工藤伸治のセキュリティ事件簿 シーズン5 「ワンタイムアタッカー」 第19回「片山の推理」 | ScanNetSecurity
2025.10.04(土)

工藤伸治のセキュリティ事件簿 シーズン5 「ワンタイムアタッカー」 第19回「片山の推理」

大手ネット広告代理店サイバーフジシン社 情報システム部の片山は、思考実験を繰り返していた。何度かの思考実験の結果、もっとも妥当な推理は、社長室の外にいる誰かが山内のトークンを盗み見して、金を奪ったというものだ。

特集 フィクション
>>第 1 回から読む

第六章 混乱

オレは、わくわくしながらじっと待った。四〇分くらい待って、待ちきれずにアクセスすると着金していた。すぐに複数の口座への送金指示を出す。

ルクセンブルクのinternaxx、アメリカのOANDA、シンガポールのシティバンクだ。

過去の経験では、着金するまでに一、二日はかかる。それを確認したら高飛びだ。ビジネスクラスで行くことにしよう。

ばれない自信はある。会社のシステムを外注しているN電気のセキュリティコンサルタントを名乗るヤツに「海外で資産保全できて、税金なしってどこがいいですかね」と尋ねたら、「よく知りませんが、やはりスイスでしょうか」などと答えた。小学生レベルだ。ゴルゴ13の読み過ぎだ。

そんな連中に海外送金を追跡することなんかできるわけがない。電子マネーやカジノの口座を介すれば完全に足跡を消せるだろう、少なくともあのバカどもの目からは。


---


大手ネット広告代理店サイバーフジシン社 情報システム部の片山は、思考実験を繰り返していた。何度かの思考実験の結果、もっとも妥当な推理は、社長室の外にいる誰かが山内のトークンを盗み見して、金を奪ったというものだ。

犯人の条件は「山内が隠し口座を管理していることを知っている」「山内が隠し口座にアクセスする時間を知っている」「海外金融口座の基礎知識がある」、「ワンタイムアタッカーを使って芸能人ブログのパスワードを盗んだ犯人」ということになる。

片山は、それらを箇条書きにし、「ワンタイムアタッカーを使って芸能人ブログのパスワードを盗んだ犯人」に「?」をつけた。

── ワンタイムアタッカーを誰が使ったかは、わからないだろう。むしろこの事件の犯人がわかれば、それがわかるということだ。

《一田和樹》

関連記事

特集

PageTop

アクセスランキング

  1. 業務目的外でパソコンを利用中に詐欺サイトに接続 ~ 委託事業者パソナの従業員

    業務目的外でパソコンを利用中に詐欺サイトに接続 ~ 委託事業者パソナの従業員

  2. ガートナー、2025 年版の日本におけるセキュリティのハイプ・サイクル発表

    ガートナー、2025 年版の日本におけるセキュリティのハイプ・サイクル発表

  3. 諭旨解雇処分 ~ 電気通信大学 准教授 共同研究先の企業に秘密を漏えい

    諭旨解雇処分 ~ 電気通信大学 准教授 共同研究先の企業に秘密を漏えい

  4. Microsoft が土壇場で譲歩 欧州 Windows 10 ユーザーだけに猶予措置

    Microsoft が土壇場で譲歩 欧州 Windows 10 ユーザーだけに猶予措置

  5. アサヒグループホールディングスにサイバー攻撃、現時点で復旧の目処立たず

    アサヒグループホールディングスにサイバー攻撃、現時点で復旧の目処立たず

ランキングをもっと見る
PageTop