サイバーセキュリティ・アフリカ(1)アフリカの熱
板門店につづいて、他のメディアが絶対に行かないような場所へ取材に行ってこその Scan だと編集人上野が賛成してくれたこともありました。
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“Heaven was copied after Mauritius.”(Mark Twain)
本稿は 2014 年 11 月下旬にモーリシャス共和国で開催された、アフリカの地域インターネットレジストリ AFRINIC 設立 10 周年記念の国際会議 AFRINIC-21 をレポートします。
●こんな国が実在するのか
「南アフリカのヨハネスブルグでセキュリティのカンファレンスがあったんですが、予定が合わなくて結局行けませんでした」
セキュリティの媒体に関わって、アフリカに関する話題を耳にしたのは、Scan 編集人上野が編集会議で言ったこの言葉が初めてでした。2013 年の夏頃だったと思います。
「アフリカ? アフリカでセキュリティのどんな会議をやるんですか?」
そう筆者が尋ねると、
「ネットや携帯電話の普及率は国によって凄いらしいですよ。ところで『ヨハネスブルグ,治安』で一度検索してみてくださいよ」
編集人上野はそう言うと、いつものようにおだやかにニヤニヤしていました。すぐに言われたとおりの検索をしてみると、その意味がわかりました。
検索結果一覧には「北斗の拳」「マッドマックス」「ニューヨーク 1997」等のディストピア SF 世界を地で行くような、どこまでが本当かわからない、凄絶なヨハネスブルグの治安状況に関する記述が大量に見つかりました。果たして本当にこんな国が実在するのか、いくら何でもこれは都市伝説だろう、その時はそう考えただけでした。
●インド洋の貴婦人の島へ
約一年後の 2014 年秋。筆者は JPCERT/CC の小宮山 功一朗 氏から、モーリシャス共和国で、アフリカのインターネット発展の歴史をふりかえり、未来を考える会議が開かれ、セキュリティにフォーカスしたセッションでは、氏が技術研修と講演を行うので、メディアとして取材に来てはどうかと相談を受けました。小宮山氏が、アジアやアフリカ地域での CSIRT 設立と国際連携の実績を評価され、セキュリティの国際調整組織 FIRST の理事に就任して数ヶ月経った頃でした。
モーリシャス共和国は「インド洋の貴婦人」と呼ばれ、EU 圏富裕層のリゾート地として知られている島です。
「私は日本のセキュリティ関係者では一番と言ってもいいくらいアフリカに行っていますが、アフリカではホテルの 1 階に治安維持のために軍隊がいたりすることも珍しくなくて、ホテルの外には絶対に出ないで下さいと言われたこともありました。ホテルの部屋からすら出るなということもあったくらいです。ですから、メディアの人に取材に来てくださいと責任を持って言えるような機会は、おそらく今回のモーリシャスを逃すと、いつ来るかわかりません」
小宮山氏の不思議な迫力に打たれた筆者は、2014 年 11 月 22 日夜、単身で、成田からドバイ経由でアフリカのモーリシャス共和国に向かっていました。思えば私もアフリカの熱に少し感化されつつあったのかもしれません。また、7 月の板門店につづいて、他のメディアが絶対に行かないような場所へ取材に行ってこその Scan だと編集人上野が賛成してくれたこともありました。高級リゾート地にも関わらず宿泊費は RSA Conference 開催期間中のサンフランシスコのホテル代の 2 分の 1、3 分の 1 の費用で済みました。
《高橋 潤哉( Junya Takahashi )》
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