を利用するユーザは可能な限り以下の対策を実施することを推奨します。


2.深刻度(CVSS)
4.6
https://nvd.nist.gov/cvss.cfm?version=2&name=CVE-2014-8612&vector=%28AV:L/AC:L/Au:N/C:P/I:P/A:P%29


3.影響を受けるソフトウェア※1
FreeBSD 8.4
FreeBSD 9.3
FreeBSD 10.0
FreeBSD 10.1


4.解説
Stream Control Transmission Protocol (SCTP) は、TCP が提供するサービスと同様のサービスを提供可能な信頼性の高いトランスポートプロトコルであり、FreeBSD では、getsockopt/setsockopt システムコール※1 を利用して SCTP ソケットを含む様々なソケットのオプションを操作できます。
操作可能なオプションの 1 つである Stream Scheduler Parameter (SCTP_SS_VALUE) は、以下のような構造体で定義されメンバとして、assoc_id,stream_id, stream_value を持ちます。

struct sctp_stream_value {
sctp_assoc_t assoc_id;
uint16_t stream_id;
uint16_t stream_value;
};

FreeBSD には、setsockopt システムコールを介して SCTP ソケットの SCTP_SS_VALUE オプションを設定する際に SCTP ストリーム ID (stream_id)の境界チェックを適切に行わない不備があります。
このため、当該 ID に特定の値を指定した SCTP ソケットを操作する不正なアプリケーションを処理した場合に、配列のインデックスエラーが発生し、結果として、16 ビットのカーネルメモリを読み書き可能な脆弱性が存在します。

この脆弱性を利用することで、システムにアクセス可能なローカルの攻撃者はカーネルメモリ領域から重要な情報を窃取する、あるいは権限昇格を行う可能性があります。

※1 https://www.freebsd.org/cgi/man.cgi?query=setsockopt&sektion=2


5.対策
以下の Web サイトを参考に、最新ブランチの FreeBSD 8.4/9.3/10.1-STABLE,8.4-RELEASE-p23, 9.3-RELEASE-p9, 10.0-RELEASE-p17, 10.1-RELEASE-p5 にアップデート、あるいはパッチ (sctp.patch) を入手し適用することで、この脆弱性を解消することが可能です。
※freebsd-update(8) ユーティリティを利用することでも、解消バージョンにアップデートすることが可能です。

FreeBSD-SA-15:02.kmem:
https://www.freebsd.org/security/advisories/FreeBSD-SA-15:02.kmem.asc


6.ソースコード
(Web非公開)

(執筆:株式会社ラック サイバー・グリッド研究所

※Web非公開該当コンテンツ閲覧をご希望の方はScan Tech Reportにご登録(有料)下さい。

Scan Tech Report
http://scan.netsecurity.ne.jp/archives/51916302.html

《株式会社ラック デジタルペンテスト部》

関連記事

特集

PageTop

アクセスランキング

  1. ランサムウェア被害の原因はスターティア社の UTM テストアカウント削除忘れ

    ランサムウェア被害の原因はスターティア社の UTM テストアカウント削除忘れ

  2. モリサワ他と損害賠償金4,500万円支払で調停成立~フォント不正コピーの印刷会社

    モリサワ他と損害賠償金4,500万円支払で調停成立~フォント不正コピーの印刷会社

  3. 「意識を高揚させよう」と思い特定秘密の情報を知るべき立場にない隊員に特定秘密の情報を漏らす、懲戒処分に

    「意識を高揚させよう」と思い特定秘密の情報を知るべき立場にない隊員に特定秘密の情報を漏らす、懲戒処分に

  4. 護衛艦いなづまの艦長、資格のない隊員を特定秘密取扱職員に指名し懲戒処分

    護衛艦いなづまの艦長、資格のない隊員を特定秘密取扱職員に指名し懲戒処分

  5. メディキットホームページに不正アクセス、閲覧障害に

    メディキットホームページに不正アクセス、閲覧障害に

  6. クラウド労務管理「WelcomeHR」の個人データ閲覧可能な状態に、契約終了後も個人情報保存

    クラウド労務管理「WelcomeHR」の個人データ閲覧可能な状態に、契約終了後も個人情報保存

  7. 信和へのランサムウェア攻撃で窃取された情報、ロックビット摘発を受けてリークサイトが閉鎖

    信和へのランサムウェア攻撃で窃取された情報、ロックビット摘発を受けてリークサイトが閉鎖

  8. セガ フェイブが利用するメールシステムに不正アクセス、フェニックスリゾートが保有する個人情報が流出した可能性

    セガ フェイブが利用するメールシステムに不正アクセス、フェニックスリゾートが保有する個人情報が流出した可能性

  9. 日本は悪意ある内部犯行による漏えいが 12 ヶ国中最小、プルーフポイント「Data Loss Landscape 2024(情報漏えいの全容)」日本語版

    日本は悪意ある内部犯行による漏えいが 12 ヶ国中最小、プルーフポイント「Data Loss Landscape 2024(情報漏えいの全容)」日本語版

  10. 「ジャンクガン」下流サイバー犯罪者が見るランサムウェアギャングの夢

    「ジャンクガン」下流サイバー犯罪者が見るランサムウェアギャングの夢

ランキングをもっと見る