[DEF CON22 レポート] 軍用猫と DoS犬~あなたのペットを兵器に
まず「飼い猫の現在地を知らせる GPS チップ付きの首輪」からヒントを得た Gene は、そこに Wi-Fi スニファの機能を追加し、タイムスタンプと連動したデータを記録することで、ごく普通の平和的な猫を軍用猫に作り替える計画を立てた。
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2014 年 8 月 10 日、DEF CON 22 の最終日に奇怪なプレゼンが行われた。Tenacity Solution のセキュリティ研究者 Gene Bransfield による「軍用猫、および DoS 犬」の研究発表である。
まず、「飼い猫の現在地を知らせる GPS チップ付きの首輪」からヒントを得た Gene は、そこに Wi-Fi スニファの機能を追加し、タイムスタンプと連動したデータを記録することで、ごく普通の平和的な猫を軍用猫に作り替える計画を立てた。つまり、猫である我々にウォードライビングを代行させるという作戦だ。
Gene は当初、「ウォードライビングアプリ『Wigle Wifi』を使い、猫に携帯電話を背負わせて近所を歩き回らせればよい」という少々安直な発想のもと、小型犬用のコートに携帯電話を仕込み、猫の Skizty 氏に着用させた。それは Skizty 氏が非常に体格の良い猫であることを考慮してもなお失礼な話である。
初回のテストにおいて、Skizty 氏は自宅の裏庭の柵をすりぬける際、そこにコートを残して出かけたため、実験は失敗に終わった。さらに Skizty 氏は、二度目のテストでも近隣の住宅地にコートを脱ぎ捨てて帰宅した。最後に通信を行った地点は GPS で確認されたが、Gene が辿り着いたとき、すでに携帯電話は失われていた。あろうことか Gene は Skizty 氏に対し、その携帯電話の賠償を求めるかのような発言も行っている。
その後、様々な知人の協力を得た Gene は、不慣れなハンダ付けによる火傷を負いながら、気が遠くなるような試行錯誤を繰り返し、最終的には Wi-Fi と GPS の情報を SD に記録する超小型・軽量・低消費電力の専用デバイスを作り上げた。さらに手芸上手なおばあちゃん(Gene の妻の母親であるらしい)の協力を得て、それを首輪型の超小型兵器に作り替えた。
その首輪を装着された Skizty 氏は、初回のテストの際、自宅の庭で 20 分間の毛づくろいに勤しんだため何の情報も得ることがなかったが、二度目の実験では近隣のオープンアクセスポイントのデータを次々と取得した。さらに Gene は、活動的な性格の猫である Coco 氏にも同じ首輪を装着することで、より広い範囲でのデータ取得とマッピングに成功している。
さて、Gene による「軍用猫」の研究発表が技術的な内容であった一方で、「DoS 犬」に関する発表は、どちらかといえばソーシャルエンジニアリング的な要素を重視したものだった。具体的に言うなら、「介助犬のように見える普通の犬は、どこまで公共の場で人の目を欺けるのか」というテストが、その研究の大半を占めていた。
まず Gene は、Wi-Fi Pineapple と TV-B-Gone を仕込んだ軍用犬用のバックパックを作り上げた。そこには「DENIAL OF SERVICE DOG」と大きく刺繍されたバッヂがついているのだが、DENIAL OF の部分はフォントが小さいため、ぱっと見ると「介助犬」と書かれているようにも見えるのだ。
ボランティアのドーベルマンピンシャー(非常に陽気な性格)に、そのバックパックを背負わせた Gene は、次々とレストランや電器店を訪れては、いちいち「この犬を連れて入店しても良いか」と尋ね、店内への侵入に成功した。その際に「DoS 犬とは何だ?」と気づいた店員は一人しかいなかったという(ちなみに通常、ドーベルマンピンシャーは介助犬として選ばれる犬種ではない)。
犬には身体を振る習性があり、また TV-B-Gone は揺れに対応しておらず、さらに介助犬の訓練をしていない犬は店内で糞をするため、この作戦には幾らかの不具合があった。それでも Gene は、いくつかの攻撃──レストランのテレビに It's Peanut Butter Jelly Time の動画を流す、あるいは FIFA ワールドカップのアルゼンチン戦を中継しているスポーツバーでリックロールを行うなど──を成功させたようだ。
これらの研究結果として判明したことは、犬と猫は仕事のパートナーに向いていないということ。現在でも多くの人々がアクセスポイントを安全化していないということ。そして人間の間抜けさに当てるパッチは無いということだと Gene は結論づけた。
なお Gene は、この研究発表の目的について、「世界のインターネットトラフィックの 15 %は猫に捧げられている。セキュリティの技術話は退屈なので、猫の写真をいっぱい使えばいいかなと思った」と述べている。
(Scan 名誉編集長りく)
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